国民年金を追納したら確定申告をしたほうがいい?
ファイナンシャルフィールド / 2023年2月28日 11時0分
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学生納付特例などを利用し国民年金を追納した場合、確定申告をしたほうがよいのでしょうか。FPが解説します。
納付特例と追納とは
国民年金の納付特例と聞いてまず思い浮かぶのは、「学生納付特例制度」(※1)かもしれません。これは、所得が一定以下の学生が、申請によって国民年金保険料の納付を猶予してもらう制度です。
20歳になれば誰もが国民年金保険料の納付義務を負いますが、まだ収入が安定していない学生には保険料の納付が難しい場合も多いことから、納付の猶予という手段を取ることができます。
また、実は学生だけに限らず、所得と年齢の基準を満たす人について、同じく保険料の納付を猶予してもらう制度もあります(※2)。
この制度は、平成28年6月までは30歳未満の人が対象となっていたことから「若年者納付猶予制度」と呼ばれることもありますが、平成28年7月以降は50歳未満がこの納付猶予制度の対象となっています。
上記の2つの制度いずれについても、申請をせずにただ保険料が未納となっているだけでは、将来受け取る年金の額が減ってしまいます。学生や50歳未満で保険料の支払いが経済的に厳しい方は、欠かさずにこれら制度の申請を活用し、保険料の納付を猶予してもらうことを推奨します。
そして、追納とは、猶予してもらっていた期間の保険料を、後から、つまり就職等により経済的に落ち着いてから支払うことです。追納する場合、10年まではさかのぼって納めることが可能です。
筆者自身も、学生時代、そして卒業後司法試験に合格するまでの勉強期間、これら納付猶予制度を使わせてもらいました。そして、今では猶予していた期間の保険料はすべて追納を済ませています。
おトクな控除 ~自営業者の場合は確定申告が必要~
国民年金保険料は、納めた分が全額社会保険料控除の対象となります。そして、追納する保険料も社会保険料控除の対象となり、その結果、所得税・住民税が軽減されます(※3)。
ただし、保険料を追納しても、自動的に社会保険料控除が受けられるわけではありません。自営業者の場合、確定申告をしてはじめてこの控除が受けられます。筆者も弁護士になってから、かつて猶予を受けていた分の国民年金保険料を追納し、追納した分は確定申告をして、社会保険料控除を受けていました。
会社員の場合は原則的には年末調整、場合によっては確定申告が必要
会社員の方の場合は、追納をしたからといって必ずしも確定申告をする必要はありません。年末調整によって、勤務先を通じて社会保険料控除の適用を受けることができるからです。この場合、所得税や住民税の軽減効果が得られることは、自営業者の場合と異なりません。
もっとも、追納の時期が年末に差し掛かった場合等、年末調整に間に合わないということもあり得るかと思われます。こうした場合は、翌年2月中旬から3月中旬の時期にかけて、確定申告が必要です。年末調整を忘れてしまった場合等も同様です。
将来の年金額への反映に加えて、節税のメリットも
筆者の相談者さまのなかには、「年金なんて将来どうなるかわからないから、納めても仕方がない」という意見をおっしゃる方がいます。国民年金保険料の納付は法で定められた義務ですから、保険料を納めないことは法的に正しい行為ではないことに加えて、資産運用の点から見ても、これは正しいことではありません。
まず、保険料を納める年齢層の人口がどんなに先細りしたとしても、その数がゼロにならない限り、年金の資源が枯渇してゼロになることはありえません(年金が減額されることはあったとしても)。
加えて、年金といえば「年を取ったら受給されるもの」というイメージが持たれているかもしれませんが、一定の年齢になったら受給となる老齢年金に加えて、年金には障害年金・遺族年金という側面があり、こうした働きがあること自体、意外に世の中で知られていないように感じます。
それらも含めた制度設計として見ると、こんなにも充実した保険商品は、とても民間では作ることはできないでしょう。実はとても恵まれた制度ですので、国民年金保険料は必ず納めて、その恩恵にあずかったほうがよいといえます。
ただし、筆者自身の経験も踏まえて言えば、学生の時に保険料を納めるよりも、社会に出てから追納をしたほうが、社会保険料控除を受けることができて、自身にとっておトクとなったことは間違いありません(学生時代に納めるとしたら、その分について自身の親が社会保険料控除を受けることはできるかと思います)。
国民年金保険料は、猶予を受けた期間の翌年から起算して3年度目以降に追納する場合加算額が生じますが、その加算額を踏まえてもなお、追納による節税効果は大きかったと筆者は感じます。
前述のとおり追納は10年まではさかのぼってできますので、人によっては所得が大きくなる年のタイミングで確定申告あるいは年末調整をすることで、節税メリットも得られるのではないでしょうか。
出典
(※1)日本年金機構 国民年金保険料の学生納付特例制度
(※2)日本年金機構 国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度
(※3)日本年金機構 国民年金保険料の追納制度
執筆者:佐々木達憲
京都市役所前法律事務所弁護士
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