2023年4月から出産一時金が50万円に! 出産費用はこれでまかなえる?
ファイナンシャルフィールド / 2023年4月26日 4時0分
![2023年4月から出産一時金が50万円に! 出産費用はこれでまかなえる?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_201966_0-small.jpg)
出産を控えている人や妊娠を希望している人の中には、2023年4月以降に出産育児一時金が50万円に引き上げられたことを喜んでいる人も多いのではないでしょうか。一方で、50万円で出産費用をまかなえるのか、疑問を感じている人もいるでしょう。 出産育児一時金の金額は平均的な出産費用を考慮して決められていますが、実際の出産費用が支給額の範囲に収まるかどうかはケース・バイ・ケースです。 本記事では、出産育児一時金引き上げの経緯や支給額を紹介するとともに、50万円で出産費用をまかなえるかどうかや、手元資金が少なく一時的な自己負担が難しい場合の対処法を解説します。
出産育児一時金(出産一時金)の金額引き上げの経緯
出産一時金(出産育児一時金)とは、健康保険や国民健康保険などの被保険者や被保険者の扶養に入っている人が出産したときに、健康保険から支給される助成金です。
出産育児一時金の支給額は、途中で内訳の変更はあったものの、総額は2009年10月以来原則42万円で据え置かれていました。しかし、2022年に発表された医療保険制度改革により、2023年4月から全国一律で50万円に引き上げられました。
今回の出産育児一時金の支給額引き上げの背景にあるのは、病院の公立、私立を問わず出産費用が年々上昇傾向にある点です。現在の出産にかかる平均的な費用を賄える額に設定するべく、支給額の引き上げが実施されることとなりました。
50万円という金額の根拠は、過去10年の平均上昇率から推計した2022年度の全施設平均出産費用48万円です。48万円に産科医療補償制度(※)の掛け金1.2万円を加算した49.2万円を上回る金額として、支給額50万円に設定されました。
※分娩に関連して子どもが重度脳性まひを発症した場合に、本人や家族の経済的負担の補償、原因分析、再発防止にかかわる情報提供などを実施し、紛争防止・早期解決や産科医療の質の向上を図ることを目的とする補償制度。
出産育児一時金の金額
出産育児一時金の引き上げ前後の支給額は、図表1のとおりです。
【図表1】
2023年4月1日 以降 |
2022年1月1日~ 2023年3月31日 まで |
2021年12月31日以前 | |
---|---|---|---|
産科医療補償制度に加入している医療機関等で妊娠週数22週以降に出産 | 胎児1人につき 50万円 |
胎児1人につき 42万円 |
胎児1人につき 42万円 |
産科医療補償制度に加入していない医療機関等で出産 | 胎児1人につき 48万8000円 |
胎児1人につき 40万8000円 |
胎児1人につき 40万4000円 |
産科医療補償制度に加入している医療機関等で妊娠週数22週未満で出産 |
出産育児一時金が50万円支給されるのは、産科医療補償制度に加入している医療機関で、妊娠週数22週以降に出産した場合です。産科医療補償制度に加入していない医療機関で出産した場合や妊娠週数22週未満(※)で出産した場合は、48万8000円が支給されます。
注意したいのは、ここでの「出産」には、正常な出産だけでなく、妊娠85日以降の早産、死産や流産、人工妊娠中絶を含むことです。また、出産育児一時金は出産した胎児の数に応じて支給されるため、例えば双子の場合は2人分、三つ子の場合は3人分を受け取れます。
※胎児が母体外で生きることが難しいとされる週数での出産。いわゆる流産。
出産育児一時金で出産費用は本当にまかなえるの?
厚生労働省保険局の集計によると、令和3年度の出産費用の平均値は、全体で約46万3000円、正常分娩のみでは約47万3000円となっています。出産費用が高い私立病院でも平均額は50万円に収まっているため、出産育児一時金として50万円を受け取れれば、平均的な出産費用はまかなえる計算です。
しかし、出産費用には地域差があること、妊娠~出産の経過によっては入院費などがかかる可能性があること、病院や出産プランごとに料金設定が異なることを考えると、出産費用が50万円を大きく超えるケースはあるでしょう。
また、出産費用は年々上昇しているというデータがあり、今後も上昇傾向が続く可能性は高いといえます。将来的には50万円の出産一時金でも、出産費用が足りないのが一般的になるかもしれません。
手元の資金が足りないときは「直接支払制度」「受取代理制度」の利用を
出産費用を出産育児一時金でまかなえたとしても、貯蓄がないために一時的に費用を自己負担することも難しい場合もあるでしょう。このようなときは、出産育児一時金の「直接支払制度」「受取代理制度」を利用すると悩みが解決できます。
直接支払制度とは、病院と健康保険組合などが手続きや受給などのやり取りを行い、出産育児一時金が病院に直接支払われる制度です。受取代理制度では、申請書の作成、提出だけを妊婦側が行い、出産育児一時金は直接支払制度と同様に病院に直接支払われます。
この制度を利用すると、出産育児一時金と実際の出産費用の差額だけを自己負担すればよくなり、手元資金が少なくても支払が可能です。また、出産費用が出産育児一時金を下回った場合は、差額が後日妊婦側に還付されます。
出産一時金だけでは出産費用が足りない可能性も考慮しておこう
出産育児一時金は、現在の出産費用事情を考慮して、平均的な費用をまかなえるような金額設定に改正されました。
しかし、出産する地域や妊娠の経緯、選択した病院や分娩方法、入院プランなどによっては、平均的な金額を大きく上回ることが考えられます。また、出産費用は年々上昇しており、将来的には引き上げられた出産育児一時金の金額を追い越すことが予想されます。
出産育児一時金では足りない場合を考えて、出産費用の補填に充てられる手元資金を用意しておくことが大切です。
出典
厚生労働省 出産育児一時金について
厚生労働省 医療保険制度改革について
厚生労働省 産科医療補償制度について
厚生労働省 出産育児一時金の支給額・支払方法について
全国健康保険協会
全国健康保険協会 出産に関する給付
公益社団法人日本産科婦人科学会 早産・切迫早産
一般社団法人 全国銀行協会 Q. 貯蓄がなく、出産費用が足りるかどうか不安です
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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