【FP相談・前編】ひとり息子ですが、遠方にあるお墓を管理したくありません。どうしたらよいでしょうか ~引き継ぐ際の手続きと費用~
ファイナンシャルフィールド / 2023年5月23日 4時40分
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親が元気な時は直接かかわる機会も少なく、あまり気にとめていないのが「お墓」ではないでしょうか。親が亡くなると、葬儀や事務手続きなどで時間的余裕がないなかで、直面するのが納骨、ひいては「お墓」です。 お墓が遠方にあり管理が難しい場合でも、相続しなければならないのでしょうか。今回は、遠方にお墓がある会社員Aさんの相談に関して、お墓の相続について前編・後編2回にわたり解説します。まず前編では、お墓の相続の考え方や引き継ぐ際の手続きと費用を見ていきましょう。
相談内容をご紹介します。
【図表1】
相談者 | 会社員Aさん(40代後半) ひとり息子で兄弟姉妹なし、妻子と都心部で自宅暮らし |
相談のきっかけ | 先日、実父が死亡。実母はすでに他界 |
問題 | 「お墓」が遠方で管理ができそうもない |
相談内容 | そもそもお墓は相続しなくてはならないのか、相続する場合にどのような手続きと費用がかかるのかなど、基本的なことから教えてほしい |
(筆者作成)
お墓は相続財産ではない
お墓は、民法によって定められている祭祀(さいし)財産の1つで、通常の財産とは異なります。そのため、相続財産とはみなされず、仮に兄弟姉妹がいた場合でも引き継ぐ人(祭祀継承者)はひとりです。
祭祀財産は、お墓の他にも仏壇・仏具などがあり、故人から継承(相続)したとしても相続税はかからないことが法律で定められています。また、継承後も固定資産税などの税金はかかりません。
仮に相続を放棄しても、お墓は相続財産ではないため、引き継ぐ人を必ず選定しなくてはなりません。
では、一般的にお墓を引き継ぐ人はどのように決めるのでしょうか。次に見ていきましょう。
祭祀継承者(お墓の相続人)は遺言や慣習できまる
法律では、お墓を相続する人についての決まりはありません。お墓の相続人を決めるには、次のような方法があります。
●故人の遺言
●地域や一家の慣習
●家庭裁判所の調停、または審判
結婚をして一家を出た子どもや、故人の親族や血のつながりがない姻族でもお墓の相続人になることができます。
相談者のケースでは、故人の遺言はなく、兄弟姉妹はいません。母はすでに他界していることから、親族や姻族も高齢化や他界していることが想定されます。そのため、他にお墓を引き継ぐ人がいなければ、一般的に相談者が祭祀継承者になる可能性が高いといえるでしょう。
祭祀継承者がいないと、お墓を管理する縁者がおらず無念仏になってしまいます。お墓の管理が行き届かないばかりか、最終的には霊園などの管理者が契約を解除し、墓地の整理が行われます。
その後一般的には、無念仏を祀る施設や無念墓に合祀(ごうし:複数の遺骨を骨壺から出しまとめて埋葬)されますが、合祀後に引き取り手が現れても、原則として遺骨を取り出すことはできません。
祭祀継承者になるメリット
親が亡くなるとすぐに葬儀や事務手続きなどに追われ、時間的にも精神的にも余裕がないことがほとんどです。そのため、お墓の墓じまいや改葬(移転)など、故人の意思などで前々から準備していない限り、にわかに計画するのは難しいこともあるでしょう。
そのため、まずは遠方のお墓に納骨しておき、その後のお墓の管理や供養の仕方は一連の手続きが終わってから、ゆっくり考えるというのも1つの方法です。
特に葬儀や四十九日の法要など出費がかさむ時期なので、納骨時に新たなお墓などを近隣で探して購入する手間や費用がかからないという経済的メリットが大きいのも事実です。
お墓の名義人本人の納骨は、新たな名義人を指定しなくてもできることがありますが、その後、遺骨をどこでどのように供養していきたいかを決めるまでに時間がかかるようであれば、いったんお墓を継承して名義を変更しておくと安心でしょう。
また、祭祀継承者は、供養の方法などを自分の意思で自由に決定できることもメリットです。
祭祀継承者の手続きと費用
祭祀継承するためには、お墓の所有者の名義変更手続きが必要です。提出書類は霊園やお墓の管理者によって異なりますが、事前に確認して不足のないように準備をするとよいでしょう。
<お墓の所有権を持つ人(故人)と継承者の続柄を証明する書類>
・故人の戸籍謄本・改正限戸籍謄本・除籍謄本 など
・継承者の戸籍謄本
・相続人の同意書 など
<継承者の本人確認書類>
・継承者の印鑑登録証明書、戸籍謄本・住民票
・葬祭費の領収書・会葬礼状(喪主が継承者の場合) など
<墓地が定める書類>
・名義変更申請書
・墓地の永代使用許可証・権利証 など
<墓地が定める費用>
・年間使用料(数千~数万円)
・名義変更手数料(数千~数万円)
・新たな永代使用許可証の郵送代金(郵便切手で支払う場合もあり) など
お墓を引き継げない場合は、返還の手続きを
お墓の継承は義務ではないので、遠方で管理ができない場合には、無念墓にしないためにも、霊園や墓地の管理者へ連絡をして、お墓を返還する方法があります。
いったんは遠方のお墓に納骨をする場合もしない場合も、その後管理ができないという結論に至れば返還の手続きが必要です。
後編では、遠方のお墓を返還後に供養を続けていくためには、どのような方法があり、それぞれの費用はどのくらいかかるのかを解説します。
まとめ
少子化、核家族化が進む現代では、実際に一族の墓を守っていく人が少なくなっているのも事実です。
特に遠方に住んでいる場合は、お墓をきちんと管理や供養ができずに悩む相談者のようなケースが多いでしょう。
お墓は相続財産ではなく祭祀財産です。継承の義務はありませんが、継承しても相続税や固定資産税はかからず、管理費用のみがかかります。管理する霊園やお墓によって費用は異なるため、直接問い合わせてみるとよいでしょう。
いったん納骨をしてから、その後遠方のお墓での供養を続けるかどうかをゆっくり考えることもできます。葬儀や手続きで時間的・精神的な余裕がない場合の選択肢として、覚えておくとよいでしょう。
執筆者:岩永真理
一級ファイナンシャル・プランニング技能士
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