相続した土地を国が引き取る「相続土地国庫帰属制度」がスタート
ファイナンシャルフィールド / 2023年2月16日 22時40分
令和5年4月27日から「相続土地国庫帰属制度」が始まります。 相続で実家を相続したが、遠方で利用予定がない、あるいは管理が大変といった理由で土地を手放したいという方がいらっしゃるでしょう。そのような土地が放置されることによって、将来的に所有者不明土地が発生するのを防ぐための制度が「相続土地国庫帰属制度」です。どのような特徴があるのか見ていきましょう。
相続土地国庫帰属制度のポイント
制度のポイントは、下記のとおりです。
1.相続等によって、土地の所有権または共有持分を取得した者等は、法務大臣に対して、その土地の所有権を国庫に帰属させることについて、承認を申請できます。
2.法務大臣は、承認の審査を実施するために必要な場合において、その職員に調査させることが可能です。
3.法務大臣は、承認申請された土地が、管理や処分をする際に通常よりも費用・労力がかかる土地として、法令の規定に当たらないと判断した時は、土地の所有権について国庫への帰属を承認します。
4.土地の所有権の国庫への帰属の承認を受けた方が、国に一定の負担金を納めた時点で、土地の所有権は国庫に帰属することになります。
(引用:法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」)
誰が申請できるの? どこに申請するの?
相続または相続人に対する遺贈によって、土地を取得した人が申請可能です。また、共有者も申請できます。よって売買など自ら土地を取得した方や、法人は対象外です。
相続等により、土地の共有持分を得た人(共有者)は、共有者の全員が共同して申請を行うことや、土地の共有持分を相続等以外の原因により取得した共有者がいるケースであっても、相続等によって共有持分を得た共有者がいるときは、共有者の全員が共同して申請を行うことで本制度を活用できます。
また、施行は4月27日ですが、それより前に相続した土地も対象となります。申請先は、帰属させる土地を管轄する法務局・地方法務局が予定されています。
認められないケースは?
帰属が承認されない土地の要件は、以下のとおりです。
1.建物がある土地
2.担保権や使用収益権が設定されている土地
3.他人の利用が予定されている土地
4.土壌汚染されている土地
5.境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地
6.一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
7.土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
8.土地を管理・処分するために、地下に除去しなければならない有体物がある土地
9.隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
10.その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地
(出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」)
費用はどれくらいかかるの?
上記の土地の審査の手数料については、2023年1月現在では未定となっています。負担金(国が管理をすることとなった土地に関して、もとの土地の所有者が土地の管理の負担を免れる程度に応じて、国に生ずる管理費用の一部)は必要となります。
実際に承認を受けた場合には10年分の土地管理費用相当額となり、土地の地目や面積等によって決められています。具体的には図表1のとおりです。
【図表1】
(※)宅地のうち都市計画法の市街化区域、または用途地域が指定されている地域内の土地は、図表2のようになります(田・畑、森林が省略)。
【図表2】
これらの負担金は、柵設置・看板設置・草刈・巡回・境界表示など用途によって、管理行為をするための費用となります。
手続き方法は?
まず、国庫帰属の承認申請を行います。その後法務局担当官による書面審査、実地調査が行われ法務大臣による承認が行われます。承認後30日以内に負担金を納付したら、国庫に帰属します。
まとめ
地元にお住まいの方であれば特に問題にならないことかもしれませんが、進学や就職等で地元を離れた方にとって、遠くの土地を管理することは非常に難しいですね。限りある土地ですので、少しでも有効活用させる意味でもこの制度を使う意味はあるのではないでしょうか。
出典
法務省 相続土地国庫帰属制度の概要
法務省 相続土地国庫帰属法施行令について
執筆者:田久保誠
田久保誠行政書士事務所代表
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