貯金が「1000万円」あれば、「60歳」で定年退職・年金を遅く受け取っても問題ない? デメリットはある?
ファイナンシャルフィールド / 2023年4月23日 10時0分
来年60歳になって会社を定年退職する人もいることでしょう。貯金は1000万円くらいあるが退職後の仕事は決まっていない場合、年金の繰下げ受給をすれば生活は大丈夫なのか、デメリットやリスクはあるのか、解説します。 今回は話を分かりやすくするため、年金保険料は満額支払っていて免除や納付猶予等の期間はなく、現時点の金融資産は預貯金のみ(副業や資産運用等による収入はない)とします。
老後はどのくらいお金が必要なのか
「貯金も1000万円あるし年金も受け取るから大丈夫」と思われるかもしれませんが、結論からいえばそれだけで老後の生活を乗り切るのは非常に厳しいです。
85歳まで生きると仮定した場合、60歳からだと25年間生活しなければなりません。生活するためには当然お金がかかります。具体的にはどのくらいのお金が必要なのでしょうか?
総務省統計局が発表している家計調査年報(家計収支編)によると、2021年の65歳以上の夫婦のみの無職世帯の消費支出は月額22万4436円です。
夫婦2人暮らしの場合は約22万円かかることが分かります。これはあくまで最低限の生活費なので、冠婚葬祭や家具家電の買い替え、病気やけがによる通院や入院といった出費を考えると、月額25万円から30万円近くに増える可能性もあります。
年金を繰り下げて受け取っても問題ない?
仮に生活費として毎月25万円かかるとすると、年間で300万円です。
今回の事例で定年退職を迎えた後は無職になるため、収入はゼロです。生活費を全額貯金から取り崩すと、60歳時点で1000万円の貯金があっても3年くらいでなくなってしまいます。
「貯金がたくさんあるから年金の繰下げをしても問題ない」どころか、老齢年金を受け取り始める65歳までもたないため、年金のみで生活するのは非常に厳しいといえるでしょう。年金の繰下げよりもまず「60歳から65歳までの5年間の生活をどうするか」を考える必要があります。
定年退職直後は貯金1000万円あるので、散財しない限りすぐに生活に困る可能性は低いと考えられます。ただし無収入では3年近くで資金が底をつくおそれがあるので、定年後も働くことを検討してみましょう。再雇用で現在の職場で働けないか相談してみるのも1つの方法です。たとえ収入が下がって月収15万円くらいになったとしても、ゼロとのちがいは大きいです。
「収入15万円、支出25万円」の場合赤字額は10万円です。年間120万円なので貯金1000万円あると8年くらい持ちこたえられます。
65歳になって本格的に年金を受け取り始めると、さらに収入は増えるので赤字額は減少します。無収入の場合は約3年で破綻する計算だったため、これだけでも大きなちがいです。
年金以外で安定的に毎月25万円以上の収入を確保できるなら年金の繰下げを考えてみてもいいかもしれません。
年金繰下げのデメリット
年金の受給開始時期を遅らせることで、将来受け取る年金額を増やすことができます。増額率は一生変わらないのも大きなメリットです。また、老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰り下げることもできます。
増額率は最大84%で、以下の計算式で算出されます。
「増額率=0.7%×65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数」
例えば、70歳から受け取り始める場合の増額率は42%です。
一方で、下記のようなデメリットもあります。
●繰下げ申請中や受給開始後すぐに万一のことがあると損する可能性が高い
●加給年金額や振替加算額は増額の対象にならず、繰下げ待機期間(年金を受け取っていない期間)中は受け取ることができない
●65歳の誕生日の前日から66歳の誕生日の前日までの間に、障害給付や遺族給付の受給権があるときは繰下げ申請ができない
年金額が増えると所得税や住民税、社会保険料の負担が増える可能性がある点も注意しましょう。
まとめ
今回は、来年60歳で定年退職をする予定で貯金が1000万円ある場合、年金を65歳以降に受け取る繰下げの手続きを行っても問題ないか、解説しました。
貯金が1000万円あっても無収入の場合は3年くらいで生活が破綻してしまう可能性があります。その場合、年金の繰下げどころか65歳まで持ちこたえられないので、定年退職後も再雇用や再就職などで長く働いて「年金に頼らない仕組み」を作る必要があります。
出典
総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2021年(令和3年)家計の概要 II 総世帯及び単身世帯の家計収支
日本年金機構 年金の繰下げ受給
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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