中小企業を支援するための国・自治体の補助金制度にはどんなものがある? 応募方法もあわせて解説
ファイナンシャルフィールド / 2023年5月12日 23時0分
中小企業を支援するために国や自治体が補助金制度を作っています。そもそも補助金とは何なのか、補助金を受けるにはどうしたらよいか、自社が受けられる補助金にどんなものがあるのか、みていきましょう。
1.そもそも補助金って何
1-1.給付金、助成金と補助金の違い
国や自治体から支給されるお金に給付金、助成金、補助金があります。給付金はコロナ禍で支給された持続化給付金(個人事業主100万円、中小法人200万円)や子育て世帯生活支援特別給付金などがあります。給付金はコロナ禍による売上減少や児童扶養手当受給など要件にあてはまると支給されるお金です。
助成金は厚生労働省が中心で、例えば雇用調整助成金やキャリアアップ助成金など、雇用を守る、就職しにくい人を就職させるなど条件を満たせば支給されるお金です。最近は最低賃金引上げのための生産性向上を支援する業務改善助成金が人気になっています。申請書の提出や審査などが必要ですが、条件を満たせば受給できます。
補助金は給付金や助成金と違い、応募して採択されないとお金は支給されません。つまり応募するだけではダメで審査に通らないと対象外になります。経済産業省が管轄するものが多く、応募には基本的に事業計画書が必要になります。この補助金について注意点をみていきましょう。
1-2.採択結果が出るまでに期間がかかる
補助金は年に数回、募集期間があります。募集が終わると期間中に提出された応募書類をまとめて審査しますが、審査員が応募書類を読んで審査しますので、時間がかかります。
補助金にもよりますが1ケ月以上は審査にかかります。また採択結果が出てもすぐに事業をはじめられるわけではありません。補助金によっては採択されてから確定した見積もりを事務局に再度提出し、事務局が精査して、OKがでたら事業開始となります。つまり補助金はOKが出るまで時間がかかるものと認識した方がよいでしょう。
事業を行うには時期というものがあります。このタイミングで事業をスタートすれば波にのれて事業が拡大しやすいのなら、補助金をあてにせず、考えた時期に実施すべきです。たまたまスタートするタイミングと補助金の採択結果が出るタイミングがうまくあいそうなら申請するとよいでしょう。
1-3.補助金応募の条件
各補助金のウェブサイトに公募要領が発表されています。けっこうなボリュームがあり、読むのも大変ですが、まずはダウンロードして、しっかり読みこみましょう。公募要領は回によって内容が微妙に変わっていますので、自分が応募を考えている回の公募要領をしっかり読んでください。
まずは応募条件にあうかどうかです。基本的に個人事業や中小企業が対象となりますが創業はダメなど、いろいろと条件があります。また事業を行っているNPOを補助金の対象にしている場合もあります。
補助金での設備や備品購入などを考えている場合、中古はだめで対象は新品だけです。ただし一部、中古が認められる場合がありますが、条件については細かく公募要領に記載されています。またパソコンや机などメルカリで売れるような汎用品は基本的にダメです。ケーキ店のショーケースや工業用ミシンなど事業で使うものでないと対象になりません。
ただし、これも補助金によっていろいろなケースがあり、コロナ禍に募集された市の補助金で、テレワークをすすめるためにパソコンやタブレットを補助対象としたものもありました。
これらは公募要領に細かく書かれていますので、しっかり読んで対象になるかどうか確認しましょう。どうしても判断がつかない場合は事務局に問い合わせをしますが、ウェブサイトに「よくある質問」が掲載されていますので、まず確認してください。
発注してから納入まで時間がかかる設備についてはメーカーに納入見通しを確認しておくことが重要です。補助金に採択されて工作機械を発注しましたが、半導体不足で工作機械の納期がどんどんずれ、結局、補助対象期間に納入が間に合わず、補助金を辞退したケースもあります。
1-4.補助金入金は、はるか先
補助金は基本的にすべての事業が終わらないと支給されません。ですので設備導入などは自前の資金で行います。事業終了後に報告書を作成し、領収書など必要書類を揃えて事務局に報告します。
報告書の内容を審査してから補助金の支給になりますので、事業開始してから一年ぐらいたってから補助金がようやく入金されることが日常茶飯事です。また必要書類が揃っていないなど不備があると事務局と何回もやり取りをしなければならず、ずるずると入金が遅くなってしまいます。
