2023年度の年金額はなぜ上がる? そしてなぜ2種類?
ファイナンシャルフィールド / 2023年3月25日 3時30分
2023年度の年金額は、2022年度の年金額より上がります。しかも、2022年度以前と違い、2023年度は異なる2種類の年金額があります。 本記事では、2023年度の年金額や年金額改定のルールについて取り上げます。
67歳以下と68歳以上で異なる年金額
2023年度に上がる年金額について、まず、毎年度67歳以下である人は「新規裁定者」、68歳以上になる人は「既裁定者」とされ、2023年度は2022年度までと違い、新規裁定者と既裁定者それぞれで年金額が異なります。
「裁定者」という言葉が出ていますが、実際に年金の請求をして裁定を受けているかどうかではなく、年齢でもって区切っていることになります。
つまり、これから年金の手続きをする人(請求し裁定を受ける人)でも2023年度に68歳以上になる人は、新規裁定者の額ではなく既裁定者の額となります。
基準は物価か、賃金かで異なる
なぜ、2023年度の新規裁定者と既裁定者の額が異なるかについては、年金額改定のルールによるためです。
毎年の年金額は経済の統計数値に基づいて改定されることになり、本来、新規裁定者は「名目手取り賃金変動率」を基準に改定され、既裁定者は「物価変動率」を基準に改定されることになっています。ただし、物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回る場合は新規裁定者も既裁定者も名目手取り賃金変動率を基準に改定されます(図表1の(4)(5)(6))。
【図表1】
2022年度までは物価が賃金より高かったため、当該年度で67歳以下(新規裁定者)も68歳以上(既裁定者)も同じ基準で改定されていました。
しかし、2023年度の改定において、名目手取り賃金変動率は+2.8%、物価変動率は+2.5%(いずれもプラス)となって、賃金が物価を上回ったため、新規裁定者と既裁定者で基準が異なります(図表1(1))。新規裁定者、既裁定者で異なる基準で改定がされることになり、そのため年金額は2種類です。
マクロ経済スライドによる調整もある
ただし、実際の年金額について、新規裁定者は前年度より+2.8%、既裁定者は前年度より+2.5%、そのまま増えるわけではありません。年金額の改定にあたっては、マクロ経済スライドによる調整があります。2023年度の調整率として-0.3%分あり、その分、上昇が抑制されます。
また、賃金や物価の基準からすでにマイナス改定となる場合は、マクロ経済スライドの調整率によるさらなるマイナス改定は行いませんが、その未調整となっていたマクロ経済スライド調整率が翌年度以降に調整されるルール(※2018年度より)があり、2021年度と2022年度で調整できなかった調整率は合計-0.3%分あります。この未調整分は2023年度に調整されることになりました。
したがって、新規裁定者も既裁定者も-0.3%(2023年度のマクロ経済スライド調整率)と-0.3%(2021年度・2022年度未調整分)が調整され、実際は、2022年度と比べ、新規裁定者は+2.2%、既裁定者は+1.9%となります。
2023年度の実際の年金額
2022年度の老齢基礎年金の満額は、法定額78万900円に2022年度の改定率0.996を掛けて算出した77万7800円(100円未満四捨五入)が満額の老齢基礎年金でした。2023年度は2022年度改定率0.996に1.022(新規裁定者)あるいは1.019(既裁定者)を掛けた率が改定率となり、法定額に掛ける2023年度の改定率について新規裁定者は1.018、既裁定者は1.015です。
そして、実際の年金額は、新規裁定者が78万900円×1.018で79万5000円(100円未満四捨五入)、既裁定者が78万900円×1.015で79万2600円(100円未満四捨五入)です(図表2)。2022年度の額から見て、2.2%あるいは1.9%増えていることになります。
【図表2】
2種類の年金額があるため複雑になりましたが、このような仕組みで年金額の改定が行われます。
なお、加給年金、子の加算など新規裁定者の改定率・額のみを使う年金もあります。年金はこれ以外にも種類があり、その計算も細かくなりますが、2023年度の年金は2023年6月15日振り込み分(2023年4月分・5月分の年金)からとなります。
すでに受給している人は、6月初旬に届く「年金額改定通知書」で新しい年金額について確認してみましょう。
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
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