「12月の離婚」は1月より「7万円」の損!? 年末に離婚すると「損」な理由を解説
ファイナンシャルフィールド / 2023年5月22日 11時0分
配偶者控除や扶養控除の適用可否は、その年の12月31日時点の状況で判定されます。つまり、1年を通じて配偶者や子と同一生計であった場合でも、12月に離婚した場合はこれらの控除が受けられなくなるため損をしてしまうのです。 本記事では、婚姻中の控除の仕組みや適用条件について解説します。
12月に離婚するとなぜ損する?
「12月に離婚すると損」と聞いたことがあるでしょうか。
その理由は、配偶者や子どもを扶養している場合、離婚した年の配偶者控除や扶養控除などが受けられなくなってしまうからです。配偶者控除や扶養控除の適用可否は、その年の12月31日時点の現況で判定されます。例えば、2023年12月に離婚した場合には、2023年分の控除が受けられなくなってしまうのです。
ただし、夫婦共働きで一定以上の所得がある場合には、そもそも配偶者を扶養に入れられないので配偶者控除の対象になりません。
配偶者控除の適用条件
配偶者控除の対象となる条件は、以下のすべてを満たすことが必要です。
(1)控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1000万円を超えないこと
(2)配偶者が、民法の規定による配偶者であること(内縁関係でない)
(3)配偶者が、納税者と生計を一にしていること
(4)配偶者の年間の合計所得金額が48万円以下であること(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
(5)配偶者が、青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払いを受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないこと
また、配偶者の年間の合計所得金額が48万円を超えている場合でも、133万円以下(給与のみの場合は給与収入が201万円以下)であれば、配偶者特別控除が利用できます。
配偶者控除か配偶者特別控除はいずれかが利用できますが、どちらも12月31日時点の現況で控除額などが判断されます。つまり、12月31日時点で上記の条件を満たしていれば、満額の控除を受けることが可能です。
扶養控除の適用条件
扶養控除の場合は配偶者控除とは異なり、納税者本人の所得制限はありません。扶養控除は、以下5つのすべてを満たす「控除対象扶養親族」がいる場合に限り、利用できます。
(1)配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)または、都道府県知事から養育を委託された児童や市町村長から養護を委託された老人
(2)納税者と生計を一にしていること
(3)年間の合計所得金額が48万円以下であること(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
(4)青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払いを受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないこと
(5)その年12月31日現在の年齢が16歳以上であること
扶養控除の条件に16歳以上とあるのは、15歳以下の子どもは児童手当の支給対象になるからです。控除対象扶養親族の年齢などによって異なりますが、扶養控除の金額は図表1のとおりです。
【図表1】
区分 | 控除額(1人につき) |
---|---|
一般の控除対象扶養親族(16歳以上19歳未満、23歳以上70歳未満) | 38万円 |
特定扶養親族(19歳以上23歳未満) | 63万円 |
同居以外の老人扶養親族(70歳以上) | 48万円 |
同居の老人扶養親族(70歳以上) | 58万円 |
国税庁 No.1180 扶養控除より筆者作成
控除対象扶養親族に該当する人が複数いる場合は、上乗せして控除が適用されます。また、離婚後も子どもと生計を一にする親は、一方に限り控除を受けることが可能です。
控除がなくなると税負担がいくら増える?
例えば、会社員と専業主婦の夫婦で、夫が配偶者控除を受けていた場合で考えてみましょう。
夫の課税所得金額(ここでは、給与収入から給与所得控除、社会保険料控除、基礎控除を差し引いた後の金額)が300万円、12月に離婚して配偶者控除がなくなった場合は、税負担がいくら増えるのでしょうか。配偶者控除による控除額は、所得税の課税所得金額から38万円、住民税の課税所得金額から33万円です。
国税庁の所得税の速算表を使って試算すると、次のようになります(復興特別所得税は考慮していません)。
所得税
配偶者控除がある場合 | (300万円-38万円)×10%-9万7500円=16万4500円 |
配偶者控除がない場合 | 300万円×10%-9万7500円=20万2500円 |
つまり、配偶者控除がなければ、20万2500円-16万4500円=3万8000円の所得税が増えます。
住民税
個人住民税のうち、所得に応じた負担である「所得割」の税率は一律10%です。そのため、配偶者控除がない場合に増える住民税は次のとおりです。
33万円×10%=3万3000円
以上の合計から分かるように、配偶者控除がなくなると約7万1000円の税負担が増えることになります。
婚姻中の医療費は控除の対象になる
医療費控除は、年間の医療費支出が10万円(総所得額が200万円未満の人は所得の5%)を超えた場合に、超えた金額の所得控除を受けられる制度です。納税者本人が支出した医療費だけでなく、生計を一にする家族がかかった医療費も合算して申告できます。
では、離婚した場合の医療費控除はどうなるのでしょうか。医療費控除は年の中途で離婚した場合、離婚前に支払った配偶者の医療費は医療費控除の対象となります。つまり、1年分すべてが合算できないわけでないので安心してください。
医療費控除を受けるには、給与所得者でも必ず確定申告をする必要があります。確定申告時に医療費の領収書を提出する必要はないとされていますが、同一の支出に対して元夫婦がどちらも控除の申請をすることはできません。婚姻中に医療費を支払った証明として、配偶者の分の医療費の領収書もしっかり保管しておくとよいでしょう。
まとめ
年の中途で離婚すると、配偶者控除や扶養控除が受けられず、納税者であった場合は税負担が増える可能性があります。実際に増える負担額は、その年の所得金額によって異なります。ただし、医療費控除は、年の中途であっても支払った分は控除の対象です。
本記事では税負担の観点から損得の基準をお伝えしましたが、実際にはそれぞれの事情を考慮して、離婚する時期を決めてはいかがでしょうか。
出典
国税庁 No.1191 配偶者控除
国税庁 No.1195 配偶者特別控除
国税庁 No.1180 扶養控除
内閣府 児童手当制度のご案内
国税庁 No.2260 所得税の税率
総務省 個人住民税
国税庁 医療費控除を受けられる方へ
国税庁 医療費控除の明細書
執筆者:齋藤たかひろ
2級ファイナンシャルプランナー
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