設備導入金額などが大きい場合、自己資金で間に合わなければ金融機関と事前に話をして、つなぎ融資を受けなければなりません。金融機関とは事前調整が必要となります。採択後に金融機関に融資を申し込んでも、断られて補助金を辞退した企業もあります。また印鑑を支店担当者に頼んで押してもらいましたが、実際に採択されて融資のお願いに支店へいったら断られて事業を断念したケースもあります。
補助金には補助率があり、通常は1/2~2/3というのが多く、1/2とは半分を自己資金で、もう半分は補助金という意味です。ただ補助金の入金は先なので補助金の分も含めて自分で先に払わなければなりません。
1-5.交付申請って何
ものづくり補助金など補助金の一部には交付申請という手続きがあります。補助金の応募書類作成時は、概算の見積もりで設備資金などを計上します。応募書類が採択されてから交付申請する時に詳細な見積もりをつけて申請します。これで金額が確定し、同時に補助金の額が確定します。
見積にあたっては設備の場合は相見積が基本です。国内に1社しが作っているところがない場合などは理由書を書いて申請しなければなりません。
見積してから、様々な条件によって変更になる時があります。導入を考えていた設備をメーカーが廃番にしてしまい、新型しかなくなったなど、変更が必要な場合があります。額が大きく変わる場合は事務局に確認しましょう。修正申告などを行う必要がでてきます。
1-6.報告書作りが大変
事業終了後に報告書を提出しないと補助金が受け取れません。この報告書作りがなかなか大変です。報告書には証拠書類が必要で、見積書、発注書、契約書、納品書、請求書、領収書、預金通帳の該当部分の写しが該当します。また日付が重要で、発注書の日付よりも先に納品書の日付がないようにチェックしなければなりません。
補助金によっては試作品開発を支援するために原材料費や人件費を対象品目にしている場合があります。原材料は別途、払出表が必要になります。いつ、だれが、原料をどれだけ持ち出して、結果、どれだけ残っているかの管理表です。
また人件費を補助金対象にした場合は日報が必要となり、事業に関わった時間だけが補助金の対象です。日報には時間ごとに作業内容を書かなければなりませんし、当然、払出表とも整合性が必要です。原料を持ち出したのなら、その日は日報に試作品開発などの記載がなければ整合性があいません。払出表や日報が出来上がれば、間違いないかチェックする必要もあり、かなりの管理コストがかかります。
ですので、設備導入や広報費など明確に証拠書類が揃えられるものを中心に補助金活用を考えた方がよいでしょう。また補助金によって期間は異なりますが、毎年、報告義務があります。
1-7.2つの補助金に申請できる
同時期に応募できそうな補助金募集がある場合、基本的にテーマや補助金で購入する対象が異なれば複数の補助金に応募できます。どちらかで採用してもらったらよいと同じテーマで2つの補助金に応募した場合は先に採択された方を優先し、もう一つは辞退することになります。
補助金に採択され、翌年にテーマを変えて再度、応募することもできます。ただ補助金の趣旨として、なるべくいろいろな企業に活用してもらうということがあるので、一度、採択された企業は若干、評価をさげた形で審査されます。ただし、しっかり事業計画書が書けていれば、複数回、採択されることもあります。
1-8.補助金の探し方
国が出している補助金以外に都道府県や市町村が募集している補助金があります。基本的に都道府県や市町村のホームページを検索するか、商工会・商工会議所がメルマガを発行しているのなら登録して情報を得ます。
中小企業基盤整備機構が運営するJ-net21というウェブサイトがあります。サイトのなかに「支援情報ヘッドライン 補助金、助成金」があり、ここから都道府県などを選択すると、県や市町村で募集している補助金を探すことができます。
2.補助金の応募書類を作成する
2-1.jGrantsで電子申請
補助金申請はjGrantsによる電子申請が基本です。jGrantsを使うには別途、gBizIDが必要になります。gBizID取得には印鑑証明書の郵送などが必要になり少し時間がかかるので余裕をもって取得しておきましょう。
昔、補助金を郵送で申請していた時代がありました。応募書類などのコピーを7部ほどとって、財務諸表などにインデックスをつけ段ボールで事務局に送るなど大変な作業でした。
今は電子申請で1部だけ送ればよく、ずいぶんと楽になりました。ただ24時間受付のため締切ギリギリに提出する事業者が多く、サーバーに負荷がかかってダウンする場合もあります。少し余裕をもって提出するようにしましょう。
2-2.審査項目を網羅する書き方
公募要領には審査項目が記載されています。応募書類を記載するコツとして、この審査項目を網羅することが重要です。例えば体制が審査項目にあがっていれば、体制という見出しを作って記載すれば、記載漏れの減点を防げます。
