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【遺族年金】年金保険料を納めていたのに「遺族が受け取れない」 どんなケースがある?

ファイナンシャルフィールド / 2023年5月25日 3時20分

【遺族年金】年金保険料を納めていたのに「遺族が受け取れない」 どんなケースがある?

Q. 「自営業をしていた夫が亡くなりました。遺族年金ってあるんですよね?」 A. 「お子さんはいないのですか。その場合だと……」   公的年金といえば、まず65歳から受け取る「老齢年金」が頭に浮かびますが、万が一のときに保険のような役割をもつ「障害年金」や「遺族年金」もあります。   遺族年金は、亡くなった人に生計を維持されていた遺族が受け取ることができますが、一定の要件があります。一つ屋根の下で生活していた家族だったとしても、要件を満たしていなければ遺族年金は受け取れないのです。

遺族年金とは

公的年金の加入者や受給者が亡くなった場合、対象の遺族に支給されるのが遺族年金です。遺族年金も老齢年金と同様に「遺族基礎年金(国民年金)」と「遺族厚生年金(厚生年金)」の2階建ての構造となっており、受給要件などには大きな違いがあります。
 

1. 遺族基礎年金(国民年金)

遺族基礎年金は、亡くなった人に生計を維持されていた子のいる配偶者、または子に支給されます。また、亡くなった人が老齢基礎年金を受け取っていない場合には、遺族に寡婦年金や死亡一時金が支払われることがあります。
 

2. 遺族厚生年金(厚生年金)

亡くなった人に厚生年金の被保険者期間がある場合、生計を維持されていた対象の遺族に遺族厚生年金が支給されます。寡婦(夫と死別した後、再婚していない人)に対しては、中高齢寡婦加算や経過的寡婦加算が支給されることもあります。
 

 
※筆者作成
 

遺族基礎年金の受給要件や受給対象者と年金額

まずは遺族基礎年金の受給要件や受給対象の遺族、年金額を確認していきます。
 
1. 受給要件
 
以下のいずれかの要件に該当している人が死亡したときに、遺族に遺族基礎年金が支給されます。
 

(1)国民年金の被保険者
(2)国内に住所がある60歳以上65歳未満の国民年金の被保険者であった人
(3)老齢基礎年金の受給権者
(4)老齢基礎年金の受給資格を満たした人

 
(1)(2)は死亡日を含む月の前々月までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間(免除期間を含む)が3分の2以上あることが必要です。なお、令和8年3月末までは65歳未満で、直近1年間に保険料の未納期間がない場合は保険料納付要件を満たすことになっています。
 
また、(3)(4)に関しては、保険料納付済期間、免除期間、合算対象期間の合計が25年以上ある人となります。
 
2. 受給できる遺族の範囲

遺族基礎年金を受給できるのは、死亡した人に生計を維持されていた以下の遺族です。
 

(1)子のある配偶者
(2)子(18歳到達年度の3月31日までの間にある子。20歳未満で障害等級1級、2級の障害の状態にある子)

 
冒頭のケースでは夫婦の間に子がいないため、亡くなった人の配偶者は遺族基礎年金を受け取ることができません。
 
3. 年金額(令和5年4月分から)

遺族基礎年金の基本年金額は、年額79万5000円(68歳以上で対象となる配偶者が受け取るときは79万2600円)で、子の数に応じて2人目までは1人につき22万8700円、3人目以降は1人につき7万6200円が加算されます。
 
例)
・67歳以下で子が2人いる配偶者が受け取る場合:79万5000円+(22万8700円×2)=125万2400円
・子2人が受け取る場合:79万5000円+22万8700円=102万3700円

 

寡婦年金

国民年金第1号被保険者で、保険料納付済期間と免除期間の合計が10年以上ある夫が老齢基礎年金を受け取る前に亡くなった場合、妻が60歳から65歳になるまで寡婦年金を受け取れます。受給できる妻の要件は以下になります。
 

(1)夫の死亡当時、生計を維持されていた
(2)夫の死亡当時、婚姻関係(事実婚を含む)が10年以上継続している
(3)夫の死亡当時、65歳未満
(4)老齢基礎年金を受給していない

 
寡婦年金の金額は、夫の死亡日前日までの被保険者期間から算出した老齢基礎年金の4分の3です。
 

死亡一時金

亡くなった人の死亡日前日で国民年金の保険料納付済期間が36月以上あり、障害基礎年金、老齢基礎年金のいずれも受け取っていなかった場合、または遺族基礎年金を受け取れる遺族がいない場合に、生計同一関係にあった遺族は死亡一時金を受け取ることができます。
 
