少子高齢化では年金を払っても「損」!? 何年受け取れば「元がとれる」のか解説
ファイナンシャルフィールド / 2023年3月14日 23時20分
日本の公的年金には国民年金と厚生年金があり、どちらも現役世代が保険料を支払い、リタイア世代に年金が支払われる仕組みです。 しかし、少子高齢化が続き、将来受給できる年金が減ってしまうのではないか、受給できる年金額よりも支払う保険料の方が高くなり損をしてしまうのではないかと不安に思う人もいるかもしれません。 それを考慮しても年金制度はお得な制度なのでしょうか。本記事では、年金は何年受給すると元がとれるのかについて解説します。
日本の公的年金制度
日本の公的年金制度は2階建てになっており、1階部分が国民年金、2階部分が厚生年金となっています。国民年金は日本に住む20歳から60歳のすべての人に加入義務があり、主に自営業や学生、無職の人が加入します。保険料は一律で、65歳から老齢基礎年金を受給することができます。
厚生年金保険は主に会社員が加入します。保険料は収入によって異なりますが、労使折半で会社が半分支払ってくれます。厚生年金保険に加入している人は、国民年金にも加入しているので、65歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を受給することができます。
今回は2022年度のデータをもとに、国民年金と厚生年金保険でどのくらいの期間年金を受給したら元が取れるのかを計算します。
国民年金の損益分岐点は75歳
国民年金保険料は1ヶ月あたり約1万6600円(令和4年度)ですので、20歳から60歳までの40年間で支払う保険料の総額は約796万8000円になります。一方で、40年間保険料をおさめると65歳から老齢基礎年金として1ヶ月あたり約6万5000円、1年間で約77万7800円受給できます。
では、65歳から年金をもらう場合、何年で元がとれるでしょうか。
796万3200円÷77万7800円=10.24年
※インフレ率等で国民年金保険料、受給できる老齢基礎年金額は毎年変動しますが、一定と仮定し算出
65歳から受給する場合、約10年(75歳)で元が取れる計算になります。
2021年における平均寿命は男性81.47歳、女性87.57歳なので、平均寿命から見ても多くの人が元を取れることがわかります。20年(85歳まで)受給すると、支払った保険料総額の約2倍の年金を受給できる計算です。平均寿命からみると女性の場合は多くの人が該当するのではないでしょうか。
厚生年金の損益分岐点は74歳
厚生年金保険に加入していると、65歳から老齢厚生年金を受給できますが、どのくらいの年収でどのくらいの期間加入していたのかで受給額が異なります。また、平成15年3月以前に加入している場合と4月以降に加入している場合で計算式が少し異なりますが、今回は平成15年4月以降に年収400万円(標準報酬月額34万円)で40年間加入した場合で計算します。
厚生年金保険料は1ヶ月あたり約3万1100円、40年間で支払う保険料の総額は約1492万8000円になります。一方、65歳から受給できる年金額の年額は次のようになります。
・老齢基礎年金:約77万7800円
・老齢厚生年金:約89万4500円
老齢基礎年金と老齢厚生年金を合計すると年間で約167万2300円受給できます。
65歳から受給する場合、何年で元が取れるでしょうか。
1492万8000円÷167万2300円=8.93年
約9年(74歳)で元が取れることになり、83歳まで受給すると支払った保険料総額の2倍の年金を受給できる計算になります。現時点では、多くの人が支払った保険料総額の2倍の年金を受給できているのではないでしょうか。
まとめ
本記事では、日本の公的年金制度と、年金を何年受給すれば元が取れるのかについて解説しました。若い世代の人にとっては、将来の年金制度がどうなっているのかよくわからず、現在の年金の利回りを計算しても当てにならないと思うかもしれません。
しかし、たとえ受給できる年金額が現在の半分になったとしても、多くの人が支払った保険料総額分程度は年金を受給できる計算です。また、年金制度には障害等で働けなくなってしまった場合の障害年金、死亡した場合の遺族のための遺族年金という保険機能も備わっています。
公的年金に対して漠然とした不安を持っている人も多いかもしれませんが、仕組みを理解しきちんと計算してみると、とても手厚くありがたい制度ではないでしょうか。
出典
日本年金機構 国民年金の保険料はいくらですか。
日本年金機構 令和4年4月分からの年金額等について
厚生労働省 令和3年簡易生命表の概況
日本年金機構 保険料額表(令和2年9月分~)(厚生年金保険と協会けんぽ管掌の健康保険)
日本年金機構 老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額
執筆者:齋藤彩
AFP
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