少子化問題に対しては労働観や人生観の変化をどう捉えるかが重要
ファイナンシャルフィールド / 2023年4月7日 0時10分
少子化が非常に話題になっています。国は「異次元の少子化対策」と称し、「こども政策の強化に関する関係府省庁会議」を開催するなど対策を練っているようですが、厚生労働省の「人口動態統計速報」(令和4年12月分)では、年間の出生数が統計開始以来で初めて80万人を割り込む結果となっています。 前回に続き、こども政策の強化に関する関係府省庁会議の資料をもとに、少子化問題を考える際に重要なポイントを確認していきます。
共働き世帯数と専業主婦世帯数の推移
今回は少子化対策に関連するデータから、共働き世帯と専業主婦世帯の数がどのように推移しているかをチェックします。平成8年(1996年)を境に共働き世帯が専業主婦世帯を上回っていることが、図表1から分かります。
図表1
〇共働き世帯数と専業主婦世帯数の推移(妻が64歳以下の世帯)
出典:内閣官房こども家庭庁設立準備室 「こども・子育ての現状と若者・子育て当事者の声・意識」
平成8年(1996年)というと今から27年前となり、現在64歳の方が37歳であった年です。当時と現在では、同じ37歳で子育てをしている家庭でも、働き方や家族観などが大きく異なっているかと思われますが、令和3年(2021年)の時点で共働き世帯と専業主婦世帯の数には2倍以上の差が生じています。
子どもがいない世帯や子育てが終わった世帯、子どもの年齢との関係もあるため、単純に比較することはできませんが、以前の記事で参照した「年齢別の未就園児の割合」というデータも併せて考えると、子育て期間中の共働き世帯の数についても、かつてと比べて多くなっていることが推察できます。
今後も共働き世帯は増加する可能性が高い
このデータは近年の働き方の変化の一端を示していますが、同時に、将来的には共働き世帯と専業主婦世帯の比率について現在の2倍超から、さらに開きが生まれる可能性が高いことも示しています。妻が64歳以下の世帯を対象としているため、子育てが終わる共働き世帯が今後さらに増えることで、専業主婦世帯との差が開く可能性が高いということです。
労働者人口を増やすことが国の政策目的のひとつになっているので、その意味では目標を実現できているといえます。しかし、圧倒的に共働き世帯が増えることが良い世の中なのかと考えると、将来、社会的には別の問題が出てくるような気もします。
夫婦で働いて所得が増えるのは経済的にはプラスに働く反面、共働きによって何かを失うとすれば、それは未来から過去を振り返ってしか分かり得ないことなのかもしれません。
まとめ
今回参照した「共働き世帯数と専業主婦世帯数の推移(妻が64歳以下の世帯)」は、国の少子化対策における会議で用いられている資料であるため、子育てに伴う働き方の変化の推移を示すデータではあります。一方、共働き世帯と専業主婦世帯の収入や税制、老後の年金などにも大きく影響を及ぼすであろうデータともいえます。
今後、段階的に定年退職の年齢が65歳に引き上げられていくことになります。定年が65歳になるということは、必然的に年金を受給する年齢も後ろ倒しになる可能性が高いことを示唆しています。
現状では、年金の支給年齢を68歳から70歳に引き上げるという議論もあります。この議論をもとに考えた場合、共働きの方の世帯収入が多くなり、長く働くことで老後の年金の受給額も増やしやすくなる効果はあるでしょう。ただし、長く働くという労働観が老後の年金と引き換えになっているという経済的な視点で考えた場合、果たしてそれが本当に幸せな生き方といえるのかという思いも出てくるのではないでしょうか。
今回のデータが示すことは、少子化問題を考える場合は労働観や人生観なども含め、私たちが今後、どのように生きるべきかを再考するように促しているのかもしれません。
出典
内閣官房こども家庭庁設立準備室 こども・子育ての現状と若者・子育て当事者の声・意識
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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