年金受給前に父が死亡…支払ってきた年金は「無駄」になってしまうのでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2023年4月6日 23時20分
父親が年金を受け取る前に亡くなった場合、子どもの立場としては納付してきた保険料が無駄になるのか知りたいと思うこともあるでしょう。この答えを正しく理解するには、年金の仕組みや制度について把握しなければなりません。そこで今回は、上記の疑問の解消に役立つ情報を詳しく紹介していきます。
積み立てるという認識は不正確
「積み立てた年金が戻ってこない」と考えると、損をしたと感じやすくなります。しかし、日本の年金制度は賦課方式で運用されており、積み立てるという認識は正しくありません。
賦課方式とは、受給者を現役世代が支える世代間扶養に基づくものです。過去の自分が納めた分を受け取るのではなく、その時々の現役世代が納付している保険料が年金の財源となります。よって、支払った分は無駄になっておらず、当時の年金として有効に使われたというわけです。
とはいえ、年金受給前に死亡して、納付した本人に恩恵がなければ、やはり不満を感じることもあるでしょう。賦課方式の理屈が分かっても、損をしたというネガティブな感情が生まれやすいです。ただし、親族には恩恵があるので、それを踏まえて本当に無駄かどうか判断する必要があります。
配偶者や子どもが受け取る遺族年金
国民年金保険の加入者が死亡した場合、要件を満たせば故人が生計を維持していた遺族に遺族年金が支給されます。一家の大黒柱を失っても、遺族は生活を安定させやすくなるのです。これを踏まえると、納めた保険料が無駄になるとは一概にいえません。
遺族年金のうち遺族基礎年金を受け取れるのは、子どもがいる配偶者もしくは子ども本人です。遺族基礎年金における子どもとは、18歳になる年度の3月末までの子を指しています。ただし、障害等級1級と2級の子供は20歳になるまで対象です。
なお、令和5年4月分からの支給額の基本は79万5000円(昭和31年4月1日以前生まれの子のある配偶者が受け取るときは79万2600円)です。そこに子どもの人数によって金額が加算される仕組みです。また、厚生年金保険に関しても遺族は遺族厚生年金を受け取れます。受給資格や支給額などは遺族基礎年金と異なるので注意しましょう。
死亡一時金や寡婦年金
配偶者に子どもがいないなど、受給の要件を満たさなければ、遺族であっても遺族年金を受け取れません。その場合でも別の要件を満たすことで、死亡一時金を支給してもらえる見込みがあります。具体的には、国民年金の第1号被保険者が、36月以上保険料を納付していた場合に受け取れるのです。
また、寡婦年金は受給資格を満たしている夫が死亡した場合に妻に支給されます。死亡一時金と両方の要件を満たすなら、どちらか一方を選択することになります。このように、加入者の死亡を想定した制度は複数あり、遺族のもとにお金が届きやすいように配慮されているのです。
いずれにせよ、故人が保険料を納めていたからこそ、遺族は受給の権利を得られます。そういう意味では、保険料の納付額のうち、遺族が受け取った金額分は無駄にならないとも解釈できるでしょう。
遺族が何を受給できるのかチェックしよう!
死亡して年金を受け取れなくても、納めた保険料が無駄になるとは限りません。日本の年金制度では賦課方式が採用されているので、世代間扶養に有効利用されたという考え方もあります。また、遺族年金や死亡一時金などが遺族に支給される可能性もあるのです。自分が故人の子どもなら、年金の制度をチェックして受給できるものを把握しましょう。
出典
厚生労働省 第05話 賦課方式と積立方式
日本年金機構 遺族年金
日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 死亡一時金
日本年金機構 寡婦年金
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー
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