「暦年贈与」相続財産に加える期間が7年に延長
ファイナンシャルフィールド / 2023年2月23日 11時30分
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2023年2月現在 では、相続開始前3年以内の贈与を相続財産に加えることになっていますが、令和5年度税制改正大綱で、相続財産に加える期間が7年に延長されることが示されました。 また、延長4年間に受けた贈与については総額100万円まで相続財産に加算しないことになります。この改正により、相続対策の王道である「暦年贈与」による資産移転の期間が短くなり、相続対策の効果が弱まるといえます。 本記事では、「暦年贈与」について基礎知識をおさらいします。
贈与とは
贈与とは、「あげる」「もらう」といった贈与者と受贈者の契約により、無償で財産を移転することをいいます。生きている間に次の世代に贈与(生前贈与)することは、相続財産を減らすだけではなく、次世代に移転した財産を有効活用してもらうというメリットがあります。
暦年贈与では、1年間(1月1日~12月31日)に贈与を受けた財産の価額の合計額(課税価格)から、基礎控除額110万円を差し引いた残額(基礎控除後の課税価格)について、贈与税が課されます。贈与税はもらった人が支払います。
税率は、「一般贈与財産用」と「特例贈与財産用」があります。「特例贈与財産用」は贈与を受けた年の1月1日において18歳以上の受贈者が、父母や祖父母などの直系尊属から贈与により財産を取得した場合に用いられます。
財産を無償で移転したのに贈与と認められないケース
贈与は契約です。「あげる」「もらう」といった意思の合致が必要です。例えば、親が子ども名義の銀行口座を開設して毎年110万円振り込んでも子どもが贈与の事実をしらなければ贈与契約は成立しません。
つまり、名義預金として相続財産に加算されます。名義預金とみなされないためには口座の存在を受贈者に知らせ、通帳の管理や印鑑の管理を受贈者がすることが大切です。
贈与契約は書面を要件としていませんが、贈与の事実を明確にするため、現金贈与の場合、贈与契約書の作成をおすすめします。1000万円を一度に贈与すると贈与税がかかるので100万円を毎年100万円ずつ、10年間贈与することを考える人がいます。
この場合「定期金の贈与」とみなされ、贈与税がかかる場合があります。「定期金の贈与」とみなされないために、場合によっては110万円を超える贈与をして贈与税の申告をするなど、渡し方の工夫をするとよいでしょう。
相続時における贈与財産の加算
贈与によって財産を取得した人が、被相続人からその相続開始前3年(改正により7年に改正予定)以内に、暦年課税に関わる贈与によって取得した財産がある場合には、相続税の課税価格に、贈与をした財産の贈与時の価額が加算されます。
この場合、その加算された贈与財産の価額に対応する贈与税の額は、加算された人の相続税の計算上控除されます。ただし、被相続人から生前に贈与された財産であっても、下記の財産については加算しなくてよいことになっています。
(1) 贈与税の配偶者控除の特例の適用を受けているまたは受けようとする財産のうち、その配偶者控除額に相当する金額
(2) 直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち、非課税の適用を受けた金額
(3) 直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち、非課税の適用を受けた金額
(4) 直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち、非課税の適用を受けた金額
なお、上に記載した金額のうち、贈与者の死亡時における管理残額については、相続等によって得たものとみなし、相続税の課税価格として加算されるケースがあります。
みなし贈与財産
一般的な贈与で取得した財産以外にも、贈与で取得したとみなされる「みなし相続財産」があります。例えば、親が子どもの借金を肩代わりする場合、親から子どもへの贈与とみなされるので気をつけましょう。
●みなし贈与財産の例
・生命保険金
保険料負担者と保険金受取人が異なる場合の満期保険金など
・低額譲渡
著しく低額で財産を譲り受けた場合
・債務免除
借金の免除や肩代わりを受けたとき
など
贈与税のかからないもの(非課税財産)
贈与税のかからない財産もあります。例えば、110万円を超えて贈与をしても夫婦や親子、扶養義務者(兄弟姉妹など)から生活費・教育費のために取得した財産で、通常必要と認められるものには贈与税がかかりません。
教育資金の贈与に関し、暦年贈与以外に、「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税」もありますが、その都度資金援助したほうが毎年感謝されるかもしれません。
●贈与税のかからないもの(非課税財産)
・生活費や教育費として通常必要と認められる金額
・社会通念上相当と認められる香典、祝金、見舞金など
・離婚に際しての財産分与
など
ただし、「感謝されたいから」と安易に選択するのではなく、自身の状況などを確認して贈与方法を検討するようにしましょう。
出典
自由民主党 公明党 令和5年度税制改正大綱(令和4年12月16日)
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。
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