日本の年金は「2階建て」というけど、厚生年金に加入できない自営業者はどう年金を増やしたらいい…?
ファイナンシャルフィールド / 2023年5月5日 10時30分
日本の公的年金制度は2階建てといわれています。しかし、自営業者などが加入できのるは1階部分の国民年金で、2階部分に当たる厚生年金には加入できず、老後に受け取れる年金は老齢基礎年金のみとなるため、そこに不安を感じている方もいるようです。 今回は厚生年金に加入できない自営業者が、どのように将来の年金や老後資金を増やしていくべきなのか解説していきます。
前提として事業の継続を第一に考える
自営業者は老後資金だけではなく、事業にかかる資金も自身で確保していかなければなりません。老後資金を増やすために年金に準ずる資産形成に回したお金は、基本的に老後(受取年齢)まで動かせないものになります。
将来受給できる公的年金が老齢基礎年金のみだからといって、今の生活を犠牲にして老後のために備え過ぎると、例えば事業の業績が悪化したときに事業資金が不足してしまい、頭を抱えることにもなりかねません。
そのため自営業者の場合、まずは事業の継続を第一に考え、事業資金と生活費について余裕をもって確保しておき、それ以外の余剰資金で年金を増やすための対策を行うようにしましょう。
十分な事業資金や生活費を確保すると老後の備えに回すお金がないという場合は、まず売り上げと利益を増やすことから考えていくといいでしょう。
付加年金と国民年金基金を利用する
自営業者が年金を増やすに当たり、真っ先に検討すべきなのは付加年金と国民年金基金です。
付加年金とは、国民年金の第1号被保険者および任意加入者が、月額400円の付加保険料を納付することで、老齢基礎年金を受け取る際に「200円×保険料納付月数」の金額が上乗せされる制度です。
一方、国民年金基金は、自営業者など国民年金第1号被保険者が老齢基礎年金に上乗せするために加入できる公的な年金制度です。
国民年金基金の加入は口数制で、1口目は65歳から受け取る2種類の終身年金(保証期間の有無あり)、2口目以降は支給開始年齢と保証期間が異なる5種類の確定年金も選べます。また、掛け金は年金の種類と口数、加入時の年齢や性別に応じて変わるため、自分に合ったプランを柔軟に設計することができます。
なお、付加年金と国民年金基金の両方に同時加入することはできません。資金面に不安があれば、負担が少ない付加年金から始めていくのがおすすめです。
iDeCoやつみたてNISAを利用する
私的年金としてiDeCo(個人型確定拠出年金)への加入や、つみたてNISAを利用した投資による資産形成で、年金だけでは不足する老後資金を確保するという方法も有効です。
iDeCoは運用益が非課税となるほか、掛け金の拠出時と受取時にも税制優遇が受けられ、節税効果がある反面、原則60歳になるまで受け取ることができないので資金拘束がネックとなります。
一方、つみたてNISAでは運用益の非課税期間は最長20年間となりますが、いつでも現金化して事業資金や生活費などに充てることができます。
どちらも元本割れのリスクがありますが、長期間の運用により、そのリスクを下げて老後資金を増やせる可能性があります。資金拘束が不安であればつみたてNISA、資金拘束を承知の上で節税を重視するのであればiDeCoといった選択となるでしょう。
なお、2024年から新しいNISAが始まるものの、現行のつみたてNISAは別枠として20年間は非課税で運用を継続でき、2023年中に始めると実質的に非課税枠が大きくなります。
法人を設立する
個人事業主も法人化して会社役員となることで厚生年金に加入し、老後に受け取る年金を増やすことができます。
最近では2つの事業を並行し、一方を法人で、一方を個人事業主として行うケースも出てきています。そうすることで個人事業主としての活動を継続しながら厚生年金にも加入できるほか、社会保険料の削減やその他税の節税も行える場合があるからです。
ただし、こういった方法は税制上、個人と法人で行う事業を明確に分ける必要があるため注意してください。
自営業者も諸制度の利用で年金や老後資金を増やすことができる
自営業者は厚生年金に加入できませんが、別の方法によって将来の年金を増やしていくことができます。また、事業を法人化することで厚生年金に加入することも可能になります。
老後の生活について不安がある自営業者の方は、今回紹介した制度などの利用を検討し、自分に合った方法で年金や老後資金を増やしてください。
執筆者:柘植輝
行政書士
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