70歳以上がフルタイムで働く場合、社会保険に加入できる? 注意すべき点は?
ファイナンシャルフィールド / 2023年2月21日 9時0分
![70歳以上がフルタイムで働く場合、社会保険に加入できる? 注意すべき点は?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_188072_0-small.jpg)
2021年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法により、事業主には70歳までの就業機会確保が努力義務となりました。人生100年時代といわれますが、長生きを意識して70歳以降もフルタイムで働く人もいるでしょう。 がフルタイムで働く場合には社会保険に加入しますが、70歳未満と異なる点や年金受給で注意すべき点について紹介します。
70歳以上でも社会保険に加入できる
フルタイム勤務など一定の条件を満たす人は勤務先の社会保険に加入しますが、70歳以上でも基本的には変わりません。
社会保険には次の5つの保険があります。
●医療保険(健康保険)
●年金保険
●介護保険
●雇用保険
●労災保険
70歳以上の場合、原則として年金保険は加入対象となりませんが、それ以外の4つの保険に加入します。雇用保険は2017年1月1日以降に制度が変わり、65歳以上の人も高年齢被保険者として適用の対象となっています。
医療保険は70歳、75歳で制度が変わる
医療保険は75歳未満の健康保険、75歳以上の後期高齢者医療保険と大きく2つに分かれており、さらに健康保険でも70歳未満と70歳以上で医療費の負担の仕組みがやや異なります。
健康保険では、医療費の自己負担割合は70歳未満が一律3割なのに対して、70歳以上75歳未満は一定以上所得者で2割、現役並み所得者で3割となっています。現役並み所得者とは、住民税課税所得が145万円以上、かつ収入の合計が単身世帯で約383万円(被保険者が2人以上いる世帯で約520万円)以上の方です。
また、70歳以上75歳未満の人には負担割合が記載された「高齢受給者証」が発行され、医療機関を受診する際に保険証と一緒に提出します。
75歳になると、それまでの健康保険から移行して後期高齢者医療制度に加入することになります。後期高齢者医療制度は75歳以上の人が加入する医療保険であり、医療費の自己負担割合は所得に応じて1割から3割となっています。
後期高齢者医療制度で自己負担割合が3割(現役並み所得者)となるのは、住民税課税所得が145万円以上、かつ収入の合計が単身世帯で約383万円(被保険者が2人以上の世帯で約520万円)以上の場合です。
2割(一定以上所得者)となるのは、主に年金収入と年金以外の所得の合計が単身世帯で約200万円以上(複数世帯で320万円以上)の場合で、それ以外(一般所得者等)は1割です。自己負担割合の判定方法についての詳細は、各自治体の窓口で確認してください。
70歳以上は厚生年金の被保険者ではなくなる
会社員・公務員などの人は厚生年金保険に加入しますが、厚生年金保険に加入できるのは70歳未満となっており、70歳になると厚生年金保険の被保険者ではなくなります。
70歳以上は厚生年金保険料を支払う必要はなくなりますが、働いたとしても将来の厚生年金の受給額が増えることもありません。つまり、老齢厚生年金の受給額は70歳までの収入で決まるということになります。
70歳以上でも老齢厚生年金の受給額が調整されることがある
厚生年金の被保険者が老齢厚生年金を受給している場合、老齢厚生年金(基本月額)と給料(総報酬月額相当額)の合計額に応じて年金額が支給停止となるケースがあります。
また、2007年4月以降に70歳に達した人は、70歳以降も厚生年金適用事業所に勤務していると厚生年金の被保険者ではないものの、老齢厚生年金の支給停止の対象となります。
基本月額とは、加給年金を除いた老齢厚生年金(比例報酬部分)の月額のことで、総報酬月額相当額とは、毎月の給料に応じて区分される標準報酬月額に、直近1年間の賞与(標準賞与額)の合計を12で割った金額を加えたものです。
基本月額と総報酬月額相当額の合計額が47万円以下の場合、老齢厚生年金は全額支給されますが、47万円を超える場合は次の金額が年金(基本月額)から減額されます。
(基本月額+総報酬月額相当額-47万円)÷2
まとめ
70歳以上でフルタイム勤務する場合、社会保険に加入することになります。健康保険については収入に応じて自己負担が変わり、収入が一定額を超えると自己負担割合が70歳以上で3割、75歳以上で2割または3割になる可能性があります。
また、年金についても老齢厚生年金の一部が支給停止になる場合があります。
老後もフルタイムで働く場合は給料を確認し、病気やけがをしたときの医療費の自己負担割合や、年金受給額について事前に把握しておくといいでしょう。
出典
厚生労働省 高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~
厚生労働省 (事業主の方へ)雇用保険制度が変わります。
厚生労働省 高齢者医療制度
日本年金機構 適用事業所と被保険者
日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
執筆者:伊達寿和
CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、相続アドバイザー協議会認定会員
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