小規模企業の経営者や役員、個人事業主の退職金準備方法。「小規模企業共済」って何?
ファイナンシャルフィールド / 2023年3月19日 0時40分
![小規模企業の経営者や役員、個人事業主の退職金準備方法。「小規模企業共済」って何?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_192785_0-small.jpg)
個人事業主の退職金準備方法として、付加年金、国民年金基金、iDeCo(個人型確定拠出年金)などがありますが、小規模企業共済にはほかにないメリットが多くあります。 この記事では、小規模企業共済のメリットについてポイントを解説します。
「小規模企業共済」とは
国の機関である独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営する制度が、小規模企業共済です。常時使用する従業員の数が20人以下(商業・サービス業は5人以下)の個人事業主(配偶者などの共同経営者も含む)、および企業の経営者や役員が、廃業、退職した場合に備えて、お金を積み立てる制度です。
また、貸付制度を利用でき、解約の場合は解約手当金ももらえます。
現在、全国で約159万人の方が加入されています(中小機構ホームページより)。掛け金は全額を所得控除でき、高い節税効果があることから活用されています。
掛け金納付月数が、240ヶ月(20年)未満で任意解約をした場合は、掛け金合計額を下回りますので注意しましょう。加入期間が240ヶ月以上でも、途中で掛け金を増額や減額した場合で、掛け金区分ごとの掛け金納付月数が240ヶ月を下回ったときは、任意で解約をしたときに受け取れる解約手当金が、掛け金の合計額を下回ることがあります。
共済契約者が死亡したことにより支給される、共済金の請求が可能な者の範囲と順位は、「小規模企業共済法」により受給権の順位が定められていますので、確認しておきましょう。
掛け金は全額が所得控除
月々の掛け金は1000~7万円まで、500円単位で自由に設定が可能です。加入後も増額・減額ができます。掛け金は全額所得から控除できるため、高い節税効果があります。
掛け金の納付方法は、月払い、半年払い、年払いから選択できます。また、前納でき、一定割合の前納減額金を受け取ることができます。
共済金等の取り扱い
<共済金について>
共済金は、退職・廃業時に受け取れます。共済金の受け取り方法には、以下の種類があります。
●一括
●分割
●一括と分割の併用
分割受け取りは330万円以上あることが条件で、10年または15年かけて年金で受け取ります。
死亡時以外、一括受け取りの場合は退職所得扱いに、分割受け取りの場合は、公的年金等の雑所得扱いとなり、税制メリットもあります。死亡時、遺族が共済金を受け取る場合は、はみなし相続財産となります。
準共済金(個人事業を法人成りした結果、加入資格がなくなったため、解約をした場合)は、退職所得扱いとなります。
<解約手当について>
65歳以上で任意解約する場合(経営者が独立開業、のれんわけをする場合も含む)、解約手当金は退職所得扱いとなります。
65歳未満で任意解約する場合(経営者が独立開業、のれんわけをする場合も含む)、および任意解約以外は、一時所得扱いとなります。
中途解約できるのはiDeCo(個人型確定拠出年金)にないメリットです。
退職所得・雑所得・一時所得
退職所得は、原則として他の所得と分離して所得税額を計算します。
退職所得の金額は、原則として、次のように計算します。
{収入金額(源泉徴収される前の金額) - 退職所得控除額} × 1/2 = 退職所得の金額
退職所得控除額は、勤続年数(A)が20年以下の場合、「40万円 × A」(80万円に満たない場合には、80万円)、20年超の場合は「800万円 + 70万円 × (A – 20年)」です。
このように退職所得には、(1)大きな退職所得控除額、(2)分離課税、(3)2分の1課税のメリットがあります。
公的年金等は、年金の収入金額から公的年金等控除額を差し引いて所得金額を計算します。
公的年金等控除額は年収・年齢により異なります。詳しくは国税庁のホームページでご確認ください。
一時所得の金額は、次のように算式します。
一時所得の金額=総収入金額 – 収入を得るために支出した金額 – 特別控除額(最高50万円)
そして、この所得金額の2分の1に相当する金額を、給与所得などの他の所得の金額と合計して総所得金額を求めた後、納める税額を計算します。
小規模企業共済においては、掛け金が所得控除として優遇を受けていることから、掛け金累計は収入を得るために支出した金額として差し引くことができないとされていますので、注意しましょう。
低金利の貸付制度を利用できる
契約者の方は、掛け金の範囲内で事業資金の貸付制度を利用できます。低金利で、即日借り入れも可能です。
一般貸し付けは利率1.5%、 緊急経営安定貸付・ 傷病災害時貸付・福祉対応貸付・創業転業時・新規事業展開等貸付・事業承継貸付・廃業準備貸付は利率0.9%で借り入れできます(2023年3月現在)。
まとめ
小規模企業共済のメリットは、掛金拠出・受取時に税優遇がありますので、高い節税効果を得られる点です。また、低利での貸付制度の利用や、中途解約ができ解約手当金をもらえることも大きな魅力です。
出典
独立行政法人中小企業基盤整備機構 小規模企業共済
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.1600 公的年金等の課税関係
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.1490 一時所得
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。
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