積立投資の落とし穴。「精神的負担」で断念した30代会社員の葛藤
ファイナンシャルフィールド / 2023年1月30日 3時20分
![積立投資の落とし穴。「精神的負担」で断念した30代会社員の葛藤](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_183356_0-small.jpg)
つみたてNISAの影響でハードルが下がっていることもあり、近年「積立投資」を始める会社員が増えている。Aさん(35歳)もその一人で、32歳の頃から積立投資をスタート。始める際に慎重にリサーチを重ね、積立投資の最大のメリットが長期間、一定金額を投資することによる「複利」であることもしっかりと理解して始めたという。 しかし、2023年1月現在、Aさんは積立投資を辞めてしまっている。その理由は「頭で分かっていても、心がもたない」という、当初は気付けなかった「精神的な不安」だった。
「定期預金」と同じ感覚でいけると思っていた
元々、資産運用に興味があったAさんは、つみたてNISAがスタートした年から年間40万円を拠出し続けていた。
「ほとんど定期預金感覚でしたね。20代の頃も欲しいものがあると、まずは定期預金口座を作って貯めきっていたので『すごく自分に合っている』と思いました」
そこでその年にAさんはさらに効率的に資産を増やそうと、つみたてNISA以外の積立投資もスタート。課税口座を開設し、つみたてNISA以外の「ナスダック100指数」の関連ファンドも買い付けるようになった。しかし、これが誤りだったという。
「月収は今も当時も額面が26万円程度で、そのなかからつみたてNISAの投資資金も捻出していました。そしてまだ少しだけ余裕があったので、さらに2万円を新しく開設した積立投資信託用の口座に振り込むようにしました。ただ、金額が大きかったからなのか『ナスダック100指数』の変動幅がS&P500よりも大きいからなのか、従来よりも異常に『値動き』が気になるようになってしまいまして……」
独身で無趣味かつ良くも悪くも執着心や欲がないと自称するAさんは、自分なりの「余剰資金」のほぼすべてを投資に回したという。だが、新型コロナウイルス感染症やロシアによるウクライナへの侵攻、そして記録的な円安など、これまでほとんど気に掛けなかったマイナスなニュースを目にするたびに、「資産が減るんじゃないか」と不安を抱くようになってしまったという。
「こんな不安定な情勢で株価も下がっているのに、果たして毎月同じように積み立てていいのか、分からなくなってしまいました。むしろ積立投資は、『下落しているときにも買い続けるから意味がある』と頭では理解していたのにも関わらずです」
不安はAさんの仕事や将来の考え方にも影響を与え始めた。いつも値動きが気になってしまい、やるべき仕事が手に付かず上司から注意されることが増えた。いずれは独立・起業を目指していたが不安が先に立ち、その準備もやる気が起きない。そしてAさんが積立投資を諦める決定的なきっかけは突然、訪れたという。
相次ぐ出費で心が折れた。「折衷案」はなかったのか?
「急きょ、転職した頃に親族の入院が重なり、それなりのお金が必要になってしまいました。貯金よりも投資に回していたのでお金がほとんどなく、泣く泣くその月からは投資を中断。それどころか、今まで絶対に手を付けなかった、つみたてNISAの口座にも手を付けてしまったのです。それからはなし崩しですね。今はもう、すべての投資信託を売却注文してしまいました」
複数の問題や課題に振りまわされることにより、Aさんにとって将来の不安よりも「身近なお金の不安」のほうが勝ったのが原因だと振り返る。なんとか投資資金を崩して得たお金で乗り切ったものの、まだ積立投資を再開する気持ちの余裕はないという。
「いずれはまた積立投資にチャレンジしたいですが、いざというときのためにまずは貯金から始めます。100万円以上貯められたら、また『余剰資金』を投資に回していきます。『手元にお金がない』という状況が、あんなに切羽詰まった気持ちになるとは思わなかったので……」
投資をする際は感情をコントロールできる環境を整えよう
「もしかしたら、もっといい方法があったのかもしれないが、不安で考えられる余裕がなかった」とAさんは最後に振り返っていた。つみたてNISAはいざというときに「一時停止」も可能であるうえ、「本当にすべて売却する必要があったのか」という点も改めて考える必要があるだろう。
積立投資のメリット・デメリットを理解しているつもりでも、当事者になると不安に押しつぶされてしまうケースもある。難しい判断が求められる状況で、冷静に熟考できる「お金」を用意しておくことも必要ではないだろうか。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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