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給与が上がると各種控除も増える。5万円アップしたら手取りでいくら増える?「厚生年金保険料」はどう変わる?

ファイナンシャルフィールド / 2023年5月24日 9時40分

給与が上がると各種控除も増える。5万円アップしたら手取りでいくら増える?「厚生年金保険料」はどう変わる?

給与が上がれば、手取り収入は増えます。しかし、給与が上がった分だけ、手取り収入がそのまま増えるわけではありません。源泉徴収される金額も増えるからです。   本記事では、「給与が上がった場合、手取り収入がいくら増えるのか」について、給与が5万円上がった場合を例に挙げ、解説します。

手取り収入の計算方法

給与(手当含む総支給額)と手取り収入の関係は、一般的に以下の計算式で説明できます。この式から、給与が増えた分だけ手取り収入がそのまま増えるわけではないことが分かります。
 
手取り収入 = 給与 -(社会保険料 + 所得税 + 住民税)
 
手取り収入を計算するためには、給与のほかに「社会保険料」「所得税」「住民税」がいくらになるのかを把握する必要があります。以下で、それぞれの計算方法について解説します。
 

社会保険料の計算

給与から差し引かれる社会保険料は、以下のとおりです。
 

●健康保険料
●介護保険料
●厚生年金保険料
●雇用保険料

 
健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料は、「標準報酬月額」に保険料率を乗じて計算します。雇用保険料は、給与の額に保険料率を乗じて計算します。
 
令和5年度5月時点での、それぞれの保険料率(自己負担率)は、図表1のとおりです。
 
【図表1】
 

保険 保険料率
(自己負担率)
備考
健康保険 10%(5%) 「全国健康保険協会(東京都)」の保険料率
介護保険 1.82%(0.91%) 「全国健康保険協会」の保険料率
厚生年金保険 18.3%(9.15%)
雇用保険 15.5/1000(6/1000) 「一般の事業」の保険料率

 
※筆者作成
 

所得税の計算

所得税は、課税所得金額に所得税率を乗じて計算します。所得税率は超過累進税率であり、所得が多くなればなるほど税率も上がっていきます。詳細は図表2のとおりです。
 
【図表2】
 

 
出典:国税庁 「No.2260 所得税の税率」
 

住民税の計算

住民税には、「所得割」と「均等割」があります。所得割は、所得に応じて課税されるもので、課税所得金額に10%を乗じて計算します。均等割は、所得に関係なく定額で課税されるものです。
 

給与が5万円上がったときの手取り収入増加額

これまでの計算式を踏まえ、給与が5万円上がったときの手取り収入の増加額(概算)を求めます。ここで、手取り収入の計算式を再掲します。
 
手取り収入 = 給与 -(社会保険料 + 所得税 + 住民税)
 
この式により、手取り収入の増加額を算出できます。結論からいうと、給与が5万円上がったときの手取り収入の増加額は、2万9519円となります。具体的な計算は、以下のとおりです。
 

手取り収入の増加額
= 給与の増加額 -(社会保険料の増加額 + 所得税の増加額 + 住民税の増加額)
= 5万円 -(7830円 + 8434円 + 4217円)
= 2万9519円

 
ただし、これはあくまで概算です。実際の計算においては、次の理由により、本記事の計算結果と異なることがあります。
 

●社会保険料(健康保険、介護保険、厚生年金保険)の計算は「標準報酬月額(給与など報酬の月額を一定の幅で区分したもの)」を用いるため、単純に5万円の増加がそのまま社会保険料に反映されるわけではない
●健康保険料率・介護保険料は、保険者(運営主体)や都道府県によって異なる場合がある
●40歳未満の場合、介護保険料は徴収されない
●所得税率は、個人により異なる

 
それぞれの計算については、以下で解説をしますので、ぜひ参考にしてください。
 

社会保険料の増加額

社会保険料の増加額は、計算を単純にするために、給与の増加額5万円にそれぞれの自己負担率を乗じて計算します。すると、健康保険料は2500円、介護保険料は455円、厚生年金保険料は4575円、雇用保険料は300円、合計7830円増加する計算になります。
 

所得税の増加額

所得税の増加額は、課税所得金額の増加額を求めた上で、適用される所得税率を乗じて計算します。ここでは、適用される所得税率を「20%」と仮定します。
 
課税所得金額の増加額は、給与の増加額から社会保険料控除額の増加額を差し引いて計算します。すると、課税所得金額の増加額は、4万2170円(=5万円-7830円)となります。ここから、所得税の増加額は、8434円(4万2170円×20%)と計算できます。
 

住民税の増加額

住民税の増加額を計算するときは、所得割についてのみ考慮します。つまり、住民税の増加額は、課税所得金額の増加額を求めた上で、適用される所得税率(10%)を乗じて計算します。
 
課税所得金額の増加額は、所得税における課税所得金額の増加額の計算と基本的には同じです。したがって、ここでは、住民税における課税所得金額の増加額を4万2170円とします。ここから、住民税の増加額は、4217円(4万2170円×10%)と計算できます。
 
なお、住民税は前年度の所得に対して課税されるため、実際に住民税が増加するのは翌年からとなります。
 

まとめ

給与が上がれば、手取り収入は増えます。しかし、給与が上がった分だけ、手取り収入がそのまま増えるわけではありません。本記事では、給与が5万円上がった場合を例に挙げ、手取り収入がいくら増えるのかを試算しました。
 
注意が必要なのは、給与が上がったとき、その分だけ生活レベルを引き上げてしまうことです。例えば、給与が5万円上がったからといって、自由に使えるお金が5万円増えたわけではないということです。「使えるお金」は手取り収入を基本に考えることが、家計を考える上では重要です。
 

出典

全国健康保険協会 「令和5年度都道府県単位保険料率」

全国健康保険協会 「協会けんぽの介護保険料率について」

日本年金機構 「令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和5年度版)」

厚生労働省 「令和5年度雇用保険料率のご案内」

国税庁 「No.2260 所得税の税率」

東京都主税局 「個人住民税」

 
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

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