【年金分割】20年間専業主婦の後に離婚。将来の年金はどうなる?
ファイナンシャルフィールド / 2023年4月25日 3時20分
夫が仕事に出て、妻が専業主婦で家事や育児を担当する家庭では、老後、夫の国民年金と厚生年金に加え、第3号被保険者である妻の国民年金を受け取ることになります。このような夫婦が離婚した場合、夫は老後、国民年金と厚生年金の両方を受け取って生活できますが、妻は国民年金しか受け取ることができなくなります。 妻が家事や育児を担っていたおかげで夫が仕事に専念できていたのであれば、婚姻中に加入していた分の厚生年金を全て夫が受け取るのは少し不公平だ、と感じる人もいるのではないでしょうか? そこで生まれたのが「年金分割」という制度です。この記事では、この年金分割制度について解説します。
年金分割とは
年金分割は、離婚の際に、夫婦の婚姻期間中の厚生年金を分割する制度のことです。離婚後、夫婦のうち将来もらえる年金額が少なくなってしまう方を守るために作られました。あくまでも婚姻中の厚生年金が対象のため、国民年金や、結婚する前に各自で加入していた厚生年金は分割の対象外です。
年金分割は、「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。
合意分割
合意分割はその名のとおり、夫婦間の合意のもと、婚姻期間中の厚生年金を分割する制度です。
分割割合は夫婦間で決めることができますが、もともと年金額が少ない方の持ち分をこれ以上減らすことや、年金額が少なかった方が年金額が多かった方の持ち分を超えることは認められません。つまり、分割の上限は2分の1ということですね。
夫婦間の話し合いで合意できなかった場合は、夫婦のどちらかが裁判所に申し立てて、分割割合を決めることになります。
合意分割の請求期限は、離婚してから「2年以内」です。2年を過ぎると分割できなくなってしまうため、忘れずに話し合いや手続きを行ってください。
3号分割
合意分割は、基本的に夫婦間の話し合いで分割割合を決定しますが、不仲が原因で離婚になった場合には話し合いが成立しなかったり、顔を合わせて話すことに精神的に苦痛を感じたりする場合もあるでしょう。そこで、2008年に作られたのが3号分割です。
3号分割は、話し合いをせずとも、夫婦のどちらか一方が手続きすることで厚生年金を分割できる制度です。3号分割の対象になるのは、婚姻中、かつ2008年4月以降に第3号被保険者だった期間のみです。3号分割の分割割合は、必ず2分の1と定められています。
3合分割の場合、元配偶者の同意は必要ありませんが、申請をしなくても離婚したら自動的に分割される、というわけではありません。請求期限は合意分割と同じく「離婚後2年以内」ですので、忘れずに請求手続きを行いましょう。
20年間専業主婦、その後離婚した場合の年金分割の例
合意分割と3号分割についての理解を深めるために、25歳で結婚し、20年間妻が専業主婦をしたのちに50歳で離婚した、とある夫婦の例を考えてみましょう。
同い年のAさん(男性)とBさん(女性)は、1998年4月に25歳で結婚。お互い結婚前から会社員として働いていましたが、Bさんは2003年3月、出産を機に30歳で退職。その後Aさんは会社勤めを続け、Bさんは専業主婦として子育てに専念していましたが、お互い50歳になった2023年3月に離婚しました。
この場合、結婚してからお互い会社員として働いていた1998年4月から2003年3月は、合意分割が適用されます。BさんよりAさんの方が収入が高く、厚生年金保険料納付額も多かった場合、Bさんの厚生年金の持ち分がAさんよりも少なくならない範囲で、話し合って分割割合を決めます。
Bさんが退職して第3号被保険者になった2003年4月から、3号分割制度がスタートする2008年3月までの5年間も、同じく合意分割になります。この期間、Bさんは国民年金のみ加入していて厚生年金はゼロ。よって、Aさんの厚生年金の持ち分の上限2分の1までを、話し合いで決めて受け取ることができます。
2008年4月から離婚する2023年3月までは、3号分割が適用されます。この25年間は、Aさんの同意がなくとも、Bさんが請求するだけで、Aさんの厚生年金の持ち分の2分の1を分割することが可能です。
まとめ
年金分割は、離婚した夫婦で将来の年金額が少なくなってしまう方を守るために作られた制度です。合意分割と3号分割がありますが、どちらも離婚から2年以内に手続きが必要です。
特に婚姻期間が長かった場合、お互いの将来の年金額に大きく関わってくる可能性があるため、話し合いや手続きを忘れないようにしましょう。
出典
日本年金機構 離婚時の年金分割
日本年金機構 離婚時の年金分割について
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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