生命保険契約のチャネルは「ネット型」が主流に? 「ネット型」利用時の注意点とは?
ファイナンシャルフィールド / 2023年5月24日 4時10分
最近のインターネットやテレビCMなどのメディアでは、「パソコンやスマホで簡単見積」や「見積作成には、生年月日と性別だけ」など、保険契約や保険料の算定が簡単にできることをアピールするものが多く見られます。 実際に、保険会社のサイトでシミュレーションしてみると、うたい文句のとおり実に簡単に、ほんの数秒で月々の保険料を算定できます。ここでは、今後主流となるであろうネット型生命保険の特徴や、利用時の注意点などについて確認してみたいと思います。
保険の加入チャネルの変化
公益財団法人生命保険文化センターによる2021(令和3)年度「生命保険に関する全国実態調査」では、直近加入契約の加入チャネルとして最も多いのは「生命保険会社の営業職員」で55.9%となっています。
さらに「生命保険会社の窓口」や「保険代理店の窓口や営業職員」の割合も加えると実に74.4%を占めており、依然として「対面型」が加入チャネルの中で圧倒的に高くなっています。
その一方で、調査時点での「インターネットを通じて」の加入割合はわずか4.0%となっていますが、「今後、インターネットを通じて加入したい」の割合が17.4%となっていることを踏まえると、将来的な加入チャネルの主流は、営業職員などの「対面型」からインターネットで契約まで完結する「ネット型」にシフトしていくことが予想されます。
またネット型の場合、原則として、契約者自らが商品を選択し契約の締結まで行うこととなるため、保険に対するある程度の知識が必要となります。
調査では、「生命保険や個人年金保険について十分に知識があると思う」かとの問いに対して、67.2%の方が「ほとんど知識がない」と回答しています。ネット型が急激に普及していない理由の一つには、契約者自身の保険知識に対する不安があるのかもしれません。
ネット型生命保険のメリット・デメリット
ネット型生命保険を利用する場合のメリット・デメリットについて、一般的なものを挙げてみます。
【メリット】
(1)とにかく保険料が割安
保険契約者が割安な保険料で加入できることが、最大のメリットといえるでしょう。また保険会社側にとっても、保険販売に携わる人件費や営業コストを軽減できるメリットがあるといえるでしょう。そのため一部例外を除けば、同じ保障内容の対面型と比較すると保険料を安く設定することができます。
(2)保険商品がシンプルで分かりやすい
実際にネット保険会社のシミュレーションを利用してみると分かりますが、生年月日と性別を入力しただけで、ほんの数秒で月々の保険料が算出されます。
多くの場合、最初に表示される保険料は定期型の死亡保障のみの算定で、「安い!」との第一印象を与えるようになっています。「安い!」との第一印象を与えた後に、こんなに安いのならば特約などを付けてもう少し保障内容を充実させてもいいなとの思考にさせる必要があります。
いわゆる、トッピングを追加するような感覚です。そのため、お得で魅力的なトッピングをラインアップしつつも基本的な部分はシンプルという、契約者が分かりやすい構成となっています。
(3)いつでもどこでもシミュレーションできて、手続きもインターネットで完結できる
思い立った時に24時間いつでもパソコンやスマホでシミュレーションできること、わざわざ保険会社などに出向いたり、営業職員と会って対話したりといった煩わしさがないこともネット型のメリットといえるでしょう。さらに、保険の加入契約がインターネットだけで完結できる手軽さも大きなメリットといえます。
【デメリット】
(1)保険の種類や保障内容を契約者自ら決める必要がある
前述のとおり、多くの方が自らの保険の知識に不安を持ちつつも、保険の種類や特約、保障内容を自ら選択する必要があります。そのため保険会社では、サポートセンターによる相談体制の充実やチャット形式での質問の受付など、契約者の不安を解消できるサービスを工夫しています。
(2)商品や特約のラインアップが少ない
大手保険会社でもネット専用の別会社を設立するなどの動きがありますが、ネット型の保険商品や特約で選択可能なラインアップは対面型に比べ少ないのが現状です。これは、ネット型に求められる「シンプルで分かりやすい」というニーズの裏返しともいえます。
(3)保障内容を十分理解しないまま契約される場合がある
保険契約の際は商品の保障内容などの全てを理解した上で契約することが理想です。しかし契約者の理解度に関わらず、契約自体はインターネットで完結できてしまうのがネット型の特徴です。
保障内容が重複した契約をしてしまったり、いざ保険金や給付金の受取事由となった場合でも、細かな条件に合致しないため保険金などが受取できなくなる場合もあり得ます。
まとめ
生命保険という、長期にわたって一定の金額の保険料を負担する重要な契約について、専門家などの説明やアドバイスを受けた上で行いたいと思うことは、多くの方にとって至極当たり前のことです。
一方で、対面での説明など煩わしい手続きを排除して効率よく割安に契約したいとのニーズも十分に理解できます。基本的には契約者本人が、必要となる保障内容を十分に理解したうえで適宜ネット型や対面型を選択することが必要となります。
その前提には、保険に関する必要最低限の知識を有する努力も必要となるのかもしれません。
出典
公益財団法人生命保険文化センター 2021(令和3)年度「生命保険に関する全国実態調査」
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー
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