60歳で子どもは独立、夫に先立たれたら妻は「遺族年金」をもらえますか?
ファイナンシャルフィールド / 2023年3月16日 1時20分
年金にはさまざまな種類がありますが、最も一般的な老齢基礎年金や老齢厚生年金は原則として65歳から支給されます。ただし、遺族年金を受け取るには要件があり、遺族が受け取れないケースもあります。本記事では、遺族年金に関して説明していきます。万が一のための参考にしてください。
遺族年金とは
年金は原則として、国民年金や厚生年金の被保険者が受け取るものです。しかし、被保険者が世帯主としてその世帯の生活を支えていた場合、万が一亡くなると遺族は生活に困窮することになります。
そうした事態を避けるために「遺族年金」の制度があり、要件を満たせば遺族に対して一定額の年金が支給されるのです。まずは、遺族年金の仕組みから解説しましょう。
遺族年金の仕組み
遺族年金には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があります。65歳から受給する老齢基礎年金と老齢厚生年金と同じ関係で、前者は国民年金、後者は厚生年金の被保険者が対象です。
つまり、遺族厚生年金は厚生年金に加入していない個人事業主の方は対象になりません。また、受給する遺族にも要件があるため、亡くなった方が要件を満たしているだけでは支給されない場合があるので注意しましょう。
遺族基礎年金の受給要件と対象者
国民年金の被保険者が亡くなった場合に、遺族が受け取れるのが「遺族基礎年金」です。対象となる被保険者の要件と受給対象者は図表1のとおりです。
【図表1】
対象者 | 受給要件 |
---|---|
被保険者 | ◆下記のいずれかの条件を満たしている ・国民年金の被保険者である間に死亡した ※1 上記の2つは加入期間の3分の2以上の納付期間があること、あるいは令和8年3月末日までに65歳未満で死亡した場合、直近1年以内の未納がないことが条件 ・老齢基礎年金の受給権者であった人が死亡した ※2 上記の2つは保険料納付済期間、保険料免除期間と合算対象期間の合算期間が25年以上あることが条件 |
遺族 | ◆死亡した被保険者と生計を共にしていた以下の遺族 ・子のある配偶者 ※3 子とは18歳になった年度の3月31日まで、あるいは20歳未満で障害年金の障害等級1級・2級の状態にある子ども ※4 子のある配偶者が受給している間や、子に生計を同じくする父母がいる間は、子は受給できない |
日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」より筆者作成
遺族厚生年金の受給要件と対象者
【図表2】
対象者 | 受給要件 |
---|---|
被保険者 | ◆下記のいずれかの条件を満たしている ・厚生年金保険の被保険者である間に死亡した ※1 上記2つは加入期間の3分の2以上の納付期間があること、あるいは令和8年3月末日までに65歳未満で死亡した場合、直近1年以内の未納がないことが条件 ・1級・2級の障害厚生(共済)年金を受け取っている方が死亡した ・老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡した ※2 上記の2つは保険料納付済期間、保険料免除期間と合算対象期間の合算期間が25年以上あることが条件 |
遺族 | ◆死亡した被保険者と生計を共にしていた以下の遺族のうち、最も優先順位の高い人が受け取れる(以下優先順位の高い順) 1. 妻 ※1 ※1 子のない30歳未満の妻は5年間のみの受給 |
日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」より筆者作成
60歳で夫に先立たれたときに妻がもらえる遺族年金
以下の条件で、遺族年金がどれくらいもらえるのかを計算してみます。
●60歳で夫に先立たれる
●子どもは3人とも18歳未満
●妻がもらえる遺族年金を算出
●国民年金、厚生年金ともに被保険者の条件は満たしている
遺族基礎年金の計算方法
子どもがいない妻は受給資格がなく、遺族基礎年金は受け取ることはできません。なお、子どもがいる場合は、以下の計算式で遺族年金が算出されます(令和4年4月分から)。
77万7800円+子の加算額
77万7800円+2人目以降の子の加算額
●1人目および2人目の子の加算額 各22万3800円
●3人目以降の子の加算額 各7万4600円
遺族厚生年金の計算方法
遺族基礎年金は子どもがいない場合は配偶者にも受給資格はありませんが、遺族厚生年金は子どもがいなくても配偶者は受給できます。遺族厚生年金は、以下の計算式で算出されます。
◆子どもがいない妻がもらえる遺族厚生年金の金額
もらえる遺族年金の金額は報酬比例部分の4分の3となるので、平均報酬月額によって支給される金額が違います。
また、妻の年齢(配偶者死亡時40歳以上65歳未満の場合)によって中高齢寡婦加算額(年58万3400円)が加わります。なお、30歳未満の場合の給付期間は5年に制限されるので注意しましょう。
平均報酬月額35万円の場合、中高齢寡婦加算額を加えた金額は年約138万円(月額約11万8000円)です。
なお、計算上の設定は以下のとおりです。
●妻の年齢は夫の死亡時、40歳以上65歳未満
●夫の平均報酬月額は35万円
●厚生年金の加入期間は平成15年3月以前240ヶ月、同4月以降も240ヶ月とする
遺族厚生年金の計算式は以下のとおりで、AとBの合計の4分の3に中高齢寡婦加算額を加えます。
A:平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月までの加入期間の月数
35万円×7.125/1000×240ヶ月=59万8500円
B:平均標準報酬額×5.481/1000×平成15年4月以降の加入期間の月数
35万円×5.481/1000×240ヶ月=46万404円
(59万8500円+46万404円)×3/4+58万3400円=137万7578円(月11万7981円)
夫に先立たれた妻が遺族年金をもらうためには要件を満たす必要がある
遺族年金には、老齢年金と同じように基礎年金と厚生年金があります。遺族基礎年金は被保険者を夫、遺族が妻で、年度の3月31日まで18歳の子どもがいない場合は受け取ることができません。
一方で遺族厚生年金の場合、妻は子どもがいなくても受給は可能です。ただし、年齢によって金額が加算される、あるいは支給期間が制限されることがあります。
自営業者やフリーランスなどで国民年金のみの加入の場合、遺族年金は支給されないことがあるので、生命保険などでカバーできるようにしておきましょう。
出典
日本年金機構 遺族年金
日本年金機構 は行 報酬比例部分
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
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