大学無償化の対象世帯です。子どもは無理にでも進学させるべきですか?
ファイナンシャルフィールド / 2023年4月7日 0時20分
大学無償化により、これまでに比べると、所得の低い世帯において、大学進学の負担が小さくなりました。しかし、中には大学無償化を適用しても、負担が重く感じられて進学で悩む世帯もあるようです。 そこで、大学無償化の対象であるならば、無理にでも子どもを大学へ進学させるべきかどうかを検討してみます。
大学無償化の概要
大学無償化とは、正式には「高等教育の修学支援新制度」という制度です。所得が一定額以下の世帯の子が大学や専門学校などへ進学する際に、授業料と入学金を減免し、給付型の奨学金を支給するという制度です。
しかし、大学無償化といわれるものの、必ずしも大学の進学にかかる費用全てが賄われるわけではありません。進学先によっては、大学無償化による減免と支給額よりも、学費の総額が高いことも珍しくありません。
また、授業料や入学金を賄えたとしても、教科書代や課外活動費などは対象外です。そのため、親は前提知識として、大学無償化を利用しても、大学費用が完全に無償とはならないことを知っておくべきです。なお、大学無償化の対象外となっている学校も、一部存在しています。
大学への進学が、良い就職先につながるとは限らない
統計上の生涯賃金だけでいうならば、大学進学をした方がよいと考えられます。「ユースフル労働統計 労働統計加工指標集 2022」によれば、60歳までの生涯賃金は、高卒男性で2億500万円、大卒男性で2億6190万円となり、大卒の方が5000万円以上生涯賃金は高くなります。
一方、日本政策金融公庫の令和3年度「教育費負担の実態調査結果」によれば、大学に進学するには、年間平均149万9000円、入学金と合わせて4年間でおよそ680万円かかるのですが、学費と生涯賃金差をてんびんにかけると、大学に行くべきだとも思えます。
しかし、大学での就職活動では、高卒で就職する際のように、学校側からの手厚いサポートを受けられるとは限りません。また、大学ごとの格差も生じるかもしれません。
親の頑張りで、在学中に無償化の対象外となることも……
大学無償化の規定では、世帯の収入が支援の有無を判断する要素の一つになります。大学無償化制度を利用して、子どもを無理に進学させたものの、家計が予想以上に苦しくなって、親が仕事を増やした結果、収入が増えたので無償化の対象から外れてしまうということもあるようです。
在学中に無償化の対象外となると、年間平均149万9000円の学費を全額負担することにもなりかねません。学部によっては、それ以上の金額になることもありえます。
そうして学費を払えずに、別途教育ローンを組んだり、最悪の場合は退学を選択したりするなど、想定外の事態が起こる可能性もあります。
子どもの希望を重視することも大切
子どもを大学進学させるかどうかについては、子どもの希望も大切です。大学に進学して学ぶのは、子ども自身です。子どもの希望する進学先ではない学校に進学させることは、子どもにとってマイナスとさえなることだってあります。
大学無償化の対象だからと無理に進学させるべきではない
大学無償化の対象になっても、大学進学にかかる全ての費用が完全に賄えるわけではありません。また、大学に進学しても、必ずしも子どもにとって良い結果につながるとは限りません。
その点を考えると、大学無償化の対象だからといって、子どもの希望を無視したり、家計で無理をしたりしてまで進学させるべきではないでしょう。
大学無償化の対象世帯において、無償化だからと、子どもを無理にでも大学進学させるべきかどうか悩まれたときには、大学進学が本当に子どもの将来のためになるのかを考えて、最終的には、子どもの希望に沿った結論を出すことをおすすめします。
執筆者:柘植輝
行政書士
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