大名は「年収10億円」以上!? 江戸時代の武士の給与って? 働き方は現代の職業と比べてホワイト?
ファイナンシャルフィールド / 2023年3月25日 10時20分
多くの時代劇やドラマで描かれる武士の生活とは、大きな屋敷に大勢の家臣を抱え、生活の不安なく暮らしていたようにみえます。しかし実際には同じ武士でも身分の差によって大きな差がありました。 本記事では、日本の昔のサラリーマンである武士をテーマに、現代の価値でいうとどれくらいの給料をもらっていたのか、現代の職業と比較して割に合う仕事だったのかどうだったのかを検証します。 昔の日本の姿に思いをはせながら、当時の暮らしぶりを想像してみてください。
江戸時代の武士の給料はどのように決められていた?
江戸時代の武士は、家単位で家臣として召し抱えられており、家格という身分の序列に準じた役職が決められていました。この時代の武士の給料は俸禄(ほうろく)と呼ばれ、お金ではなく米での支給が基本となっていました。
家禄(かろく)が与えられる家には米を生産できる領地の統治権が、土地の値打ちを玄米の生産量で表す石高をもとに支給されます。対して、土地を持たない武士や個人に俸禄が与えられる場合は、現物の米が支給されていました。
このように武士の給料は米でやり取りされていたため、米以外の物を手に入れるためには米を換金する必要がありました。米1石(約150キログラム)は、およそ金1両の価値で取引されていました。金1両を米の値段を基準に比較した場合、江戸時代初期においては現代の約10万円前後の価値になります。
武士の給料は現代の金額でいえばいくら?
さて、武士は家格という身分によって俸禄の量が決められていると前述しましたが、身分によってどれくらいの収入差があったのでしょうか。
まずは大名と呼ばれる1万石以上を得られていた武士の給料は、1万石=1万両=約10億円以上の価値があったと考えられ、大きな権力をもっていたことがうかがえます。
一方で武士全体の平均年収は、現代の価値に直すと約500万円ほどだったといわれています。江戸時代は1両(約10万円)があればなんとか1ヶ月暮らせたといわれているため、生活に余裕がある様が想像できます。
しかし、下級武士となると話が別です。江戸時代には薄給の武士をさげすむ「さんぴん侍」という言葉がありました。これは俸禄が3両1扶持(ふち)米だったことに由来します。1扶持米とは、1人の人間を養えるくらいの米を支給するという意味で、下級武士には1年間でおおよそ1石分の米が与えられていました。
つまり最下層の武士の年収は、3両1扶持米=4両=約40万円だった計算になり、暮らしはとても成り立たない額だったと推測できます。
武士の働き方は現代の職業と比べてキツい?
以上から、江戸時代はひとくくりに武士といっても身分によって生活レベルにかなり大きな差があったと推測できます。では薄給だった下級武士たちはどのような内容の仕事をしていたのでしょうか。
実は江戸時代の武士は労働日数が少なく、警備を担う下級武士の仕事では1日働いたら2日休む、もしくは2日働いたら1日休むなどの勤務スタイルで「朝番・夕番・不寝番」の3交代で働いていました。役職によっては月に数回しか勤務しない場合や、1日の勤務時間がもっと短い場合もあり、余暇時間がかなり多かったといいます。
例えば、城の警備役を勤める武士が年収40万円のさんぴん侍で、月に10日間、1日当たり日中8時間労働を行っていたとすると、時給は約417円と計算できます。求人検索エンジンIndeedによると、日本の警備員の平均時給は892円(2023年3月)ですので、武士の労働時間がどんなに短かったとはいえ、割に合わない仕事だったのかもしれません。
さらに江戸時代は、個人ではなく家に対して身分や仕事が決められていた時代です。どんなに生活苦から抜け出したいと望んでも、叶えることが難しい状況だったと推察できます。そのため生活が立ち行かない武士たちは、余暇時間を使って内職をすることが常でした。現代のパラレルワークの先駆けともいえます。
現代に通じる下級武士の働き方
武士の年収は平均では500万円ほどありましたが、「さんぴん侍」と呼ばれる下級武士は、年収40万円程度しかないため、内職などで稼がないと生活が立ち行かなかったであろうことが分かります。
歴史に触れる際は、当時を生きた人々の日々の暮らしに目を向けてみると、現代に通じる教訓を学べるかもしれません。
出典
日本銀行金融研究所貨幣博物館 お金の歴史に関するFAQ(回答)
求人検索エンジンIndeed 日本での警備員の平均給与
執筆者:橋本華加
2級ファイナンシャルプランニング技能士
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