介護費として貯めていたお金があるのに「認知症」が理由で引き出せない! 家族はどうしたらよい?
ファイナンシャルフィールド / 2023年5月8日 1時20分
介護費用として貯めていたお金があるのにもかかわらず、認知症となってしまったために、お金を引き出すことができなくなっている人もいます。 そのような事態が生じた場合、家族はどのように対応しなければならないのでしょうか?
通帳と印鑑があっても引き出せない?
銀行の場合、通帳と印鑑があれば引き出すことができるから、問題ないと思う人もいるかもしれません。ただし、通帳の名義人である本人が認知症と診断されている場合には、本人の意志としての出金かどうかを確認することが難しいため、たとえ本人が家族とともに銀行に出向いたとしても、お金を引き出せない可能性があります。
銀行などにもよりますが、いつも本人に代わって特定の家族が店頭に出向いて手続きしているときには、通帳と印鑑があれば、引き出すことができる可能性もあります。ただし、この場合も好きなだけ引き出せるわけではありません。本人確認はもちろんのこと、一定の範囲内でのみ対応してくれることが多いようです。どれだけ担当している行員が、その家族のことを知っているのかもポイントになります。
上記のようなケースは、まれなケースであると捉え、基本的に認知症と診断されているときには、本人であってもお金は引き出せないと捉えておくとよいでしょう。
本人が認知症になってしまったときには、成年後見制度を利用する
成年後見制度には、あらかじめ元気なうちに本人が後見人を選ぶことができる「任意後見制度」と、認知症や加齢、あるいは障害があるなどでひとりで物事を決定することが心配な人が利用できる「法定後見制度」の2つがあります。
●任意後見制度
あらかじめ万が一のときに備えて任意に後見人を決めておく制度であり、任意後見契約は、公証人の作成する公正証書によって契約を結びます。自分の意志で、後見人を選ぶことができるのがメリットといえます。
●法定後見制度
任意後見制度では、自分で後見人を選ぶことができるのに対し、法定後見制度では、後見人は家庭裁判所によって成年後見人等が選ばれます。その理由としては、自分の意志で決めるのが難しい状態になっていると思われるからです。
つまり、認知症になってから利用できるのは、法定後見制度のみであり、銀行などの手続きも成年後見制度を利用することで、預金を引き出すことが可能になります。
法定後見制度には、認知症や障害などの程度や身体状況に応じて、「補助」「保佐」「後見」の3つの種類(類型)があります。
●補助
重要な手続き・契約の中で、ひとりで決めることが心配な人が利用でき、申立てにより裁判所が定める行為をするとき、後見人は同意や取り消し、代理ができます。
●補佐
重要な手続き・契約などをひとりで決めることが心配な人が利用でき、一定の法律行為や申立てにより裁判所が定める行為を行うとき、後見人は同意や取り消し、代理ができます。
●後見
多くの手続・契約などを、ひとりで決めることが難しい人が利用でき、原則としてすべての法律行為を行うとき、後見人は同意や取り消し、代理ができます。
家庭裁判所では、後見等の開始の審判をすると同時に成年後見人等を選任することになっています。家庭裁判所は、本人にとって最も適任だと思われる方を選任することになっています。
ただし、申立てのときに、本人に法律上または生活面での課題がある場合や本人の財産管理が複雑困難であるなどの事情が判明している場合には、弁護士、司法書士、社会福祉士のように、成年後見人等の職務や責任について専門的な知識を持っている専門職が成年後見人等に選任されることがあります。
また、誰を成年後見人等に選任するかは家庭裁判所の判断となり、不服申立てはできません。
費用はいくら?
法定後見開始の審判の申立てに必要な費用は、補助、補佐、後見ともに、申立手数料(収入印紙)800円、登記手数料(収入印紙)2600円、その他に連絡用の郵便切手、鑑定料がかかります。
鑑定料は、個々の事案によって異なってきますが、ほとんどの場合10万円以下です。任意後見制度を選択した場合は、任意後見人に対して、任意後見契約に基づいて報酬が支払われることになっています。
成年後見制度を利用したい場合は、住所地の自治体の窓口、法テラスなどで相談ができます。要介護認定を受けている場合には、地域包括支援センターでも情報を得られることがあります。まずは、相談することから始めてみましょう。
出典
厚生労働省 成年後見はやわかり ホームページ
執筆者:飯田道子
日本ファイナンシャル・プランナーズ協会
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