「産後パパ育休はボーナス月に取得した方がお得」は本当?
ファイナンシャルフィールド / 2023年4月5日 8時30分
育児休業に関する制度改正の1つとして、男性の育児休業の取得と育児参加を促進するために「産後パパ育休」が新設され、令和4年10月からスタートしています。 以前は、ボーナス支給月に育児休業を取得すれば得になるといわれていましたが、産後パパ育休により、その点についてどういった変化があるのでしょうか。
産後パパ育休が新設
改正育児・介護休業法により、令和4年10月1日から施行された制度に産後パパ育休(出生時育児休業)があります。
労働基準法で定められた女性の産前産後休業のほか、男女ともに育児休業制度がありますが、育児休業を取得するためには原則1ヶ月前までの申し出が必要です。
産後パパ育休は、男性が育児のために柔軟に休業できるように、子どもの出生後8週間以内に4週間を限度として2回に分けて取得可能で、申し出の期限も原則休業の2週間前までとなっています。
また、子どもの出生予定日または出生日から1歳になるまで(保育園に入所できないなどの事情がある場合は最長で2歳まで)の育児休業とは別に取得できるため、出生後は産後パパ育休を利用し、休業期間の消化後は育児休業を取得するということが可能になりました。
育児休業中の収入の公的な保障
育児のために休業が取得できるのは親としてはうれしいことかもしれませんが、その際の収入が大きく減ってしまうようでは、今後の生活も不安になってしまいます。
そこで、産後パパ育休や育児休業を取得した場合は、それぞれの育児休業給付金が支給されます。
令和5年3月現在の支給額は、休業開始前6ヶ月の賃金総額を180で割った休業開始時賃金日額(令和5年7月31日までの上限は1万5190円)に対し、休業した日数と67%(育児休業の場合、開始から181日目以降は50%)をかけた額となっています。
例えば、休業開始前6ヶ月の賃金総額が240万円(月額40万円)の場合、休業1日当たり8933円が支給され、休業日数が1ヶ月(30日の場合)では26万7990円となります。また、育児休業の給付金は非課税となり、さらに条件を満たしていれば社会保険料も免除されます。
月額賃金が40万円の場合、家族構成などによっても若干変わりますが、社会保険料や、所得税・住民税が引かれた手取り額は、おおむね賃金の8割程度となるので約32万円程度と考えられ、1ヶ月(30日の場合)の育児休業の取得によって受けられる給付金により、休業前の手取り額の8割程度の収入が見込めることになります。
社会保険料免除の要件としては、月末に育児休業中であることのほか、令和4年10月からは、同月内で育児休業(産後パパ育休)を取得した日数が14日以上の場合となっています。
賞与に対する社会保険料免除の条件
社会保険料は毎月の給与だけではなく、賞与(ボーナス)からも引かれていますが、賞与は給与に比べて金額が大きくなることが多いので、社会保険料も高額になります。
例えば、令和5年4月納付分からは賞与額が100万円の場合、厚生年金保険料は9万1500円、健康保険料は5万円(東京都の場合)、雇用保険料が6000円と、約15万円の社会保険料の負担となりますが、育児休業期間中であれば、条件を満たすことで社会保険料が免除されます。
令和4年9月以前は、月末に育児休業中であることが社会保険料免除の要件であったため、賞与支給月の末日の1日だけ育児休業を取得するというケースがあったようです。
しかし、制度改正により令和4年10月以降は賞与に対する社会保険料免除の要件として、賞与支給月の末日を含んだ連続して1ヶ月を超える育児休業等を取得した場合に限ることになりました。
ここで産後パパ育休の条件をもう一度確認すると、子どもの出生日以降8週間のうち、4週間までの取得が可能となっています。
産後パパ育休では、賞与の社会保険料免除の要件である連続して1ヶ月を超える休業にはならないので、この要件を満たさないことになります。
出産予定日が賞与の支給月中の場合には、1ヶ月前までの申し出が必要となりますが、産後パパ育休ではなく育児休業を利用することで、賞与にかかる社会保険料の免除の要件を満たすことができます。
そのため、出産予定日が分かったときには賞与支給月であるのかも確認しておくと、産後パパ育休と育児休業のどちらを利用した方がメリットがあるか、判断しやすくなります。
まとめ
今回は、令和4年10月から施行された育児休業に関する制度について確認してみました。
これまでの育児休業のほかに産後パパ育休が加わり、育児休業の取得について選択肢は増えましたが、どういった取得がいいのか、複雑になった面もあるかもしれません。
賞与にかかる社会保険料免除の要件が従来どおりであれば、産後パパ育休の取得後に育児休業を取得すればメリットも多いのでしょうが、賞与支給月と出産が重なったときに少しでも収入を増やすためには、産後パパ育休は取得せず、出産後すぐに育児休業を取得するという考え方もありそうです。
執筆者:吉野裕一
夢実現プランナー
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