空き家問題と対策。どのような取り組みがされているの?
ファイナンシャルフィールド / 2023年5月23日 7時0分
ひとり暮らしの親が亡くなったり、老人ホームに入り親の家に子どもが住まない場合、その家は空き家になってしまいます。子どもが遠くに住んでいたりして、適切な管理がされないとさまざまな問題が生じます。どのような問題が生じるのか、問題を解決するどのような取り組みがされているのかを紹介します。
空き家問題とは
総務省統計局は5年ごとに「住宅・土地統計調査」を行っています。最新の2018年の空き家戸数は849万戸で、総住宅に占める空き家の割合は13.6%と過去最高になっています。空き家の推移を見るとこれまで一貫して増加が続いており、1988年から2018年まで30年間で114.7%の増加となっています。
「住宅・土地統計調査」における空き家の分類には、「売却用の住宅」「賃貸用の住宅」「二次的住宅-別荘など」「その他の住宅」がありますが、問題となっているのは、「その他の住宅」で、長期間にわたって人が住んでおらず、そのまま放置される可能性が高い空き家です。2018年の「住宅・土地統計調査」では、「その他の住宅」は、空き家全体の41.1%を占めています。
【図表1】
(総務省統計局「平成30年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計 結果の概要(平成31年4月26日)」を参考に筆者作成)
それでは、「その他の住宅」が空き家のまま放置された状態だと、どのような問題が生じるのでしょうか。
家屋は、適切に管理しないと劣化がどんどん進みます。
「外壁材や屋根材の落下」「家屋の倒壊」など保安上危険な状態になったり、「ごみの不法投棄」「悪臭」「ねずみや野良猫、害虫などの繁殖」「雑草の繁茂」など衛生面や景観を悪化させたり、「不審火や放火」「不審者の出入り」など地域の防犯性が低下するおそれがあります(政府広報オンライン「年々増え続ける空き家!空き家にしないためのポイントは?」より一部引用)。
空き家対策特別措置法
空き家の発生による問題を防ぐために、空き家対策特別措置法があります。市町村長は、倒壊など保安上危険な恐れがあったり、著しく衛生上有害となる恐れがあったりする空き家を「特定空き家」と指定して除去、修繕、立木竹の伐採等の措置の助言または指導、勧告、命令をすることが可能で、所有者は命令に従わなければ50万円以下の過料を科される場合があります。
さらに、所有者に代わり建物除去等を行い、その費用を所有者に請求する「行政代執行」を行うことも可能です。
また、所有者が、自治体の改善指導・勧告に従わなければ、「固定資産税住宅用地の特例」の対象から除外することも可能になりました。
「固定資産税住宅用地の特例」とは、住宅用地の固定資産税・都市計画税について、下表のように固定資産税を最大6分の1、都市計画税を最大3分の1に減額できる制度で、これまでこの特例の存在が、空き家の取り壊し、更地化が進まない大きな要因の1つとなっていました。
【図表2】
(東京都主税局「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)」を参考に筆者作成)
改正案
全国で増え続ける空き家の問題について、国は新たな制度を導入する方針を固め、早ければ年内にも施行される見通しです。
空き家対策特別措置法改正案では、これまでの「特定空き家」に加えて「管理不全空き家」という新たな区分を設けます。放置すれば「特定空き家」になるおそれのある場合に指定され、窓が割れていたり雑草が生い茂っていたりしている物件を想定しています。
「管理不完全空き家」に指定された場合も、「特定空き家」と同様、状況が改善されなければ「固定資産税住宅用地の特例」の対象から除外されます。
また、改正案では「特定空き家」についても取り組みを強化し、通常の「行政代執行」は、所有者が撤去や除去の命令に従わない場合に適用されますが、緊急時の「行政代執行制度」を設けて、命令などを一部省略できるようにします。地震や台風などで家屋の損壊が進むなど緊急性が高い場合を想定しています。
その他の国や自治体の取り組み
「空き家対策特別措置法」の他にも、国や自治体において空き家問題に対してさまざまな取り組みがなされています。「空き家再生等推進事業」では、国と自治体双方が家屋の解体費用や改修費用の助成を行っています。
また、国土交通省のホームページ上には全国の空き家・空き地バンク総合情報ページがあり、空き家を売りたい人と買いたい人、貸したい人と借りたい人の仲介を担っています。
まとめ
空き家を放置して「特定空き家」や「管理不完全空き家」にしないためには、親が元気なうちに将来誰も住まなくなったときのことを考えて家族で話し合いをしておくことが大切です。そしていざ空き家になってしまった時は、放置せず、すみやかに空き家を「売る」か「貸す」か「利用する」か「更地にする」かを決定しましょう。
出典
総務省統計局 平成30年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計 結果の概要(平成31年4月26日)
東京都主税局 固定資産税・都市計画税(土地・家屋)
執筆者:篠原まなみ
AFP認定者、宅地建物取引士、管理業務主任者、第一種証券外務員、内部管理責任者
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