「年金の運用は赤字」は誤解?「20年で100兆円の収益」な実態を解説
ファイナンシャルフィールド / 2023年1月29日 12時20分
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メディアに登場するコメンテーターらの中には「年金の運用は損をしてばかりで赤字だ」などと指摘する人もいます。しかし、実態としては年金の運用は決して損ばかりではなく、むしろ昨今の低金利時代においても立派な収益をたたき出しているのです。 本記事では、あまり知られていない、もしくは誤解されがちな年金運用の実態について解説しています。
年金積立金は「GPIF」が運用している
年金積立金は厚生労働省が管轄する「年金積立金管理運用独立法人」が運用しています。英語名の「Government Pension Investment Fund」の頭文字を取って「GPIF」が通称です。
GPIFでは、現役世代が納めた年金保険料のうち、「年金の支払いなどに充当されなかったお金」を「年金積立金」として預かり、運用して増やす役割を担っています。年金積立金は以前からありましたが、GPIFとしては2006年に設立され、現在に至るまで年金積立金の管理・運用業務を担っています。
GPIFの運用は20年間で約100兆円の収益
冒頭で述べた、「年金の運用は損をしてばかりで赤字だ」については、100%うそではありません。GPIFはホームページで四半期ごとに運用状況を公開しており、時期によっては株価の下落などにより赤字の場合もあります。
例えば、2019年の第四半期(2020年1月~3月)は、2001年度以降最も大きな赤字で、運用成績がマイナス10.7%、金額にして17兆7000億円のマイナスです。この期間はコロナ禍が始まり、急激な株価下落がありましたので、この結果は当然といえるでしょう。
しかし運用は、短期的な見方ではなく、長期的な観点を持つ必要があります。上記と同じく、2001年以降の収益率を年ごとにみると、プラスのほうが多いことがわかります。そして、2001年度から最新の2022年度第2四半期までのトータルでは、年率3.47%のプラス、累積収益額は99兆9567億円となっています(図表1)。
図表1
出典 GPIF 「2022年度第2四半期運用状況(速報)」より
20年余りで約100兆円もの利益を生み出していることからみると、「年金の運用は損をしてばかりで赤字だ」とはいえないのではないでしょうか。
GPIFは長期を見据え安定運用を目指している
「運用」というと、机上に複数のディスプレーを並べ、瞬時に株を売買するような様子を思い浮かべる人がいるかもしれません。しかし、GPIFの運用方法は全く異なります。
GPIFのホームページの中に、「基本ポートフォリオの考え方」という項目があり、次のように記載されています。
「長期的な運用においては、短期的な市場の動向により資産構成割合を変更するよりも、基本となる資産構成割合を決めて長期間維持していくほうが、効率的で良い結果をもたらすことが知られています。このため、公的年金運用では、各資産の期待収益率やリスクなどを考慮したうえで、積立金の基本となる資産構成割合(基本ポートフォリオ)を定めています。」
図表2
出典 GPIF 「2022年度第2四半期運用状況(速報)」より
言い方を変えると、短期的な銘柄の売買はせず、各資産のカテゴリーに投資する割合を決め、長期間保有するということです。長期運用は投資の基本ですが、さらに長い間同一のポートフォリオではなく、GPIFは定期的に内容をチェックし、見直しています。
例えば、2006年~2009年度には67%あった国内債券は、徐々に割合を減らし、2020年からは25%ほどとなっています(図表2)。昨今のようなマイナス金利の状況を踏まえ、見直してきていると考えられるでしょう。
報道に惑わされず、時には一次情報を確認しよう
メディアは重要な情報発信元ですが、時には間違うことや、あえて一部分を切り取って報道することもあります。「あれ?本当かな?」と思った際には、自分の目で一次情報を確認することで、より正確な情報にたどり着けることもあるでしょう。
出典
年金積立金管理運用独立行政法人 2022年度の運用状況
年金積立金管理運用独立行政法人 業務概況書(2019年度)
年金積立金管理運用独立行政法人 基本ポートフォリオの考え方
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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