NISA枠の拡大見直しについて
ファイナンシャルフィールド / 2023年2月25日 0時10分
![NISA枠の拡大見直しについて](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_188757_0-small.jpg)
NISA制度が改正されることとなり、抜本的拡充と恒久化が話題となっています。 現在のNISA制度は、少額からの投資を行う人向けの非課税制度として始まったもので、老後資金など、ある程度の金額の金融資産を積立・保有するには不向きな点がありました。 ここでは、2023年度の税制改正大綱に記載されたNISAの改訂内容について学んでみましょう。
現在のNISA制度の課題
現在施行されているNISA制度は、「一般NISA」枠が年120万円と「つみたてNISA」枠が年40万円のどちらかを選択することになっています。また、期間は「一般NISA」が5年間、「つみたてNISA」は20年間に限定されており、非課税限度額は「一般NISA」では600万円、「つみたてNISA」では800円です。
個人差はありますが、老後資金として2000万円以上の金融資産を貯めたい人にとっては、中途半端な期間と非課税枠になっていると言えるでしょう。ときにはNISA枠に入れた銘柄が額面割れになることもあり、逆にNISAに入れたことで損益通算の損切りができないこともあります。
新NISAの概要
2023年度の税制改正大綱に記載された新NISAの概要は次の表の通りです。
![](https://financial-field.com/wp/wp-content/uploads/2023/02/75e53d4448e1e2458319d198b7c42715-35.jpg)
表は(※1)に基づき筆者が作成
・現行NISAではつみたてNISAか一般NISAのどちらかの選択でしたが、新NISAでは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の併用が可能になります。
・年間投資枠は、つみたて投資枠が年間120万円、成長投資枠は年間240万円となり、合計で年間360万円に拡大されます。
全期間を通じての非課税限度額は1800万円になります。非課税枠のうち成長投資枠の1200万円は1800万円の内数ですから、1800万円すべてをつみたて投資枠で使用することも可能です。
・非課税期間は無期限(生涯)となりますので、ロールオーバー等の面倒な手続きは不要になります。
新NISAの具体的利用の想定ケース
夫婦で1800万円の限度枠をそれぞれ利用したとすると、一世帯で合計3600万円まで非課税で金融資産を保有することができます。積み立てや銘柄株式・投資信託をNISA口座で保有した場合、購入時の簿価ベースの金額が、非課税限度枠に収まれば良いことになっています。
例えば、毎年24万円の積み立て投信を20年または30年間続けるとして、仮に年間3%の運用ができた場合は、次のようになります。
20年の場合 元金480万円、運用益176.6万円 合計評価額は656.6万円
30年の場合 元金720万円、運用益444.5万円 合計評価額は1165.5万円
節税額は、20年の場合は35.3万円(176.6×税率20%)、30年間の場合は88.9万円(444.5×税率20%)になります。
このほかに、成長投資枠に額面で800万円の上場株式を保有して、30年間で200万円の値上がり益と年間12万円(1.5%)の配当があった場合、200万円と360万円(12×30年)の合計560万円が非課税となります。上場株を売却した場合の利益と配当への税金は、最大で112万円が節税になります。
ただし、投資信託と上場株式はどちらも値下がりの可能性がある金融資産ですので、20年~30年間同じように3%の運用益が出る保証はされていません。ときには年間で評価ダウンの年もあると思いますが、5年、10年または10年以上の期間で見た場合は、過去の統計上は全体としての評価額は上がるとされています(※2)
また、より多くの人が、預貯金から上場株や投資信託に資産保有の配分を変えることで、非課税で運用益を得られる機会が増える可能性と共に、より金融証券市場も安定的に拡大することになると期待されています。
NISA制度のねらい
今回のNISA制度の改定は、投資運用に知識があって、関心の強い人が利用する現在の制度から、より多くの人が株式や投資信託をNISA口座で保有して、運用益と税の非課税の特典を受けることができるようにするのがねらいと思われます。
また、30年間続いたデフレから、物価が上昇するインフレに向かう可能性が出てきたので、金融資産の運用によって、物価上昇をカバーすることも必要な時代に入ったのではないでしょうか。
まとめ
NISAの改定は2023年の税制大綱に折り込まれた段階ですが、今年の春の給与上昇分の配分を考える中で、従来の預金中心の積み立てから、少し方向転換する際の選択肢として検討してみてはいかがでしょうか。
出典
(※1)金融庁 新しいNISA
(※2)金融庁 長期・積立・分散投資とNISA制度 15P
執筆者:植田英三郎
ファイナンシャルプランナー CFP
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