高級時計は無駄遣い? 30歳男性が実感したスマホやスマートウオッチにはない「価値」
ファイナンシャルフィールド / 2023年1月26日 9時50分
![高級時計は無駄遣い? 30歳男性が実感したスマホやスマートウオッチにはない「価値」](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_182809_0-small.jpg)
世の中には「お金のかかる」といわれる趣味がある。高級時計は、その筆頭に挙げられる趣味の一つだ。スマートフォンという便利な時計があるにも関わらず、わざわざ数百万円をかけて、腕時計を購入することに理解できない人も多々いるだろう。 また、近年は腕時計というと「資産価値」が話題になることが多いため、趣味で購入する人が理解されにくくなっているのも現実だ。 しかし、「時計離れ」しているであろう世代であるIさん(30歳)は、200万円もする雲上級の高級時計を「人生最高の買い物です」と笑顔とともに見せてくれた。
長年、高級時計に憧れていた
Iさんが初めて高級時計に興味をもち始めたのは、中学生のときだったという。
「いつも家に遊びに来ていた叔父は、すごくオシャレで憧れの人でした。そんな叔父がいつも身につけていたのが高級時計だったんです」
長年憧れていたが、学生時代のアルバイトでは手が出せなかった。初めて高級時計を買ったのは、大学卒業後、社会人になってからだった。
「初めて買ったのは、タグホイヤーのカレラという時計でした。30万円くらいの時計ですが、今でも思い出深い時計ですね」
初めてブランド時計を手にしたIさんは、より一層時計の魅力に引き込まれたという。ほしい時計を買うために、毎月の貯金とボーナスを少しずつ貯めていった。2年後には当時約70万円だったロレックスのエクスプローラー Iを正規店で手に入れたという。
「当時のロレックスは今ほどの爆発的な人気はなかったので、正規店で購入することができました」
すると、Iさんはあるとき、会議終わりに50代の部長から話しかけられた。
高級時計を通じて広がった人脈
部長は「君、時計好きなの?」と言って、Iさんの時計を指さした。
「話してみると、部長は大の時計好きであることが分かりました。どうやら僕がいつも時計をつけているのを見て、前から気になっていたそうです」
それから瞬く間に部長との距離は縮まり、仕事終わりに飲みに行く間柄になった。
「部長も若い頃から高級時計が好きで、お金を貯めては好きなブランドの時計を収集していたそうです。だからこそ、僕のことも『昔の自分を見ているようだ』と言って、いろいろ教えてくれるようになりました。恐らくですけど、昔と違い時計に興味をもつ若手がほとんどいないで寂しい気持ちもあったと思います。たくさんおごっていただいたので、それだけでタグホイヤーの分は元はとれたのかもしれないですね(笑)」
さらに時計だけでなく、仕事上の相談にも乗ってくれたという。
「部長のアドバイスは先輩や上司とも違って、働くうえでの意識を根本から変えてくれるようなものでした。年齢も役職も違う私と仲良くしていただけたきっかけも、同世代が興味をもちにくい『時計』があったからこそだと思います」
さらに、「もっといい時計を買おう」ということがモチベーションにもなった。昇給を待ってはいられない。Iさんは、30歳でフリーランスの営業として独立。2023年で丸3年目を迎えるが、かつての上司の紹介などもあり順調に業績を伸ばし、可処分所得は1.5倍になったという。
現在、Iさんの手元には「雲上ブランド」といわれるブランド、パテック フィリップのカラトラバ ref.3796が輝いている。1980年代のヴィンテージ時計で、なじみのヴィンテージウオッチ専門店でおよそ200万円で購入したという。
「最近、『高級時計の価格高騰』が話題に上がりますが、そのほとんどは新品の時計。また実勢相場が上がっているのはロレックスのデイトナやオーデマ ピゲのロイヤル オークといった、スポーツウオッチとよばれる時計です。一方、カラトラバのような新品では400万円を時計でもドレスウオッチの中古品であれば、それほど価格が高騰していないので狙い目です」
機能や利便性ではない、高級時計だからこその良さがある
現在、Iさん部長から紹介された「時計好き」仲間と知り合った。月に一回、食事会に出席するなどして、さらに交友関係を広めているという。
「スマートウオッチで十分と感じる人もいるかもしれませんし、実際、機能や利便性だけに着目すればその通りだと思います。ただ、愛好家にとって時計は『時間を見るため』のモノではないと思います。例えば、僕はSNSだけではなく、リアルで時計好きの方々と会うことで『なぜその時計を購入したのか』とかさまざまなストーリーをじかに聞くことができるのが、仕事やプライベートの刺激になっているんですよ」
人生の岐路に買った時計、親から受け継いだ時計、一つひとつの時計にエピソードがあり、オーナーから話を聞く時間がIさんにとって「プライスレス」なのだという。
「『格』や『値段』がすべてではありません。何百万円の時計よりも、チープカシオに素晴らしい刺激を受けたこともありました。さらに時計を通じて、普通では決して築けない人脈を得ることができました」
時計によって人脈を広げられるという点は、大きなメリットといえるだろう。会社員にとって、縁遠い嗜好(しこう)品になりつつある現代において時計に詳しくなることは、普段の生活では関わりあうことが難しいコミュニティーに参画できるチャンスも広がる。効率化や利便性が優先される時代だからこそ、目に見えない「人とのつながり」や「思い」に、かけがえのない価値があるのかもしれない。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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