遺族の範囲と順位は(1)配偶者、(2)子、(3)父母、(4)孫、(5)祖父母、(6)兄弟姉妹で、高順位の人が受給権者になります。死亡一時金の金額は、保険料納付月数により12万円~32万円です。
 
寡婦年金と死亡一時金の両方の受給要件を満たす場合は、どちらかを選択します。寡婦年金の方が金額が多くなることが多いと思いますが、60歳になるまで受け取れません。また、死亡一時金を受ける権利は死亡日の翌日から2年で時効となります。
 
なお、冒頭のケースでも要件を満たしていれば、亡くなった人の配偶者は寡婦年金または死亡一時金を受け取ることができます。
 

遺族厚生年金の受給要件や受給対象者と年金額

遺族厚生年金は、受給対象の遺族が遺族基礎年金に上乗せして受け取れます。受給要件や受給できる遺族の範囲などは以下のとおりです。
 
1. 受給要件
死亡した人が以下のいずれかの要件に該当している場合、遺族には遺族厚生年金が支給されます。
 

(1)厚生年金被保険者
(2)被保険者期間中に初診日がある傷病により、初診日から5年以内に死亡
(3)障害等級1級、2級の障害厚生年金の受給権者
(4)老齢厚生年金の受給権者
(5)老齢厚生年金の受給資格を満たした人

 
保険料納付要件について、上記(1)(2)は前述した遺族基礎年金の(1)(2)、また(4)(5)に関しては遺族基礎年金の(3)(4)の要件と同様です。
 
2. 受給できる遺族の範囲
(1)妻、(2)子、(3)夫、(3)父母、(5)孫、(6)祖父母で、高順位の人が受給権者になります。
 
なお、子のいない30歳未満の妻の場合は5年間の有期給付です。また、子の要件は遺族基礎年金と同じで、夫、父母、祖父母は55歳以上の人に限ります。
 
遺族基礎年金を受給できる人は遺族厚生年金を合わせて受給できるほか、遺族基礎年金よりも受給対象となる遺族の範囲が広くなっています。
 
3. 年金額
遺族厚生年金の年金額は、死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。ただし、被保険者期間が300月に満たない場合は、300月とみなして年金額を計算します。
 

遺族厚生年金の寡婦加算

1. 中高齢寡婦加算
遺族厚生年金の受給権者である妻が以下のいずれかの要件に該当する場合、40歳から65歳になるまでの間、年額59万6300円が加算されます。
 

(1)夫の死亡時に40歳以上65歳未満であり、生計を同一にしている子がいない
(2)遺族厚生年金と遺族基礎年金を受給していた妻が、子の年齢要件によって遺族基礎年金を受けられなくなった

 
2. 経過的寡婦加算
妻が以下のいずれかに該当する場合には、生年月日により定められた金額が遺族厚生年金に加算されます。その金額は、昭和31年4月1日以前生まれ(昭和61年4月1日で30歳以上)の人が60歳まで国民年金に加入していた場合の老齢基礎年金と合わせると、中高齢寡婦加算の額となるように設定されています。
 

(1)昭和31年4月1日以前生まれの妻に、65歳以上で遺族厚生年金の受給権が発生した
(2)中高齢寡婦加算がされていた昭和31年4月1日以前生まれの妻が65歳に達した

 
経過的寡婦加算の金額(生年月日による一例)は以下のとおりです。

昭和28年4月2日~昭和29年4月1日生まれ:5万9495円
昭和29年4月2日~昭和30年4月1日生まれ:3万9680円
昭和30年4月2日~昭和31年4月1日生まれ:1万9865円

 

遺族年金は残された家族の生活費の補てんに必要

家計を支えていた人が亡くなると、その収入を補てんする金銭が必要になります。万が一に備えて生命保険への加入などを検討する場合には、遺族年金を考慮して適正なものとしましょう。
 
また、遺族年金でも細かい受給要件のほか、支給事由が異なる年金との選択、併給する場合の条件などもありますので、さらに詳しい内容については日本年金機構のホームページでご確認ください。
 

出典

日本年金機構 遺族年金

日本年金機構 年金給付の経過措置一覧表

 
執筆者:宿輪德幸
CFP(R)認定者、行政書士

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