審査員には得意・不得意があり、自社のビジネスをよく知っているケースはまれです。ですので専門用語は分かりやすく記載し、また図解するなど分かりやすく記載しましょう。
応募書類がある程度、できあがったら近くの商工会・商工会議所や、よろず支援拠点などに予約して相談しましょう。客観的なアドバイス、いわゆる赤ペン先生をしてもらえます。また自社のビジネスにあまり詳しくない知り合いに見てもらって応募書類の内容が分かってもらえればOKです。
ものづくり補助金は製造業以外の応募も可能で、システム開発などをテーマにできます。審査員の多くはどうしても製造関係が多いため、エクセルやワードなら分かるという想定で応募書類を記載してください。
応募書類を作成するのは大変で時間もかかるためプロに作成を頼む場合があります。審査員にすると社長が汗をかいて記載したか、プロが書いたかは応募書類を見れば分かります。審査員の心理として、「社長さん、一生懸命書いたなあ」と思うと、しっかり書かれていなくても行間を読む形で審査します。
反対にプロが書いた書類は微に入り細を穿つではないですが、あらさがしをして審査します。ただプロなので審査項目を網羅する書き方ができている場合が多く、落ちにくいのが実態です。
2-3.イレギュラーに要注意
補助金の事業期間は1年ほどですが、めまぐるしく外部環境がかわるなか、想定していないことが起きる可能性があります。県の補助金の例ですが、採択されて設備導入し、新しい事業をはじめた矢先に社長が亡くなってしまいました。
実質的に社長の一人会社で別のお店をしている息子が相続人となりましたが、親父の事業をする余裕はなく、実際は廃業になります。親父が導入した設備が邪魔で、この設備を売ってなんとか負債を減らせないかという相談がありました。
結論として補助金で購入した設備ですので、減価償却の耐用年数は少なくとも保管する義務があり、結局は倉庫の空いている所に設備を保管してもらうことになりました。なかなか想定できませんが、いろいろなケースがあることだけ覚えておいてください。あわせて機械設備などは補助期間が終わっても保管義務がある点には注意してください。
3.補助金の種類
国から出ている代表的な補助金を4つみていきましょう。これらは全国共通です。補助金に関しては、都道府県や商工会議所・商工会などが行う説明会やセミナーに参加することをおすすめします。そこで、詳しい情報や申請方法、申請書類の作成方法などを学ぶことができます。
3-1.マーケティング費用なら持続化補助金
中小企業の85%以上は小規模事業者(個人事業主を含む)です。中小企業の実態を国会に報告するために、ずっと中小企業白書が作られていましたが2015年から中小企業白書とは別に小規模企業白書が作られるようになりました。あわせて小規模事業者の販路開拓を支援する小規模事業者持続化補助金がスタートします。
事業計画を作成したことがない小規模事業者に、少し苦労して事業計画書を作ってもらったらインセンティブとして補助金(上限50万円)を出す制度です。補助率も2/3と高く、自己資金は1/3ですみます。補助金は備品購入にも使えますが、多くがパンフレット作成や見本市出展などのマーケティング費用に使われています。
ネット広告などの広告宣伝費も対象で小規模企業にとって使いやすい補助金になっています。以前は全額をホームページ制作にも使えましたが、最近の募集要項では補助金交付申請額の1/4までです。例えば50万円の補助金のうち12.5万円までならホームページ制作に使えます。
事業計画書は商工会・商工会議所の経営指導員の支援を受けながら作成することを想定しています。会員でなくても大丈夫で、支援を受けたことを証明する事業支援計画書を事業計画書と一緒に出す必要がありますので商工会などには余裕をもって相談するようにしてください。内部稟議が必要なため、補助金締切の1週間ぐらい前を受付の締切にしています。
小規模事業者持続化補助金は補助額が50万円程度なので、採択後の交付申請がなく、応募書類作成時の見積が基本になります。ですので正確な見積を記載してください。
事業計画書は4枚~5枚程度で、今まで、どんなビジネスを行っていたかを記載します。飲食店なら来店客の属性、来客数。営業時間、メニュー表、店内写真などをつけて記載します。これで2~3枚になります。
次に、これから実施する計画で、マーケティングなど何にお金を使うのか、広報宣伝することで、どう集客につながり、儲かるのかなどを2枚ほどで記載します。採択率は募集回によって異なりますが60%強程度です。
通常枠以外に働き方改革や賃上げなど制度変更をうながすための枠があります。特に10月からインボイスがはじまるためインボイス特例があります。現在、免税事業者でインボイス制度への登録し、適格請求書発行事業者になると補助上限額が50万円上乗せされます。通常枠50万円+インボイス特例50万円で計100万円の補助金となります。
