「年収1000万円」と「500万円」、年金受給額はあまり差がない!? 受給額を徹底比較
ファイナンシャルフィールド / 2023年2月2日 23時30分
年収の高い人は、年収の低い人より保険料を多く支払っており、年金も多く受給できると思われがち。しかし、将来受け取れる年金受給額にそれほど大きな差はありません。 本記事では年収1000万円と年収500万円の人とを比較し、実際にどれくらい年金受給額に差があるかをみていきます。
老齢基礎年金と老齢厚生年金の算出方法
公的年金は「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の2階建ての構造となっており、65歳以上になって受け取る年金は、1階部分は「老齢基礎年金」、2階部分は「老齢厚生年金」です。基本的に自営業などは老齢基礎年金のみ、会社員や公務員などは老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給することができます。
「老齢基礎年金」は保険料を支払った月数に応じて受給でき、支払期間480ヶ月(40年間)分をすべて支払った場合、上限である約77万8000円を受給できます。1ヶ月では約6万4800円受給できることになります。
会社員などの第2号被保険者の場合は、1階部分に加えて2階部分にあたる「老齢厚生年金」も受給できます。老齢厚生年金の受給額は次の計算式です。
・2003年3月以前:平均標準報酬月額×(7.125/1000)×加入月数
・2003年4月以後:平均標準報酬額×(5.481/1000)×加入月数
平均標準報酬月額・平均標準報酬額は、ここでは単純に年収を12で割って、報酬月額に該当する等級に合わせます。
例えば、年収500万円であれば、12で割った場合の報酬月額は約41万7000円。図表1の厚生年金保険料額表に当てはめてみると、平均標準報酬月額は等級24の41万円となります。
【図表1】
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和4年度版)
年収1000万円と年収500万円の年金額を比較
では年収1000万円と年収500万円の将来の年金受給額を比較してみます。年金受給額の計算は以下の条件で行います。
●老齢基礎年金の受給額は両方とも約77万8000円
●年金加入月数は480ヶ月
●老齢厚生年金の計算方法は「平均標準報酬額×(5.481/1000)×加入月数」
●年収1000万円の平均標準報酬額は65万円
●年収500万円の平均標準報酬額は41万円
年収1000万円の場合の年金額
年収1000万円の場合、年金受給額は年間約248万8000円(老齢基礎年金77万8000円+老齢厚生年金171万円)となります。なお、老齢厚生年金の計算式は、65万円×(5.481/1000)×480ヶ月=171万72円です。月額では、約20万7000円となります。
年収500万円の場合の年金額は
続いて、500万円の場合、年金受給額は年間約185万6000円(老齢基礎年金77万8000円+老齢厚生年金107万8000円)となります。なお、老齢厚生年金の計算式は、41万円×(5.481/1000)×480ヶ月=107万8660円。月額では、約15万5000円となりました。
それほど年金額が変わらない理由
前述の通り、年収1000万円と年収500万円では月額約5万2000円の差がありますが、倍の受給額にはなっていません。年収500万円が受給する年金額は年収1000万円の75%ほどです。
なぜ年収が倍もあるのに、年金受給額に年収ほどの差がないのでしょうか。次項でその理由を解説していきます。
【理由1】年収が高くても老齢基礎年金に差はない
1階部分にあたる「老齢基礎年金」は受給上限額が約77万8000円と決まっています。つまり年収が1000万円であっても500万円であっても、受給上限額である約77万8000円は変わりません。
【理由2】厚生年金の標準報酬額には上限がある
もう一つの理由は、厚生年金の標準報酬額の上限にあります。標準報酬額は等級32の65万円がマックスの上限です。これを年収にざっくり換算すると、65万円×12ヶ月で780万円となります。
つまり、780万円を超えて稼いでも、本件のように年収1000万円やたとえそれ以上多く稼いだとしても、もらえる年金月額は年収780万円と変わりません。
高年収の人は老後のライフスタイルに注意
老齢基礎年金に受給上限があることや、厚生年金の標準報酬額に上限があることで、年収1000万円と500万円では年金受給額に大きな差がないと解説しました。
つまり、年収1000万円の人は現役時代と引退後を比較した際、収入の落差が年収500万円の人より大きくなります。そのため、年収1000万円の人は老後のライフスタイルに注意が必要です。なぜなら、年収1000万円の人は500万円の人より生活水準が高くなっている可能性があるからです。年金生活に入っても同じように高い水準で生活してしまうと、老後資金が枯渇するかもしれません。
そうならないためにも年金生活に入る前から生活水準の見直しや、個人年金を検討したり貯蓄したりしておくことを心掛けましょう。
出典
日本年金機構 は行 報酬比例部分
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和4年度版)
日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
執筆者:辻本剛士
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプランニング技能士、宅地建物取引士、証券外務員二種
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