物価によって年金受給額が上下する…? 令和5年度の年金は減るの? 増えるの?
ファイナンシャルフィールド / 2023年2月6日 12時10分
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公的年金は、原則として賃金や物価が上がると給付額が増える仕組みになっています。一方で、少子高齢化時代においても年金の持続性を保つため、物価の伸びより給付額を抑えるマクロ経済スライドが導入されています。 今回は、年金額改定の仕組みについて解説するとともに、令和5年度に改定される年金額について説明します。
年金額改定の原則とマクロ経済スライド
1. 年金額改定の原則
公的年金の年金額は、原則的に賃金や物価の変動に応じて支給額が改定されることになっています。この改定により、年金生活者がインフレにも対応できるというのが公的年金の大きな特徴です(※1)。
2.マクロ経済スライドとは
少子高齢化の時代において、将来の現役世代の負担が過重なものとならないように最終的な負担(保険料)の水準を定め、その中で保険料などの収入と年金給付などの支出の均衡を保つ必要があります。
このため、賃金や物価による年金額の改定率を調整し、緩やかに年金の給付水準を調整する仕組みとして、平成16年の年金制度改正でマクロ経済スライドが導入されました(※2)。
マクロ経済スライドでは、賃金や物価による改定率から、現役の被保険者の減少と平均余命の延びに応じて算出した「スライド調整率」を差し引くことで、年金の給付水準を調整します。
なお、マクロ経済スライドにおいて、賃金や物価がある程度上昇するケースではスライド調整率がそのまま適用されますが、賃金や物価の伸びが小さく、スライド調整率をそのまま適用すると年金額が下がるケースでは、調整について年金額の伸びがゼロとなるまでにとどめることになっています。
【図表1】
【図表2】
【図表3】
3. キャリーオーバー制度とは
キャリーオーバー制度とは、前述の「賃金・物価の上昇率が小さいケース」や「賃金・物価が下落したケース」において、適用を見送ったマクロ経済スライドのスライド調整率分を翌年度以降で「賃金・物価の上昇率が大きいケース」の際に繰り越して適用する制度をいいます(※3)。
【図表4】
現在、令和4年度のマクロ経済スライド調整率(マイナス0.2%)と、令和3年度の繰り越し分(マイナス0.1%)を合わせたマイナス0.3%が、令和5年度以降に繰り越されています。
令和5年度の年金額は昨年度から2.2%引き上げられる
厚生労働省は令和5年1月20日、「令和5年度の年金額改定」について以下のように公表しました(※4)。
1. 令和5年度の年金額改定に適用されたルール
令和5年度の年金額の改定においては、前年の消費者物価指数の変動率プラス2.5%、名目手取り賃金変動率(注1)プラス2.8%、令和5年度のマクロ経済スライド率マイナス0.3%と前年度までのキャリーオーバー分のマイナス0.3%が適用されました。
(注1):直近の3年度平均の実質賃金変動率プラス0.3%に、前年の消費者物価指数の変動率プラス2.5%を上乗せした値。
その結果、令和5年度の年金額は、新規裁定者(67歳以下の方)は前年度から2.2%の引き上げ、既規定者(68歳以上の方)は前年度から1.9%の引き上げになりました。
【図表5】
※筆者作成
2. 国民年金(老齢基礎年金)の改定額
新規裁定者の老齢基礎年金の年金額(満額)は月額6万6250円で、令和4年度と比べて月額で1434円の増額となります。
3. 厚生年金の改定額
平均的な会社員(注2)の夫と専業主婦の夫婦が受け取る、老齢厚生年金と2人分の満額の老齢基礎年金の合計額は月額22万4482円となり、前年度から月額で4889円の増額です。
(注2):平均的な収入(賞与含む月額換算の平均標準報酬43 万9000円)で 40 年間就業した会社員。
まとめ
公的年金は、原則として賃金や物価が上がると給付額が増える仕組みになっていますが、年金の持続性を保つため、物価の伸びより給付額を抑えるマクロ経済スライドが導入されています。
令和5年度の年金額改定では、新規裁定者で老齢基礎年金(満額)が月額1434円、平均的な会社員と専業主婦の夫婦2人が受け取る老齢年金の合計額は月額で4889円の増額となります。
出典
(※1)日本年金機構 物価スライド
(※2)日本年金機構 マクロ経済スライド
(※3)日本年金機構 年金Q&A マクロ経済スライドのキャリーオーバー制度とは何ですか
(※4)厚生労働省 令和5年度の年金額改定についてお知らせします
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
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