他にも特別枠として賃金引上げ枠、卒業枠、後継者支援枠、創業枠があり補助上限額が200万円になります。
問題になっているのが創業枠で特定創業支援等事業による支援を受け、創業すれば200万円が補助上限額となります。条件は公募締切時から起算して過去3ケ年の間に認定特定創業支援等事業の証明を受け、かつ過去3ケ年の間に開業した事業者であることです。特定創業支援等事業とは商工会や商工会議所を行っている創業塾などが該当します。
創業して1年目ほどの事業者で、通常なら50万円の補助金のところ創業枠を使うと200万円になります。そこで創業塾などに申込をし、特定創業支援の認定を受ければ200万円の備品を狙えます。創業塾で問題になっているのが認定を受けたいというだけの態度で参加する受講生です。
創業塾は大体、全4回ほどの講座でマーケティングや開業ノウハウなどを学び、事業計画作成など創業が少しでもうまくいくように支援する事業になっています。講師が事業計画書を作りましょうといっても無視する受講生がいて、他の受講生に悪影響を与えています。ですので特定創業支援認定目当ての参加者には別メニューを用意するなど主催者はいろいろと苦労して運営しているのが実態です。
3-2.設備投資ならものづくり補助金
設備投資なら、ものづくり・商業・サービス補助金があります。もともとは製造業が対象で試作開発を支援する目的でしたが、ものづくり・商業・サービス補助金と名称変更され全業種対応になっています。補助額は企業規模などによって異なりますが、大体500万~1000万円ぐらいが目安になります。製造業による設備導入が中心ですが、最近はシステム開発の申請が増えています。
事業計画書は最大10枚になっています。現在の事業内容やビジネスモデルを記載し、設備投資の場合は生産工程での技術的課題などを記載し、設備導入で生産性向上がどう実現するかを記載していきます。
システム開発は審査員になるべく分かる平易な言葉で記載するのがポイントです。設備が高額で金融機関からの借入を考えているのであれば事前に支店と話をし、金融機関から融資の協力をえていると記載しておいてください。
後半は設備導入などで、どれだけ売上や利益に貢献するかを記載します。マーケティングについてしっかり記載する必要があり、実現可能性が求められます。製造業の場合、技術的な記載はしっかり書かれていますが、どう販売するかはおざなりな書き方をしている場合があり、実現性が高いアクションプランが書かれていないと採択されにくくなります。
ものづくり補助金の最大なハードルは人件費要件です。従業員や役員に支払った給与、賞与、役員報酬などを合算した給与支給総額が1.5%以上/年にならないといけません。未達の場合は補助金返還となります。社長一人だけの会社なら役員報酬だけ上げれば条件をクリアできますが、規模が大きくなればなるほど大変です。
定年退職者の補充をしようと思ったが人手不足で採用できない場合は人件費減も想定できます。あるメーカーでは人件費増が1000万円と試算が出て、申請を断念した企業もあります。採択率は回によって異なりますが、大体、45~50%程度です。
小規模企業持続化補助金と同様に働き方改革や賃上げなど制度変更をうながすための枠があります。回復型賃上げ・雇用拡大枠、デジタル枠、グリーン枠、グローバル市場開拓枠があります。
デジタル枠はDXをすすめる製品やサービスの開発、デジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善が該当しますが、例えば歯科医が口腔内スキャナーの導入をデジタル枠で申請する場合、スキャンしたデジタルデータをCAMに連携してデジタルでモノづくりするのなら生産プロセスの改善といえますが、スキャナーをいれても後工程が今まで通りのアナログなら、単なる設備導入と同じになります。
この場合は通常枠で提出した方がよいでしょう。
3-3.パッケージ導入、ネットショップ作成ならIT導入補助金
IT導入補助金は他の補助金とはかなり仕組みが異なります。通常、補助金申請は事務局に対して行いますが、IT導入補助金はIT導入支援事業者経由で申請をします。パッケージなどを販売している法人なら、まずIT導入支援事業者の登録を行います。
次にパッケージをITツールとして登録します。ITツールは自社商品でも他から仕入れた商品でもかまいません。IT導入補助金を活用したい事業者は導入したいITツールを登録しているIT導入支援事業者に申込をします。昔からつきあいがある事務機屋さんがあるなら、まずIT導入支援事業者になってもらって、ITツールを登録してもらえば補助金を活用できます。
補助金の申請はとても簡単です。IT導入支援事業者から申請用のURLが送られてくるので、項目を入力していきますが、基本的にはプルダウンメニューから選ぶだけです。ただし入力しないといけない項目も数ケ所ありますので、そこはしっかり入力します。選ぶだけと言いながら整合性は必要です。
