亡き家族の借金まで相続される? 相続放棄の手続き方法と注意点
ファイナンシャルフィールド / 2023年2月8日 10時10分
家族に財産を残して亡くなった人(被相続人)がいた場合、避けて通れないのが相続です。 ただし、相続を受ける人(相続人)にとって、必ずしも預金や不動産といったプラスの財産だけが相続対象とは限りません。被相続人に借金などがあった場合、マイナスの財産も相続対象となります。 では、借金といったマイナスの財産を相続したくないとき、どのような手続き方法があるでしょうか?
相続の方法には3つの種類がある
相続の方法には「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の3つの種類があり、相続が発生した場合、相続人はそのうち1つを選択することになります。それぞれの違いを簡単にまとめたものが表1です。
【表1】
単純承認 | 3つの中で一番簡単な方法。プラスの財産もマイナスの財産も含め、相続財産を全て受け継ぐ。 |
限定承認 | 被相続人に借金などの債務があった場合、債務について被相続人の財産から弁済する方法。相続人の財産は弁済の対象とはならない。 |
相続放棄 | プラスの財産もマイナスの財産も、全てを相続しない方法。 |
※筆者作成
被相続人の死亡後(相続の開始があったことを知った日から)、3ヶ月以内(熟慮期間)に限定承認や相続放棄の手続きを行わないと、単純承認したことになります。
また、熟慮期間内であっても、相続財産を一部でも処分してしまうと、同じく単純承認したことになってしまうので注意が必要です。
なお、熟慮期間については、明確な理由があって家庭裁判所に申し立てを行い、承認されれば延長することが可能です。
相続財産に借金などマイナスの財産があるような場合は、単純承認以外の方法を検討してみましょう。限定承認であれば、借金などの債務は被相続人の財産の範囲でのみ弁済するため、相続する財産がマイナスになるようなことはありません。
また、相続財産全体がプラスになった場合には、プラスの部分の財産だけを相続することができます。
債務がどの程度なのか不明で、相続財産全体がプラスになるのかマイナスになるのかよく分からないときに、限定承認は有効な方法です。
ただし、限定承認では相続人が複数存在する場合、相続人全員(すでに相続放棄をした人を除く)が同時に手続きを行う必要があり、1人だけが限定承認を選択することはできません。そのため、財産や借金などの調査なども含め、かなりの時間と手間がかかることが考えられます。
借金を背負いたくないときは相続放棄が有効
相続財産がマイナスになることが明らかな場合、相続放棄が有効な方法になります。
相続放棄は、限定承認のように他の相続人と共同で手続きする必要はなく、個人で判断して手続きを進められます。手続きが完了したら、相続放棄した人は最初から相続人とならなかったものと見なされます。
相続放棄のメリット
相続放棄を選択するメリットには次のようなものがあります。
●被相続人の借金などのマイナスの財産を背負わなくて済む。
●相続における親族間のもめ事に巻き込まれなくて済む。
●相続人単独で手続きを進められる。
相続放棄の注意点
一方で、相続放棄を選択する際の注意点には次のようなものがあります。
●相続放棄は一度承認されると、通常は撤回できない。承認後にプラスの財産があることが分かっても撤回できないので、相続放棄の選択は慎重に行う必要がある。
●相続放棄をすると、被相続人の借金などを法定相続人(相続放棄による相続権の移動は法定相続人の兄弟姉妹まで)の範囲で他の人が負担することになる可能性がある。そのため、相続放棄は相続人単独で手続きを進められるが、他の相続人と相談しながら進める方が安心。
相続放棄に必要な書類と手続方法
相続放棄に必要な書類などは次のようなものです。
●相続放棄申述書・被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
●相続人(申述人:相続放棄をする人)の戸籍謄本
●収入印紙(手続き費用として、申述人1人につき800円)
●郵便切手(申述先の家庭裁判所により数百円~1000円ほど)
相続放棄申述書の用紙は、裁判所のホームページや家庭裁判所で入手できます。必要な書類をそろえて、前述したとおり、相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内に申述を行いますが、申述先は被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所となります。
相続放棄の手続きは自身で行うこともできますが、不安な場合は弁護士や司法書士など専門家に依頼することも可能です。数万円程度の依頼費用はかかりますが、手続きに時間をさけない場合や財産の評価が難しい場合などは、専門家に任せることで安心できるでしょう。
まとめ
相続は突然起きることが多く、相続方法の選択について熟慮期間が3ヶ月あるといっても、対象となる財産や相続人が多い場合などでは調査や連絡などにかなりの時間がかかるケースもあります。
相続方法にはどのような種類があり、どういった手続きを進めなくてはならないか、そのときになって慌てないよう、ある程度は把握しておきましょう。
出典
裁判所 相続の放棄の申述
裁判所 相続の放棄の申述書(成人)
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)
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