相続した「田舎の土地」を手放したい! 4月27日開始の「国庫への帰属制度」を解説
ファイナンシャルフィールド / 2023年4月5日 11時0分
相続登記が適切に行われず、長年放置されたことによる「所有者不明土地」や「管理不全土地」の増加が社会問題となっています。それを受けて、2024年4月から相続登記の義務化が開始される予定です。 ここでは相続登記の義務化に先立ち、2023年4月27日から施行される「相続土地国庫帰属制度」の概要について確認したいと思います。
土地問題に関する国民の意識調査
国土交通省が実施した2021年度の「土地問題に関する国民の意識調査」の結果によると、現在の居住地(自宅)以外の土地の取得理由としては、「相続により取得した」(68.2%)がトップとなっています。
また、それらの土地の現況(利用状況)について、「誰も居住していない、又は利用していないが、管理は行っている(利用していない)」との回答が全体の32.5%を占めており、土地が未利用となっている理由では「遺産として相続したが、今のところ利用する予定がないため」が57.6%と最も多くなっています。
さらに、取得した土地に対しては「草刈り等の管理作業に負担を感じている、又は感じると思う」(62.7%)、「税金や管理費用の金銭的な負担を感じている、又は感じると思う」(47.5%)など、土地を所有・管理し続けること自体に負担を感じるという回答も多く挙がっています。
このような状態で土地が利用されず、管理も不十分なまま長く放置されることで、将来的な所有者不明土地や管理不全土地の増加が懸念されています。そのため、これらを予防する観点から「相続土地国庫帰属制度」が開始されることになりました。
相続土地国庫帰属制度とは
相続土地国庫帰属制度とは、相続した不要な土地について一定の要件を満たした場合、国に引き取ってもらう制度のことをいいます。
この制度の対象となるのは、相続人が相続または遺贈によって取得した土地であり、贈与や売買など相続以外で取得した土地は対象とはなりません。
また、相続人が単独で所有する土地はもちろん、複数の相続人で共有する場合にも共有者全員での申請により制度の対象とすることができますが、土地の要件として、通常の管理または処分にあたって過分の費用や労力を要する土地は国庫への帰属が不可とされています。
土地については、主に以下のような却下要件と不承認要件があります。
【却下要件】
以下のいずれかに該当する土地は承認申請ができません。
(1)建物が存する土地
(2)担保権、または使用および収益を目的とする権利が設定されている土地
(3)通路などの他人による使用が予定されている土地(墓地、水道用地など)
(4)土壌汚染対策法上の特定有害物質により汚染されている土地
(5)境界が明らかでない土地、所有権の存否、帰属または範囲について争いがある土地
【不承認要件】
承認申請に係る土地が以下のいずれかに該当する場合、法務大臣による承認が受けられません。
(1)崖(勾配30度以上、かつ高さ5メートル以上)がある土地
(2)通常の管理または処分を阻害する有体物が地上に存する土地
(3)通常の管理または処分のため、除去しなければならない有体物が地下に存する土地
(4)隣接する土地の所有者などとの争訟によらなければ、通常の管理または処分ができない土地
上記に基づき、申請後は法務大臣(法務局)による要件審査を実施し、承認された場合は土地が国庫に帰属されることになります。
負担金の納付
土地を国庫に帰属する場合には、土地の性質などに応じた標準的な管理費用から算出した10年分の土地管理費相当額を、負担金として申請者が納付する必要があります。
具体例として、宅地、田畑、森林などの土地の種類に応じて負担金が設定され、例えば、宅地の場合には面積にかかわらず20万円ですが、市街化区域など一部の市街地の宅地については、面積に応じて負担金が算定されることになります。
また、負担金とは別途、申請時の審査にかかる費用から算出した政令で定める審査手数料の納付も必要となります。
まとめ
筆者自身も親が亡くなったときに相続した田舎の土地を、今後どうしたらいいのかと悩んだ時期がありました。何より、土地を管理するにも遠方のため、わざわざ出向くことに大いに負担を感じた経験があります。
相続土地国庫帰属制度は法律の施行後に限らず、施行前に相続などで取得した土地も対象となります。相続した土地の所有を望まない場合の対応策の1つとして、国に土地を帰属できる制度が始まることを覚えておきましょう。
出典
法務省 相続土地国庫帰属制度について
国土交通省 土地問題に関する国民の意識調査
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー
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