国民年金の支給額が月額「1434円」アップ!「2024年」はどうなる? 支給額が決まる仕組みもおさらい
ファイナンシャルフィールド / 2023年2月13日 23時20分
新しい年金支給額が発表されました。67歳以下の場合、国民年金は月額1434円引き上げ、厚生年金は2人暮らしの標準的な世帯の場合月額4889円引き上げと、いずれも2020年以来3年ぶりのアップです。 しかし、物価の上昇率が大きい昨今、喜んでばかりはいられません。年金額の改定の仕組みを理解しておかないと、老後にゆとりある生活を送れるかの見通しも立ちません。 本記事では年金改定の基本的な仕組みについて解説します。
2023年の年金改定額
1月20日に、日本年金機構から2023年の年金改定額が発表されました。65~67歳までの年金額月額は次のとおりです。
・国民年金 6万6250 円(前年比+1434円)
・厚生年金 22万4482 円(前年比+4889 円)
(厚生年金は夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)
また、68歳以上の国民年金額は、月額6万6050円 (対前年度比+1234 円)です。改定後の年金額は、6月支給分から適用されます。昨年は物価が上がったので、年金額も当然上がったと考える人も多いでしょう。
物価と賃金の上昇率
それでは、2022年の物価と賃金の上昇率はどうだったのでしょうか。年金額の改定には、物価変動率と名目手取り賃金変動率が影響します。2022年度の上昇率は次のとおりです。
・物価変動率 2.5%
・名目手取り賃金変動率 2.8%
どちらも2%台の高い伸びを示しています。これに対し年金支給額はそれほど上がっていません。
2023年の年金上昇率は、65~67歳は 2.2%、68歳以上は 1.9%です。どちらも物価や賃金の上昇率には追いついていません。実質的に、受け取る年金額が目減りしているといえます。この原因は「マクロ経済スライド」による調整にあるのです。
年金額改定の仕組み(マクロ経済スライド)
年金額は、物価や賃金の変動に応じて毎年改定が行われます。名目賃金変動率が物価変動率を上回る場合、新規裁定者(65~67歳)は名目賃金変動率を、既裁定者(68歳以上)は物価変動率を用いて改定されます。
2023年の改定率は次のとおりです。
名目賃金変動率(物価変動率)-マクロ経済スライド調整率=年金改定率
・新規裁定者(65~67歳)・・・名目賃金変動率2.8%-0.6%=2.2%
・既裁定者(68歳以上)・・・物価変動率2.5%-0.6%=1.9%
2004年に行われた年金制度改正では、物価や賃金の変動率が上昇した場合、その伸びをマクロ経済スライド調整率により抑制することになったのです。この「スライド調整率」は、年金制度を支える現役の被保険者の減少と平均余命の伸びに応じて算出するもので、年金財政の悪化を防ぐ目的があります。
2023年のマクロ経済スライド調整率▲0.6%の内訳は次のとおりです。
・マクロ経済スライドによるスライド調整率 :▲0.3%
・前年度までのマクロ経済スライドの未調整分:▲0.3%キャリーオーバー
2021年と2022年は物価も賃金も下落していたので、スライド調整率を用いた年金額の調整が行われていませんでした。その分が、2023年にキャリーオーバーされて、まとめて適用されたのです。
来年の年金額はどうなるのか
2023年の年金額は、65~67歳までの場合次のとおりアップされました。
・国民年金 6万6250 円(前年比+1434円)
・厚生年金 22万4482 円(前年比+4889 円)
では、来年(2024年)はどうでしょうか。物価変動率の参考として、全国に先駆けて発表される東京都の消費者物価指数を見ると、2023年1月分中間速報値の総合指数で0.7%上昇しています。
一方、政府は積極的に賃上げを経済界に呼びかけている状況なので、賃金の上昇傾向が続くと思われます。このため来年の年金額も増えることが予想されますが、マクロ経済スライドによる調整が続くため、今年と同じように物価の上昇に追いつかず目減りする可能性が高いです。
今後も年金額の動向に注意していきましょう。
出典
日本年金機構 令和5年度の年金額改定についてお知らせします
日本年金機構 年金額はどのようなルールで改定されるのですか。
総務省統計局 年金給付額の調整
総務省統計局 2020年基準消費者物価指数東京都区部2023年(令和5年)1月分(中旬速報値)
執筆者:二角貴博
2級ファイナンシャルプランナー
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