「ふるさと納税」は自治体にとっては「損」って本当? 都市部では「税金の流出」が多い?
ファイナンシャルフィールド / 2023年2月9日 2時30分
ふるさと納税は、自分が住んでいない自治体に寄付することで住民税や所得税の控除が受けられる制度です。2008年に開始して以降、寄付総額は増加を続け、2021年度には8000億円を突破しました。 ふるさと納税は、利用者にとって返礼品などのメリットがありますが、自治体にとってはどのような影響があるのでしょうか。 この記事では、ふるさと納税が自治体にとって「損」なのかを検証していきます。
ふるさと納税で損をする自治体は?
ふるさと納税では、住んでいる自治体に納めるはずの税金を、応援したい自治体に寄付することで住民税や所得税が控除されます。
返礼品のイメージが強いふるさと納税制度ですが、本来は地方創生・地方活性化を背景に設けられており、過疎化・高齢化・財政難といった問題を抱える地域をサポートすることが目的となっています。ふるさと納税は制度の背景や仕組みから考えると、地方より都市部の自治体が損をしやすい傾向です。
実際に、「税金の流出」が多い自治体は、横浜市・名古屋市・大阪市・川崎市・東京都世田谷区など、都市部に集中しています。ふるさと納税によって自治体から税金が流出すると、行政サービスに影響が出る恐れがあります。人気がない都市部の自治体にとっては、ふるさと納税で税収が減ってしまうといったデメリットがあり、そこに住む人々も市民サービスの質の低下が懸念されます。
一方、魅力的な返礼品がある自治体や応援してくれる人の多い自治体は、大幅な税収アップが期待できます。ふるさと納税で得をしている自治体は圧倒的に地方が多く、特に北海道や宮崎県が人気です。北海道は海鮮、宮崎県は肉と焼酎が特産品となっており、返礼品を目的とした寄付が全国から集まりました。
ふるさと納税を活用する取り組み
ふるさと納税で多額の寄付が集まれば、質の高い行政サービスが提供できるようになります。それぞれの自治体が税収を増やせるような取り組みを行っていますが、過度な「返礼品競争」に陥ってしまう課題もあります。また、同じ地方でも、返礼品の内容によって税収に大きな差が生じています。返礼品としては、「食」がもっとも人気が高く、肉や魚などの特産品がある地域が有利です。
返礼品を基準に寄付先を選ぶ利用者も多いため、自治体は地域企業と連携して魅力的な商品・サービスを考えなければなりません。最近では、スポーツ選手と交流できる「体験型のお礼品」、寄付先の学校を指定できる「学校ふるさと応援寄附金」など、ユニークな返礼品も登場しています。
また、ふるさと納税は、熊本地震の復興などでも活用されています。まだまだ課題も多いふるさと納税制度ですが、自治体は税収を増やすだけでなく、市民のためにどのように活用していくのかをしっかりと検討する必要があります。
利用者・自治体の双方にメリットのある仕組みにしよう
ふるさと納税は利用者にとって税金控除、返礼品の受け取りといったメリットがあります。寄付の多い自治体は、財源確保や行政サービスの充実も図れますが、税収が減ってしまう自治体は損をすることになります。
自治体が損をすると、そこに住んでいる市民に影響が及ぶ恐れもあるため、利用者・自治体の双方にメリットのある仕組みにすることが重要です。
出典
総務省 ふるさと納税に関する現況調査結果(令和4年度実施)
川崎市 「ふるさと納税」によって流出している市税は、本来は、私たち川崎市民のために使われる貴重な財源です。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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