年金支給額が「3年ぶり」に引き上げ! でも実質的には減少で「手元に残るお金が減る」って本当?
ファイナンシャルフィールド / 2023年3月28日 23時0分
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年金の支給額は毎年見直されていますが、ここ数年は前年よりも減少が続いていました。しかし、令和5年度の年金支給額は、3年ぶりに引き上げが発表されています。 年金支給額引き上げはうれしいところですが、実質的には減少していると言われています。年金支給額の決まり方や仕組みについて見ていきましょう。
令和5年度の年金支給額は対前年で「プラス2%」程度
令和5年度の年金支給額は、新規裁定者(67歳以下)は対前年で2.2%、既裁定者(68歳以上)は対前年で1.9%引き上げられています。
具体的には、新規裁定者の国民年金支給額(月額)は、前年の6万4816円から、1434円増加し、6万6250円となっています。
なぜ「実質的に減少」なのか
年金支給額は増加しているものの、「実質的に減少」と言われているのは、支給率以上に物価や賃金の上昇率の方が大きいためです。
例えば、支給額が1000円増えても、物価上昇で支出が2000円増えてしまうと、手元に残るお金は減り、「実質的に減少」となります。年金支給額は物価と賃金の変動と、「マクロ経済スライド」によって調整されています。詳しく見ていきましょう。
年金支給額の決まり方
年金支給額は、名目賃金変動率が物価変動率を上回る場合、新規裁定者(67歳以下)は名目賃金変動率を、既裁定者(68歳以上)は物価変動率を用いて決められます。令和5年度の改定においては、昨年の物価の変動率がプラス2.5%、名目賃金の変動率はプラス2.8%でした。
これら物価と賃金の変動率に加え、「マクロ経済スライド」による調整率も年金支給額を決める際に加味されます。「マクロ経済スライド」とは、人口や平均余命の伸びなどの社会情勢に合わせて年金の給付水準を調整する仕組みのことです。
「マクロ経済スライド」により、将来の現役世代の負担が過重とならず、最終的な保険料の水準を定め、その中で保険料などの収入と年金支給などの支出の均衡が保たれています。
なお、「マクロ経済スライド」は物価や賃金の変動率がマイナスの場合は発動されません。今回の改定においては、上記の観点から「マクロ経済スライド」はマイナス0.6%にて調整されています。
令和5年度の年金支給額改定の計算
これまで紹介した項目を元に、どのように令和5年度の年金支給額が決まったのかを見ていきましょう。
まず新規裁定者(67歳以下)です。名目賃金の変動率(プラス2.8%)が物価変動率(プラス2.5%)を上回るため、名目賃金の変動率(プラス2.8%)に「マクロ経済スライド」のマイナス0.6%を考慮し、対前年でプラス2.2%となっています。
一方、既裁定者(68歳以上)では物価変動率(プラス2.5%)が基準となり、「マクロ経済スライド」のマイナス0.6%を加味し、対前年でプラス1.9%とされました。
まとめ
令和5年度の年金支給額は3年ぶりに対前年よりプラスとなりました。
しかし、例えば新規裁定者(67歳以下)は対前年でプラス2.2%、月額で1434円支給額が増えたものの、物価が2.5%高くなっているため、実質的に手元に残るお金は減ったとも言えます。
生活にゆとりが出るかどうか判断する際には、年金支給額のみに一喜一憂せず、物価などを総合的に見る必要があるでしょう。
出典
厚生労働省 令和5年度の年金額改定についてお知らせします
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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