自立シニアの住宅選び 費用の確認と将来を見据えた対応を
ファイナンシャルフィールド / 2023年5月18日 1時0分
高齢になり、病弱で身のまわりのことが1人でできない、認知症が進んでしまった、などといった方は、介護が受けられる施設に入居することが1つの選択肢になります。 しかし最近では、80歳を過ぎても元気に活動するシニアの方も大勢いらっしゃいます。そこで、これまで住んでいた家では、何かと不便を感じるといった方もいるでしょう。こうした方々の住まいは、どうしたらよいでしょうか。
高齢者にとって快適な住まい
高齢になるにつれ、身体的な衰えが進み、これまで住んでいた家では暮らしにくくなることがあります。例えば、庭木の手入れまで手が回らない、自宅付近に坂が多く外出が苦痛、住んでいる建物にエレベーターがなく不便、家族の減少で住まいが広過ぎる、などの悩みをもっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
だからといって、介護付き老人ホームなどに入居するにはまだ早い、と考えている方の選択肢はいくつかあると思われます。
特に戸建てに住んでいる方で、今後住み続けることに執着することなく、売却してもよいと考えれば、資金的にも幅広い選択が可能になります。具体的には、(1) 住宅型有料老人ホームに入居する、(2) シニア向け分譲マンションを購入する、(3) サービス付き高齢者住宅に入居する、の3つが主な選択肢です。
【図表1】
どちらを選ぶにしても、それぞれかかる費用も異なりますので、予算面を検討すると同時に、将来は介護を受けることも想定して考えておく必要があります。
住宅型有料老人ホーム
この住宅型有料老人ホームは、主に民間企業などが経営している施設で、介護を前提とした公営の特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホームとは性格が異なります。
介護が前提でないため、外出などは自由にでき、趣味のサークルなどもある場合があります。食事は、原則として提供されますが、外のレストランなどで外食もできます。施設によっては、「介護付き」のスペースを併設しているところもあり、将来介護が必要になった際には、優先的に入居できるメリットがあります。医師の常駐は少ないですが、緊急時に医療機関と提携している施設はあります。
入居に際しては、「入居一時金」として、一般的に500万円から5000万円ほどが必要です。入居一時金がない施設もありますが、月々の管理費に家賃分が上乗せされる仕組みです。施設の充実度により、入居資金もかなり高額になります。
この入居一時金は、主に家賃の前払いに充当される代金で、入居者が施設の「利用権」を購入する仕組みです。この「利用権」は本人限りが前提のため、本人の死後に親族がこの権利を相続することはできません。食事を含む月々の経費は、一般的に15万円から35万円程度です(金額は一例です。具体的には施設等に問い合わせしてください)。
シニア向け分譲マンション
シニア向け分譲マンションを検討中の方もいるでしょう。購入金額が5000万円を超える物件もあり、決して安くはありません。戸建て住宅を処分して新たに購入する方が多いのが実情です。
あくまで自立した高齢者が対象のため、基本は通常の分譲マンションと変わりません。ただし健康面などの生活相談ができる、看護師の常駐など簡単な医療体制を保持している、といったところもあります。
この分譲マンションは、購入費が高額ですが「所有権」があるため、将来的には売却も可能ですし、子どもなどに相続させることも可能です。その意味では資産として高く評価されるため、一代限りの利用権を購入する住宅型有料老人ホームにはないメリットがあります。子どもなどが相続した場合、そのまま居住することも、賃貸住宅とすることもできます。
この分譲マンションは、バリアフリー対応が基本で、トレーニングジムやテニスコートなど運動施設、メニューが豊富なレストランといった充実した付帯設備があるところもあります。そのため、どうしても価格も高くなります。
地域による価格差もありますが、中古であれば3000万円程度ですが、新築では8000万円超となるものも見られます。月々の管理費は、一般的に5万円から10万円程度と比較的安く押さえられています。原則として、食事の提供はないため、月々の生活費はかかります(金額は一例です。具体的には管理会社等に問い合わせしてください)。
購入価格が高いため、かなりの余裕資金がある方や、これまで住んでいた住宅を売却した方でなければ購入できないかもしれません。また介護を前提にした施設ではないため、病気やケガで身体的に介護が必要になったときには、費用の面も含め、改めて入居可能な施設を見つけることになります。
サービス付き高齢者住宅
通称「サ・高・住」と呼ばれるサービス付き高齢者住宅のニーズもあります。自立した方の入居もできますが、同時に介護が必要な方も受け入れている施設が多くあります。
住宅型有料老人ホームやシニア向け分譲マンションに比べ、入居費用はかなり低額で済みます。あくまでこの施設は賃貸住宅のため、権利関係は「賃借権」となり、所有権や利用権はありません。
要介護者の入居施設と併設されている施設では、自由な日常生活の確保がやや難しくなります。入居費や月額費用は低額で済みますが、生活上の自由度はかなり制限されるかもしれません。
費用は、一般的に入居時に約20万円の一時金と、月々に食費を含め15万円から20万円ほどかかります。費用面はかなり安いのですが、居住スペースが狭い、付帯設備が不十分、といった満足度が低い施設も見受けられます(金額は一例です。具体的には施設等に問い合わせしてください)。
以上のように、3つの施設の特徴と費用面を把握したうえで、現在の住環境に問題がある方は、転居を選択されることも検討されるとよいでしょう。
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
監修:中嶋正廣
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。
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