【40歳年収500万円】退職して65歳まで働かなかったら、年金はいくらもらえる?
ファイナンシャルフィールド / 2023年4月19日 12時20分
令和3年4月から『改正高年齢者雇用安定法』が施行され、従業確保措置の観点から定年は65歳まで引き上げられました。定年退職後も働きたい人にとってはうれしい措置ですが、例えば60歳で退職して年金をもらいたい人は、年金受給について不安を感じてしまうことでしょう。 この記事では、退職して65歳まで働かなかったケースでは年金をいくらもらえるのか、解説していきます。 また40歳まで年収500万円の正社員として働いていた方を例に、配偶者の扶養に入ることが本当に有効なのかどうかについても解説していきましょう。
国民年金の受給は原則として65歳から
日本の国民年金制度の受給資格が得られるのは、20歳から60歳までの40年間のうち保険料の納付済期間と保険料が免除された期間を合算すると10年以上になる場合です。受給開始期間は原則として65歳となっており、40年間の保険料をすべて納めていれば満額受給となります。
未納月や免除期間があった場合、遡って追納すると保険料納付済期間に含まれます。また厚生年金を納めていたものの配偶者の扶養に入った場合には、国民年金だけを受給することになり、厚生年金分は受給することはできなくなってしまいます。
たとえば、40歳まで年収500万円の正社員として働いていたとして、その後20年間は夫の扶養に入っていた妻の場合、40歳まで支払っていた厚生年金の受給はできないため、結果的に払い損になってしまいます。扶養に入らず働いていれば国民年金だけでなく厚生年金も受給できるため、扶養に入るのが良いのかどうかは慎重に検討する必要があるでしょう。
65歳まで働かない場合は繰上げ受給が可能
年金受給開始期間は原則として65歳からですが、60歳の誕生日から65歳までの期間で、年金の繰上げ受給が可能です。
年金の繰上げ受給とは、年金の受給開始時期を60歳から65歳になるまでの間に早められる制度です。希望者は、繰上げ受給を希望する時期に手続きをする必要があります。
ただし、本来の年金受給額から減額された額での受給となり、減額率は生涯変わらないという仕組みにもなっています。減額率は0.5%でしたが、令和4年4月以降は0.4%と引き下げられました。しかし、年金の受給開始時期を早めるほど減額率は大きく、例えば60歳を迎えた月の減額率は24%です。
・計算式
減額率=0.4%×繰上げ受給の請求月~65歳の誕生日の前月までの月数
・例
60歳0ヶ月:24%
60歳1ヶ月:23.6%
60歳2ヶ月:23.2%
60歳3ヶ月:22.8%
60歳4ヶ月:22.4%
64歳0ヶ月:4.8%
64歳1ヶ月:4.4%
64歳2ヶ月:4.0%
64歳3ヶ月:3.6%
64歳4ヶ月:3.2%
繰上げ受給の請求を行うと、請求日の翌月から年金受給がスタートします。65歳から年金を受け取るのか、減額率を計算したうえで65歳未満から受け取るのか、熟考する必要があるでしょう。
繰上げ受給の請求前に注意すべきポイント
ここで、繰上げ受給の請求をした後、できなくなることを紹介するので、参考になさってください。
・繰上げ受給請求後は取り消しができない
・国民年金の任意加入および保険料の追納ができなくなる
・共済組合加入期間がある人は、そちらの老齢年金も同時に繰上げ受給請求となる
・厚生年金基金から受給される年金も減額されるケースがある
・障害基礎年金の請求ができなくなる ※持病がある・治療中の方は要注意
・雇用保険の基本手当または高年齢雇用継続給付を受け取る場合、年金の一部など支給停止になる(老齢基礎年金は除く)
・遺族厚生年金や遺族共済年金と併用受給は不可
・寡婦年金は支給されない、または寡婦年金の権利喪失となる
・厚生年金保険の長期加入者、障がい者の特例措置は対象外となる
このように、年金の開始時期はその他の受給要件を満たす制度との兼ね合いも、考慮が必要です。年金単体で見るのではなく、どの制度で受給要件を満たしているのか確認し、受給予定額などを計算した上で、老後のライフスタイル設計をしましょう。
60歳で年金を受給するとどれくらい減額されるのか
一例として、60歳から年金を受給した場合に、どれくらいの減額となり、どれくらいの額を受け取れるのかみてみましょう。
(例)60歳0ヶ月で年金繰上げ受給請求をした場合
20歳から60歳まで国民年金保険料を全額納付している人であれば、月額が6万6250円、年間79万5000円を受け取れる計算です(令和5年4月時点)。しかし、減額率が24.0%のため、実際に支給される額は60万6321円。およそ19万円減額されることになります。
年金の繰上げ受給を請求すると、厚生年金も減額される場合があります。年金だけでなく厚生年金でも減額の条件や減額率を確認し、トータルで計算しましょう。
まとめ
国策により定年が65歳まで引き上げられ、60代になっても働きたいと考えていた人にとっては働きやすい環境が整いつつあります。しかし、60歳で定年退職する予定だった人や、健康上の問題や状況を鑑みて65歳未満で年金受給を検討している人がいるのも事実です。
年金の繰上げ受給は可能ですが、減額率や厚生年金の受給額、ほかの受給要件を満たす制度も複合的に考えて、老後のライフプランを練りましょう。
出典
日本年金機構 年金の繰上げ受給
日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
日本年金機構 令和4年4月分からの年金額等について
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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