60歳から年金を受給すると受取額が減るから損っていうけど、そんなに減るものなの?
ファイナンシャルフィールド / 2023年3月7日 4時0分
「年金の繰上げ受給は損」と聞いたことがある人は多いでしょう。しかし、具体的には年金額にどれくらい影響があるのか、ピンとこない人がほとんどではないでしょうか。 年金を繰上げ受給すると、最大で年金の4分の1に近い金額が減額されることになります。本記事では、繰上げ受給の概要や繰上げ受給による減額率の計算方法と年金額の計算例、ほかの年金への影響を解説します。繰上げ受給による年金額への影響を、具体的にイメージしてみてください。
60歳から老齢年金が受給できる「繰上げ受給」とは
老齢年金の繰上げ受給とは、老齢年金を本来受け取れる年齢よりも早く受給できる制度です。具体的には、原則65歳で支給が始まる老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)を、60歳以降65歳になるまでの期間の任意のタイミングで請求できます。
ただし、繰上げ受給を選択すると、受給を開始したタイミングに応じて一定率が本来の年金額から減額されます。1度決まった減額率は、その人が亡くなるまで変わりません。
繰上げ受給による減額率の計算方法と受給額の例
繰上げ受給による老齢年金の減額率は、原則として次の式で計算します。
減額率=0.4%×繰上げ請求をした月から65歳の誕生日前日の前の月までの月数
繰上げ請求をした月から65歳の誕生日前日の前の月までの月数は、64歳11ヶ月から60歳0ヶ月までの最大60月なので、減額率の上限は0.4%×60月=24%となります。
繰上げ受給を選択すると年金額がどれくらい減るのか、以下で計算例を見てみましょう。
受給額の計算例1:本来の年金額6万5000円の場合
老齢年金が基礎年金のみで、金額が満額の場合、令和4年度の受給額(月額)は6万4816円です。6万5000円として繰上げ受給を選択すると、受給開始のタイミングごとに、減額率と年金額は図表1のように変化します。
図表1
受給開始年齢 | 減額率 | 年金額 |
---|---|---|
65歳0ヶ月 | 0% | 6万5000円 |
64歳0ヶ月 | 4.8% | 6万1880円 |
63歳0ヶ月 | 9.6% | 5万8760円 |
62歳0ヶ月 | 14.4% | 5万5640円 |
61歳0ヶ月 | 19.2% | 5万2520円 |
60歳0ヶ月 | 24.0% | 4万9400円 |
出典:日本年金機構「年金の繰上げ受給」より筆者作成
このケースでは、受給開始時期が1年繰上がるごとに、年金額が3000円強減る計算です。60歳0ヶ月まで繰下げると本来の年金額よりも月額1万5600円少なくなり、年間では18万7200円の減額となります。
受給額の計算例2:本来の年金額15万円の場合
厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金保険(第1号) 受給者平均年金月額は14万5665円です。年金額が、老齢厚生年金(老齢基礎年金を含む)が月額15万円とした場合、繰上げ受給時の年金額は図表2のように変化します。
図表2
受給開始年齢 | 減額率 | 年金額 |
---|---|---|
65歳0ヶ月 | 0% | 15万円 |
64歳0ヶ月 | 4.8% | 14万2800円 |
63歳0ヶ月 | 9.6% | 13万5600円 |
62歳0ヶ月 | 14.4% | 12万8400円 |
61歳0ヶ月 | 19.2% | 12万1200円 |
60歳0ヶ月 | 24.0% | 11万4000円 |
出典:日本年金機構「年金の繰上げ受給」より筆者作成
このケースでは、受給開始時期が1年繰上がるごとに、年金額が7000円あまり減っていきます。60歳0ヶ月まで繰下げた場合は本来の年金額よりも月額3万6000円少なくなり、年間では43万2000円の減額です。
受給額の計算例3:本来の年金額20万円の場合
年金額が平均よりも多い20万円の場合、繰上げ受給を選択したときの年金額は図表3のとおりです。
図表3
受給開始年齢 | 減額率 | 年金額 |
---|---|---|
65歳0ヶ月 | 0% | 20万円 |
64歳0ヶ月 | 4.8% | 19万400円 |
63歳0ヶ月 | 9.6% | 18万800円 |
62歳0ヶ月 | 14.4% | 17万1200円 |
61歳0ヶ月 | 19.2% | 16万1600円 |
60歳0ヶ月 | 24.0% | 15万2000円 |
出典:日本年金機構「年金の繰上げ受給」より筆者作成
この場合は、受給開始時期が1年繰上がるごとに、年金額が9600円減額となります。60歳0ヶ月まで繰下げた際の年金額は本来よりも月額4万8000円少なくなり、年間では57万6000円の減額です。
繰上げ受給を選択すると障害年金や遺族年金にも影響する
老齢年金の繰上げ受給を選択すると、65歳になるまでは遺族厚生年金や遺族共済年金などと併給できず、老齢年金と遺族年金のいずれかを選択する必要があります。また、寡婦年金の支給が停止すること、障害年金の請求ができなくなることにも注意が必要です。
遺族年金や寡婦年金を受給中の人、病気の治療中や持病がある人は、繰上げ受給の選択により減額率以上の影響を受ける可能性があることを覚えておきましょう。
繰上げ受給はよく考えて選択しよう
老齢年金の繰上げ受給は、年金を早く受け取れる代わりに金額が減る制度です。60歳から65歳になるまでの生活費に不安がある人や、健康面の不安があり早めに年金を受け取りたい人にとっては、メリットが大きいでしょう。
しかし、繰上げ受給による減額は年額数十万円になる場合もあり、決して小さくありません。当面は貯蓄や働いて得る報酬などで十分生活できる人にとっては、損をする可能性が高い制度だといえます。繰上げ受給を検討する際は、自分にとって利点があるかどうかをよく考えることが大切です。
出典
日本年金機構 年金の繰上げ受給
日本年金機構 令和4年4月分からの年金額等について
厚生労働省 令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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