老後に「働かなくてもいい」のはどんな場合? 働かずに暮らせる条件とは
ファイナンシャルフィールド / 2023年4月7日 1時10分
会社勤めをされていた場合、定年後は自由な時間が多くなり、現役時代にはできなかった趣味や旅行などを思う存分に楽しみたいと考えることもあるでしょう。現在は定年後の人生も長くなってきていますが、果たして、老後も働かずにゆとりのある生活を送れるのでしょうか。
公的年金だけでは当てにならない老後の生活費
公益財団法人生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」(令和4年度)の結果によると、夫婦2人で老後に必要と考える最低日常生活費について、1ヶ月当たりの平均で23万2000円と前回調査(令和元年度)から1万2000円の増加となっています。
同調査による老後に必要な生活費は、近年では減少の傾向にありましたが、一昨年から続くエネルギー価格の高騰や、円安による物価上昇も影響しているのかもしれません。
また、ゆとりある老後の生活を送るために必要と考える金額は平均で37万9000円と、こちらは前回調査よりも2万円近く増えており、多くの方が老後の生活費の増加を意識していることが分かります。
総務省統計局による家計調査(家計収支編)の令和3年の結果を見ると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、1ヶ月の実収入が平均で24万6237円、実支出は26万8508円です。
社会保険料などを引いた消費支出は23万6696円と、生命保険文化センターの生活保障に関する調査結果の最低日常生活費と同程度の金額ですが、1ヶ月の実支出は実収入よりも2万円ほど多くなっています。
以前、話題となった老後に2000万円が不足するという問題は、家計調査の統計をもとに算出されたものです。上記の結果で試算すると、65歳から95歳までと仮定した老後の30年で不足するのは約720万円ということになりますが、ゆとりある老後の生活費で考えると毎月約15万円の不足となり、この場合は老後30年での不足分は約5400万円になります。
老後に働かず、ゆとりある生活を送るためには5400万円を準備する必要があるのか?
先述したゆとりある老後の生活費のために仮に5400万円が準備できたとして、3%の利回りで資産運用ができれば、30年間、毎年276万円を取り崩していけることになりますが、5400万円を準備するのは容易ではありません。
ただし、月額にすると23万円になるため、運用しながら取り崩すのであれば5400万円まで準備する必要はないことになります。
では、ゆとりある生活費として毎月約15万円の不足額を補うには、資産運用の原資がどれくらい必要になるのでしょうか。
先ほど例として挙げた3%の利回りで運用する場合、3500万円が準備できれば、毎月15万円の取り崩しが可能な試算になります。もう少し利回りが良く4.5%での運用であれば、3000万円で毎月15万円を取り崩していくことができます。
繰下げ受給と併せて老後資金を取り崩す方法も
2022年10月から年金の繰下げ受給の開始年齢が最長75歳までとなり、年金額を最大84%増やすことができるようになりました。例えば原則の65歳からの受給額が月22万円であれば、75歳までの繰下げにより40万4800円となります。
受給開始を75歳に繰下げた場合、どれくらいの期間で年金を受け取れるのかと心配に思う人もいるかと思いますが、できるだけ年金生活に入る前に老後資金を準備しながら、老後の生活費の不足分に応じた繰下げ受給を考えるのも一つの方法です。
65歳までに2000万円を準備することができたとして、前述したように運用しながら取り崩した場合、3%の利回りでは毎月8万5000円の取り崩しになります。家計調査での平均の実収入である約24万円と合わせても、ゆとりある老後の生活費の上乗せ分には足りないことになります。
仮に3年間(36ヶ月)の繰下げ受給をした場合、1ヶ月当たりの増額率は0.7%のため、年金額を25.2%増額できます。例えば、22万円の年金を繰下げ受給して25.2%の増額ができれば、年金額は約30万円となり、2000万円の運用による取り崩し分の8万5000円と合わせると、ゆとりある老後の生活も実現可能に近づくことも分かります。
ただし、この方法では65歳以降、繰下げ受給開始までの3年間は働くことになる場合もあります。
まとめ
人生100年時代といわれるように、長寿化によりで老後の期間が長くなってきました。定年後はゆっくりと生活したいと考えていても、資金面で実現できず、65歳以降も働き続けようと思う人も増えていくのかもしれません。
やはり、現役時代からしっかりと将来を見据えた資産形成を行うことが大切で、早めの準備によって余裕のある老後の生活が現実になっていきます。老後の資金を増やすには年金の繰下げ受給という方法もありますが、まずは老後の生活ための原資を作り、運用しながら老後資金を取り崩していくことも検討していきましょう。
出典
公益財団法人生命保険文化センター 2022(令和4)年度 生活保障に関する調査
総務省統計局 家計調査(家計収支編) 調査結果
執筆者:吉野裕一
夢実現プランナー
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