祖父母の土地に息子が「無断で」家を建てたら、固定資産税は誰が払うの?
ファイナンシャルフィールド / 2023年3月19日 11時0分
親族の土地を借り受けて家を建てるというのは特段珍しい話ではありません。しかし、それが無断で行われていたとしたら、どうなってしまうのでしょう。 この場合、固定資産税は誰が支払うことになるのでしょうか。あなたの父母の土地にあなたの子が、つまり祖父母の土地に孫が無断で家を建てた場合を例に、解説していきます。
親族名義の土地に家を建てることはできるのか
祖父母など近しい親族だからといって、他人名義の土地に無断で家を建ててはいけません。それは不動産の所有者の権利を侵害する行為に当たります。
所有者たる祖父母から損害賠償や土地の明け渡しを請求される可能性があり、無断使用の場合は正当な権限を有しないため、それらの請求に対抗することができません。なお、他人所有の土地に無断で不動産を建てることは、本来であれば不動産侵奪罪に該当する犯罪行為です。
しかし、不動産侵奪罪は直系血族(配偶者・同居の親族)間で起こった場合には「親族間の犯罪に関する特例」が適用され、刑が免除されることとなっています。祖父母と孫は直系血族に該当するため、刑事事件になって刑罰を科されることはありません。
とはいえ、民事上の不法行為に該当する行為であることに変わりはありません。たとえ近しい親族であり、かつ、いずれ自分が相続するであろう土地であっても、絶対に無断で建物を建ててはいけません。
固定資産税は誰が払うの?
さて、無断で家を建てられてしまった場合、土地の固定資産税は誰が支払うことになるのでしょうか。この点は固定資産税の性質を考えると、すぐに答えが導き出せます。
固定資産税は土地などの固定資産の所有者に対して課される税金であり、使用者に課されるものではありません。そのため、無断で建物を建てられてしまった場合でも、土地の固定資産税を支払うのは所有者となります。
つまり、無断で建物を建てられてしまった被害者たる祖父母が固定資産税を支払うことになります。
なお、土地が適法で賃貸借されていても、固定資産税を支払うのは所有者となります。そのため、親族間においては無償で土地を賃貸借する代わりに、固定資産税を借り主が支払うとする取り決めがなされることもあります。
一方で、固定資産税は建物自体にも発生します。この場合、建物の固定資産税については家を建てた孫本人が支払います。無断で建てたとはいえ、所有していることに変わりはないからです。
相続が発生した場合には固定資産税はどうなる?
では、祖父母の土地に孫が無断で建物を建てた後、あなたがその土地を相続したとしたら、固定資産税を支払うのは誰になるのでしょうか。
この場合、固定資産税を支払うのは土地を相続したあなた自身になります。前述のとおり固定資産税は所有者が支払うものであるからです。このとき、無断で自分の土地に建物を有していることを理由に、自身の子に対して損害賠償や明け渡しの請求を行うことは当然可能です。
しかし、祖父母が生前に建物の存在を容認していた場合は例外です。相続では財産と一緒にそれに係る権利や義務関係も承継します。当初無断で建てたとしても、その後承認を得られていた場合、孫は土地を使用する正当な権利を有しており、祖父母は使用を認める義務を負っています。
となると、祖父母の権利関係を土地とともに引き継いだあなたは、当初使用を認めていなかったとしても、法律上は土地の固定資産税を支払った上で、子による土地の使用を認めなければならない可能性があります。
無断使用されていても固定資産税を負担するのは所有者
固定資産税は所有者に課される税金です。無断使用されていたとしても、土地の固定資産税を負担するのはその土地の所有者です。一方で、土地を無断使用して建てたとしても、建物の固定資産税を負担するのはその建物の所有者となります。
土地の無断使用は権利関係を複雑にし、争いが生じる原因になります。土地の無断使用は、親子や祖父母と孫など近しい親族間でも絶対に行わないようにしてください。
執筆者:柘植輝
行政書士
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