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「70歳以降」に年金を請求したい! 繰り下げない場合の「新たな仕組み」について解説

ファイナンシャルフィールド / 2023年4月21日 3時0分

「70歳以降」に年金を請求したい! 繰り下げない場合の「新たな仕組み」について解説

老齢年金の受け取り開始時期を遅らせて年金の額を増やす「繰下げ制度」が改正されて1年が経過しました。これに伴い2023年4月から、70歳以降に老齢年金を請求する際に繰り下げない場合の年金額算定の仕組みも改正されています。本記事では、この改正概要について解説します。

「繰下げ制度(繰下げ受給)」とは

まず、「繰下げ受給」とはどういうものかを確認しましょう。
 
老齢基礎年金および老齢厚生年金は、原則として65歳から受け取ることができます。ただし、希望すれば65歳で受け取らず、66歳以降75歳までの間に受給開始の時期を繰り下げることができます。これが「繰下げ受給」です。
 
繰り下げた期間の長さに応じて年金額が増額され、その増額率は一生変わりません。なお、老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰り下げることができます。
 
2022年4月には、老齢年金の受け取りを開始する上限年齢(つまり「繰下げ受給」の上限年齢)が70歳から75歳に引き上げられ、受け取り開始の時期と受け取る額の選択の幅が広がりました。これに伴って2023年4月の前後で、年金額の計算方法がどのように変わるかを順にみていきましょう。
 

これまでの仕組み

これまでは、70歳以降に「繰下げ受給」を選択せずに老齢年金を請求する場合、「繰下げ増額」のない本来額(65歳から受け取っていた場合の本来の額)の年金が、受給権発生時にさかのぼって一括支給されていました。
 
一方で、年金には5年の時効があります。請求時点からさかのぼって5年以前に支払期日が到来している分の年金については、時効により受給権が消滅するため、「さかのぼって受給できるのは最大で過去5年分」となっていました。
 
例えば、何らかの事情で老齢年金の請求手続きをせずに72歳になった人が「繰下げ受給」を選択せずに請求する場合、2年分(65歳以降67歳未満の分)の年金の受給権は時効により消滅します。この2年分の年金は受け取れず、72歳からさかのぼって5年分(67歳以降72歳未満の分)の年金が一括支給されていました。
 

新たな仕組み「特例的な繰下げみなし増額制度」

2022年4月、老齢年金「繰下げ受給」の上限年齢が70歳から75歳に引き上げられたことに伴い、これまでの仕組みのままでは、「75歳を目指して、できるだけ長い間繰り下げるつもりで待機しているうちに70歳を過ぎたが、繰り下げずに過去分をまとめて受け取りたい事情が生じた」というような場合に、5年以前の分は時効消滅により受け取れないことになります。
 
このため2023年4月、「特例的な繰下げみなし増額制度」が施行されました。70歳以降80歳未満の人が「繰下げ受給」を選択せずに老齢年金を請求する場合には、「請求の5年前に繰り下げの申出があったもの」として年金の額を算定し、支給するという仕組みです。
 
例えば、72歳の人が「繰下げ受給」を選択せずに老齢年金を請求する場合、請求時の5年前である67歳時点で「繰下げ申出」をしたものとみなし、65歳から67歳までの2年分(24ヶ月分)の繰下げ増額率(0.7%×24ヶ月=16.8%)が適用された年金額で5年分の年金給付が一括支給されることになります。
 
この新たな仕組みにより、5年の時効は実質的には適用されなくなったといえます。
 

まとめ

老齢年金の受給開始をできるだけ遅らせて年金の額を増やそうと計画していたとしても、予期せぬ事態が生じ、まとまった額のお金が必要になる場合もあります。
 
今回の新たな仕組みにより、70歳以降の繰下げ待機中に万一そうした事態になった場合でも、時効による不利益を被ることがなくなりました。70歳を超えても、安心して繰下げ待機できる制度になったといえるでしょう。
 

出典

日本年金機構 か行 繰下げ受給
日本年金機構 令和5年4月から老齢年金の繰下げ制度の一部改正が施行されました
 
執筆者:福嶋淳裕
CMA、CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、1級DCプランナー
 

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