年金が「78万円→143万円」に!? 繰上げ・繰下げどっちがいいの? 判断基準も解説
ファイナンシャルフィールド / 2023年2月22日 23時10分
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公的年金制度の受け取り方には、繰上げ受給と繰下げ受給という制度があります。繰上げ受給は65歳よりも早く年金を受け取り始めることで、繰下げ受給は65歳よりも遅く年金を受け取り始めることです。 繰上げ受給をすると、早く年金が受け取れるというメリットはあるものの、受給額は低くなってしまいます。一方、繰下げ受給をすると年金額は高くなりますが、働く期間を延ばさないといけなくなります。 この記事では、公的年金の繰上げ受給、繰下げ受給の判断をするための考え方について解説します。
年金の繰上げ・繰下げ制度について
まず、年金の繰り上げ、繰り下げで受給額がどのように変化するかを解説します。
年金繰り上げ後の減額率
公的年金は繰り上げすると受給額は減額されます。減額率は以下の式で計算します。老齢基礎年金、老齢厚生年金共に同じ計算式になります。
減額率=0.4%×繰上げ請求月から65歳になる日の前月までの月数
繰り上げできるのは、最も若い年齢で60歳0ヶ月からになります。60歳0ヶ月から65歳になる日の前月までの月数は、最長で60ヶ月になります。60歳時点で繰上げ受給を開始すると、減額率は下記のとおりになります。
減額率=0.4%×60ヶ月=24%
(注)昭和37年4月1日以前生まれの人の減額率は、0.5%(最大30%)になります。
もし、老齢基礎年金の満額の受給額である約78万円から24%を減額すると、受給額は約59万円になります。なお、老齢厚生年金も受け取れる方が繰り上げをする場合、老齢基礎年金と老齢厚生年金を両方繰り上げる必要があります。
年金繰下げ後の増額率
公的年金を繰下げ受給した場合の増額率は以下のとおりです。
増額率=0.7%×65歳になった月から繰下げ申出月の前月までの月数
繰り下げできるのは、最も高い年齢で75歳0ヶ月までになります。75歳まで繰り下げをすると、0.7%に乗じる期間は120ヶ月になります。75歳時点で繰下げ受給をすると、増額率は下記のとおりになります。
減額率=0.7%×120ヶ月=84%
もし、老齢基礎年金の満額の受給額である約78万円に84%を増額すると、受給額は約143万円になります。夫婦2人分であれば約286万円になるので、繰下げ受給は老後対策の基本的な方法の1つといえます。
繰上げ受給をした方がいい人、繰下げ受給をした方がいい人
次に、繰上げ受給と繰下げ受給について、それぞれどのような方が適しているのかを解説します。
繰上げ受給が合っている人
60歳以降に収入が下がってしまい、生活費を工面できない人が繰上げ受給をするのは1つの選択肢として有効です。しかし先述のとおり、繰上げ受給をすると年金の受給額は下がってしまいます。下がった年金額は生涯変わりません。ゆえに、できれば繰上げ受給は避けたい選択肢といえるでしょう。
例えば、60歳以降まで子育てが続く人が、「繰上げ受給で子育て中の生活面を支え、子どもが独立した後は下がった年金でなんとかやりくりする」といったようにライフプランを鑑みて判断する必要があります。
繰下げ受給が合っている人
「老後の生活費を考えると年金だけでは足りそうもない」「65歳以降も働くことは問題ない」という人に、繰下げ受給は向いています。また、「老後はお金の心配をしないで悠々自適に暮らしたい」という人が繰下げ受給を選択する場合もあります。
ただし、65歳以降に働く場合は、基本月額(加給年金を除いた厚生年金の月額)と総報酬月額相当額(標準報酬月額+直近1年間の標準賞与額÷12)の合計額が47万円を超える程度に給与を稼いでしまうと、在職老齢年金の制度に基づきカットされた厚生年金部分は、繰下げの対象にならない点には注意が必要です。
先述のとおり、繰下げ受給をすると年金額は増額されます。65歳からの受給額では節制した生活を送らないといけない人が、70歳まで受給を遅らせることで、趣味などの好きなことにお金を使う余裕が生じる可能性はあります。また、心身共に元気であれば、働くことで社会に貢献したいという人もいます。繰下げ受給は、老後の生活を豊かにしたい人にとって有効な手だてになります。
まとめ
過去話題になった「老後2000万円問題」でもあったとおり、公的年金だけで豊かな老後生活を送るのは一般的には難しいかもしれません。
また人生100年時代といわれていることもあり、長生きをすることで老後の蓄えが枯渇してしまう可能性もあります。繰下げ受給は豊かな老後生活を送るための1つの選択肢になります。
出典
日本年金機構 年金の繰上げ受給
日本年金機構 年金の繰下げ受給
執筆者:遠藤功二
1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)CFP(R) MBA(経営学修士)
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