職場の「来客用のお茶」を飲んでいました…知らなかったとはいえ「横領」になりますか?
ファイナンシャルフィールド / 2023年2月14日 2時30分
会社の中には、「従業員が自由に飲んでいいお茶」と「来客用のお茶」が、給湯室などで一緒に保管されている場合があります。もし、従業員が来客用のお茶を間違えて飲んでしまった場合、法的にはどうなるのでしょう。 業務上横領の容疑で逮捕された人のニュースを見かけますが、会社の備品として本来、従業員が勝手に飲んではいけないお茶をうっかり飲んだ場合にも、横領罪に問われるものでしょうか。
横領とはどのような犯罪?
横領とは、自分が権限をもって占有している他人の財物(財産的価値のある物)を、自分のものとして使用・処分することです。日本の刑法では、単純横領罪(252条/最高刑で懲役5年)、業務上横領罪(253条/最高刑で懲役10年)、遺失物等横領罪(254条/最高刑で懲役1年)の3種類が定められています。
例えば、他人から預かっている金銭を着服した場合に横領罪が成立し、特に会社の経理担当者などが会社のお金を私的に使い込んだ場合などに、業務上横領罪が適用されている様子がニュースなどで報道されることがあります。
その一方、他人から預かっているわけではない他人の財物を、自分のものとして使用・処分した場合には、窃盗罪(刑法235条/最高刑で懲役10年)が適用されます。
職場にある来客用のお茶をうっかり飲んでしまった従業員に横領罪は適用される?
もし、職場にある会社の財物を従業員が着服したならば、業務上横領罪が適用されそうなところです。
ただ、来客用のお茶として保管しているものを、職場のみんなで飲んでいいお茶だと「勘違い」した従業員であれば、そのお茶の管理などを会社から委託された立場ではないと考えるのが自然でしょう。だとすれば「自分が権限をもって占有している他人の財物」とはいえないため、業務上横領罪が適用される前提を欠いています。
職場にある来客用のお茶をうっかり飲んでしまった従業員に、窃盗罪は適用されるか?
では、自分が権限をもって占有しているわけではない他人の財物を着服した点で、従業員には窃盗罪が成立しないのかどうかが問題となります。確かに、従業員は来客用のお茶を飲める立場にはありませんので、会社の許可を得ずに勝手に飲めば、窃盗罪が成立しそうです。
しかし、来客用のお茶だと知らずにうっかり飲んでしまったのであれば、わざと盗んだわけではないため、窃盗罪は適用されず、不可罰(無罪)となります。窃盗罪で過失犯は処罰されないからです。
ただし、過失であっても民事上は弁償(損害賠償)として、うっかり飲んでしまった茶葉の価格を会社に支払うべきでしょう。実際には、会社に正直に申し出れば弁償は免除され、許してもらえる場合がほとんどだと考えられます。
一方、見るからに明らかに高級なお茶であり、「仮に来客用のお茶だとしても構わない」と認識した上であえて飲んだのであれば、もはや過失犯としての言い逃れはできません。この場合は未必の故意があるものと認定され、窃盗罪が適用される可能性が高いです。弁償も必要となるでしょう。
オフィスにある飲み物を飲むときは、念のため事前に確認しましょう
従業員が自由に飲んでいいお茶と来客用のお茶が、給湯室などで一緒に保管されている場合、どちらなのか判断が付きにくいケースもあるでしょう。ややこしい場合には、必ず事情に詳しそうな上司や総務部門のスタッフに確認したほうが安全です。
たとえ、来客用のお茶を間違えて飲み続けていた従業員がいたとしても、会社にとっての損害は決して大きくないでしょうが、確認不足でこうした間違いを繰り返す従業員は、徐々に会社からの信頼を失っていきます。
出典
e-Gov法令検索 刑法 第三十八章 横領の罪
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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