自社の課題で「コミュニケーションに課題がある」を選んでいるのに導入するITツールが会計ソフトなら整合性がありません。IT導入補助金では、この入力が応募書類となります。
導入できるのはパッケージなど買取もしくはサブスクモデルなら2年間の使用料が補助対象となります。一からシステムを構築するスクラッチ開発は対象外ですがネットショップ構築だけは対象になっています。ただし決められた事業期間内に作り上げる必要性があります。IT導入補助金にも採択後に報告義務があり、IT導入支援事業者を通じての報告になります。採択率は50~60%になります。
通常枠とデジタル化基盤導入枠の2つに大きく分かれています。通常枠はいわゆるパッケージ導入でソフトウェア購入費やクラウド利用料(最大2年分)、導入関連費が出ます。補助率は1/2で補助額は5万円~450万円です。つまり10万円以上するパッケージが対象になります。
デジタル化基盤導入枠はインボイス&キャッシュレス対応を支援するもので通常枠と同様にソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分)・導入関連費が出ます。補助率がややこしく50万円までは3/4で50万円を超えて350万円は2/3になります。
つまり100万円のパッケージを買うならなら50×3/4+50×2/3で約70万円が補助金となります。IT導入補助金はソフトが対象ですが、デジタル化基盤導入枠はハードウェアもOKです。PC・タブレットなどが補助率1/2、上限10万円までで補助されますが単体で買えるというわけではなくPOSレジとセットになったものが対象で、PCやタブレットはPOS端末になるものが対象です。
ソフトは会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフトが対象となります。会計ソフトは例えばクラウド会計なら年間1万円程度で2年間でも2万円しかならず、通常枠ですと補助額の下限を下回りますが、デジタル化基盤導入枠では下限がなく、そのまま申請できるようになっています。
セキュリティ対策推進枠というのがあり、サイバーセキュリティお助け隊の利用料2年間分が補助される仕組みがあります。2017年3月~6月にかけて大阪商工会議所、神戸大学、東京海上日動火災保険株式会社が中小企業へのサイバー攻撃の実態を調査したところ、協力した30社すべてで何者かからサイバー攻撃を受けていたことを示す不審な通信が記録されていました。
このうち少なくとも5社では悪意のあるサイトとの間でデータのやり取りが繰り返されていることが判明しました。なかなかセキュリティに費用がかけられない中小企業のために見守り、駆け付け、保険をワンパッケージにしたのがサイバーセキュリティお助け隊で、この費用をIT導入補助金で補助しています。
3-4.コロナ禍で登場した事業再構築補助金
コロナ禍の緊急事態宣言などで飲食店など既存事業が立ち行かなくなりました。そこで新しい事業の再構築が必要となりました。ポストコロナ・ウィズコロナ時代に向けて、経済社会の変化に対応するために中小企業等の事業再構築を支援する補助金です。新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、又は事業再編という思い切った事業再構築が対象になります。
最大の特徴は建設費が認められていることです。事務所、生産施設、加工施設、販売施設、検査施設、共同作業場、倉庫など、事業計画の実施に不可欠と認められる建物の建設・改修に要する経費が認められています。
また補助額も大きく、ものづくり補助金のような人件費要件がありません。もちろん設備導入も大丈夫なので、ものづくり補助金ではなく事業再構築補助金で申請している事業者も多くあります。ただし業態転換が必要なので既存の生産ラインに新しい設備を導入するではダメです。
例えば自動車部品を製造しており、培った精密加工技術を活用して、新たに医療用機器の製造を開始すれば新分野展開になります。応募書類は基本的に15ページ以内で、作成には労力がかかります。採択率は回によって異なりますが50%前後です。
まとめ
補助金申請には事業計画書作りが必須で、忙しい業務の合間に作るのは大変です。もちろん補助金に採択されたらラッキーですが、採択されなくても客観的に自社のビジネスを見つめなおすきっかけになりますので、ぜひ挑戦してみてください。
執筆者:水谷哲也
中小企業診断士、情報処理技術者(アプリケーション・エンジニア)、ITコーディネータ・インストラクター、販売士1級&登録講師
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