専業主婦がパートタイムで働くときのさまざまな壁<その1>~社会保険に関する「106万円の壁」
ファイナンシャルフィールド / 2023年4月20日 2時50分
![専業主婦がパートタイムで働くときのさまざまな壁<その1>~社会保険に関する「106万円の壁」](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_199737_0-small.jpg)
専業主婦がパートタイムで働くときに、いくら以上を稼ぐと税金や社会保険料がかかるので気をつけないといけないといわれる、年収に関する「壁」があります。具体的には、103万円、106万円、130万円、150万円の壁ですが、壁の数が多くて、よく分からなくなっている方も多いのではないでしょうか? 本記事では、それぞれの年収の「壁」の意味について解説したいと思います。
税金の壁と社会保険の壁
年収の「壁」には、税金の壁と社会保険の壁があります。103万円、150万円が税金に関する壁で、106万円、130万円が社会保険の壁です。
税金の壁の場合、被扶養者であるパートタイム主婦の年収がその壁を超えると、自身の収入に税金がかかったり、扶養者である夫が配偶者控除や配偶者特別控除を受けられなかったりすることで、支払う税金の負担が増えてしまいます。
一方、社会保険の壁では、被扶養者であるパートタイム主婦の年収が壁を超えると、健康保険上の被扶養者でなくなり、自ら健康保険や国民健康保険に加入して保険料を支払わなくてはなりません。
例えば、パートタイム主婦の年収がそれぞれの壁を1万円超えると、税金の壁の場合、支払う税金は1万円に応じた金額しか増えないので負担はそれほど大きくありません。ところが、社会保険の場合は壁を少しでも超えると健康保険上の扶養から外れ、自ら健康保険などに加入しなくてはならないので、支払うべき保険料もゼロから年間10万円台になってしまい、より影響が大きいといえるでしょう。
専業主婦のパートタイムの年収に関するさまざまな「壁」のうち、社会保険の壁から解説していきたいと思います。
106万円の壁と社会保険適用拡大
まずは106万円の壁について説明します。
基本的に、社会保険の適用事業所に勤務する正社員は、社会保険に加入する義務があります。それに加えて「1週の所定労働時間」および「1月の所定労働日数」が、正社員の所定労働時間および所定労働日数の4分の3以上の労働者も、社会保険に加入する義務があります(これを「4分の3基準」といいます)。
例えば、勤務先で正社員の1週間の労働時間が40時間で、1ヶ月の労働日数が20日の場合は、1週間に30時間以上、かつ1ヶ月に15日以上勤務する労働者は「4分の3基準」を満たすので、社会保険の加入対象となります。
ここまでは比較的簡単ですが、「4分の3基準」を満たさないパートやアルバイトといった「短時間労働者」の一部の人も社会保険の加入対象に該当します。具体的には、以下の条件のすべてを満たした短時間労働者は社会保険に加入する義務があります。
(1)従業員数101人以上の企業に勤めていること
(2)週の労働時間が20時間以上
(3)月額賃金が8万8000円以上
(4)2ヶ月を超える雇用の見込みがあること
(5)学生ではないこと
上記の条件のうち、主なものを見ていきましょう。
●対象企業の従業員数の変更
2022年9月までは、従業員数501人を超える企業に勤めないかぎり、パートやアルバイトといった短時間労働者に社会保険への加入義務はありませんでした。しかし、2022年10月からは従業員数101人を超える企業に変更されました。
それまでは一部の大企業に勤める短時間労働者しか加入義務はありませんでしたが、対象の範囲が大きく広がったことになります。
2024年10月からは、さらに従業員数51人以上の企業にまで拡大され、これが現在、国が進めている社会保険の加入者を増加させる「社会保険適用拡大」といわれる動きです。
●月額賃金が8万8000円以上=「106万円の壁」
月収8万8000円を12倍して年収に換算すると約106万円で、これが「106万円の壁」です。
8万8000円×12ヶ月=105万6000円 → 106万円
収入以外にもいろいろな条件がありますが、年収でいうと106万円を超えると社会保険への加入義務が生じる可能性があるということで、「106万円の壁」が使われています。
106万円の壁を回避するには?
短時間労働者が「106万円の壁」を回避するためには、前述した社会保険加入の5つの条件のうち、いずれか一つでも該当しないようにすることが必要です
年収を106万円未満にするだけでなく、週20時間以上は働かない、従業員101人以上の企業で働かないなどの方法が考えられます。ただし、「2ヶ月を超える雇用の見込み」をなくすと働く期間が超短期となり、これは自分のためにもならないので難しいかもしれません。
従業員数が101人未満の企業で働いていても、従業員数51人以上の場合、2年後の2024年10月には社会保険の加入義務が生じることになります。また、現在は51人未満でも、その企業が成長して従業員数が51人以上になれば、やはり2年後には加入義務が出てきます。
現時点で「106万円の壁」を回避する確実な方法は、年収を106万円未満に抑える、または週の勤務時間を20時間未満にすることです。
まとめ
社会保険の壁には、「130万円の壁」もあります。「その2」では「130万円の壁」の説明と、「106万円の壁」との関係について説明したいと思います。
出典
日本年金機構 Q 被用者保険の適用拡大により、短時間労働者に対する厚生年金保険・健康保険の被保険者資格の取得要件はどのようになりますか。
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
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