年金は老齢年金だけじゃない? 障害年金と遺族年金って、どんなときに役立つの?
ファイナンシャルフィールド / 2023年4月5日 23時20分
公的年金は、老後の生活を支えるための老齢年金が基本ですが、病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に支給される障害年金と、被保険者が亡くなった場合に遺族に支給される遺族年金があります。 また、老齢年金と同様に、障害年金には障害基礎年金と障害厚生年金が、遺族年金には遺族基礎年金と遺族厚生年金があります。 今回は、障害年金と遺族年金の概要について解説します。
障害年金
障害年金は、国民年金または厚生年金の被保険者が、病気やけがで生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方を含めて受給できる年金です(※1)。
病気やけがで初めて医師の診断を受けたときに、加入していた年金制度に応じて「障害基礎年金」または「障害厚生年金」を請求することができます。
【図表1】
1. 国民年金の被保険者が一定の障害の状態になったときに受給できる障害基礎年金
日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の方は国民年金の被保険者になりますが、障害の原因となった病気やけがの初診日(注1)が国民年金の加入期間にあるほか、20歳前、または日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満の期間にある方は障害基礎年金を請求できます。
(注1):障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師などの診療を受けた日
障害基礎年金の受給対象となる方が、障害認定日(注2)に障害等級表に定める障害があり、後述する保険料納付要件を満たす場合は、障害の程度に応じて1級または2級の障害基礎年金が支給されます。
(注2):障害の状態を定める日のことで、初診日から1年6ヶ月を過ぎた日、または1年6ヶ月以内にその病気やけがが治った(症状が固定した)日
20歳前に初診日がある病気やけがで一定以上の障害が残った場合は、20歳から障害基礎年金が支給されます。ただし、20歳前の初診日については、年金の加入や保険料の納付要件が不要となることから、一定以上の収入がある方には支給制限が設けられています。
2. 厚生年金の被保険者が一定の障害の状態になったときに受給できる障害厚生年金
会社員などで厚生年金の被保険者である期間に初診日がある方は、障害厚生年金を請求することができます。
障害厚生年金の受給対象となる方が、障害認定日に障害等級表に定める障害があり、後述する保険料納付要件を満たす場合、障害の程度に応じて1級・2級、または3級の障害厚生年金が支給されます。
また、3級に該当する状態よりも軽い程度の障害が残った場合は、障害手当金(一時金)を受け取れます。
なお、1級および2級の障害厚生年金を受給する方には、1級または2級の障害基礎年金も併せて支給されます。
遺族年金
遺族年金は、国民年金または厚生年金の被保険者であった方が亡くなったときに、その方に生計を維持されていた遺族が受給できる年金です(※2)。亡くなった方が加入していた年金制度に応じて、「遺族基礎年金」または「遺族厚生年金」を請求できます。
1. 国民年金の被保険者が亡くなったときに一定の要件を満たす遺族が受給できる遺族基礎年金
遺族基礎年金は、以下のいずれかの要件を満たす場合、死亡した方によって生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」(注3)が受給することができます。
(1)国民年金の被保険者である間に死亡したとき。または国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方(日本国内居住者に限る)が死亡したとき(ただし、後述する保険料納付要件を満たす必要があります)
(2)老齢基礎年金の受給権者であった方(保険料納付済み期間、保険料免除期間、および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方)が死亡したとき
(3)保険料納付済み期間、保険料免除期間、および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方が死亡したとき
(注3):子とは 18歳になった年度の3月31日までにある者、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある者(婚姻していない場合に限る)。
2. 厚生年金の被保険者が亡くなったときに一定の要件を満たす遺族が受給できる遺族厚生年金
遺族厚生年金は、以下に示す要件を満たす場合、死亡した方に生計を維持されていた一定の遺族が受給することができます(※2)。
(1)厚生年金の被保険者である間に死亡したとき。または被保険者期間中の病気やけがが原因で、初診日から5年以内に死亡したとき(ただし、後述する保険料納付要件を満たす必要があります)
(2)1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けている方が死亡したとき
(3)老齢厚生年金の受給権者であった方(保険料納付済み期間、保険料免除期間、および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方に限る)が死亡したとき
(4)保険料納付済み期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方が死亡したとき
遺族厚生年金の受給対象となる遺族は、死亡した方に生計を維持されていた以下の遺族のうち、最も優先順位が高い方となります。
第1順位:子のある妻、子のある55歳以上の夫
第2順位:子
第3順位:子のない妻
第4順位:子のない55歳以上の夫
第5順位:55歳以上の父母
第6順位:孫
第7順位:55歳以上の祖父母
遺族基礎年金を受け取れる方の場合、遺族厚生年金を併せて受給できます。ただし、子のない30歳未満の妻の場合は5年間の有期給付となります。
また、夫・父母・祖父母の場合は60歳からの受給開始となりますが、遺族基礎年金を受給中の夫に限り、60歳前でも遺族厚生年金を併せて受け取れます。なお、孫の要件は遺族基礎年金の子(注3)と同様です。
障害年金と遺族年金の保険料納付要件
障害年金や遺族年金を受給するためには、障害年金は初診日がある月の2ヶ月前まで、遺族年金では死亡日の前日において死亡日が含まれる月の2ヶ月前までの被保険者期間に、国民年金の保険料納付済み期間および免除期間、厚生年金保険の被保険者期間の合計が3分の2以上あることが必要となります(※1、※2)。
なお、2026年(令和8年)3月末日までは、障害年金は初診日で65歳未満、遺族年金は死亡した方が65歳未満である場合、直近1年間に保険料の未納がなければ特例として保険料納付要件を満たすこととされています。
【図表2】
まとめ
障害年金と遺族年金を受給するためには、保険料納付要件を満たす必要がありますので、保険料の納付が経済的に困難な場合には未納のままにすることなく、保険料の免除や納付猶予制度(※3)を利用しましょう。
出典
(※1)日本年金機構 障害年金ガイド 令和5年度版
(※2)日本年金機構 遺族年金ガイド 令和5年度版
(※3)日本年金機構 国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
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