孫のために「1000万円」を準備しています。どう贈与するのがよいでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2023年5月26日 10時20分
「孫は目に入れても痛くないほどかわいい」という人もいるでしょう。孫のために金銭面で支援してあげたいと思う人は多いと思います。ただし、支援する方法次第で、受け取る側である受贈者にかかる贈与税が変わってくる点に注意が必要です。
贈与税の負担がない3つの方法
仮に一括して1000万円の贈与をする場合、贈与税は図表1を基に計算すると、231万円もしくは177万円かかります(どちらの税率を使用するかは受贈者が未成年かどうかによります)。
<1000万円贈与した場合の贈与税>
(1000万円-110万円(基礎控除額))×40%-125万円=231万円
(1000万円-110万円(基礎控除額))×30%-90万円=177万円
図表1
贈与財産 (基礎控除後の課税価格) |
税率 | 控除額 | 備考 |
---|---|---|---|
600万円超 1000万円以下 | 40% | 125万円 | 一般税率 ※孫が未成年の場合 |
30% | 90万円 | 特例税率 ※孫が18歳以上の場合 |
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)より筆者作成
どちらにしても、思ったよりも贈与税は多いと感じるのではないでしょうか。贈与される側のお孫さんに負担をかけない方法としては、以下の3点が考えられます。
●年間の贈与を暦年課税の限度内にする
●教育資金の一括贈与にかかる贈与税非課税措置を利用する
●必要になったタイミングで贈与する
年間の贈与を暦年課税の限度内にする
贈与を受けたときには、受贈者ごとに年間110万円の基礎控除があります。そのため、年間110万円までであれば贈与税の負担なく金銭面での支援が可能です(申告も不要です)。
教育資金の一括贈与にかかる贈与税非課税措置
教育資金の一括贈与にかかる贈与税非課税措置とは、簡単に説明すると金融機関などと契約をして1500万円までの贈与税が非課税になるという制度です。比較的大きな金額を一括贈与しても非課税にできる反面、教育資金としてしか利用できない、受贈者側の所得制限がある、手続きが必要であるといった手間や制限もあります。
この贈与税非課税措置は2023年3月31日までの特例措置でしたが、「令和5年度の税制改正」により、さらに3年間期限が延長されました。
必要になったタイミングで贈与する
国税庁によれば、「直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち一定の要件を満たすものとして、贈与税の課税価格に算入されなかったもの」は、贈与税がかからないものとされています。
そのため、必要になった都度贈与を行えば贈与税はかかりません。この場合、銀行振込みで資金を受け渡すなど、「いつ」「いくら」贈与したかを後から確認できるように工夫をしておくと、調査があったときにも安心です。
贈与の方法ごとのメリットとデメリット
ここで紹介した方法は、それぞれメリットやデメリットがあるので、どれがよいか検討して贈与を行いましょう。もちろん複数の方法を組み合わせて贈与することも可能です。
図表2
贈与の方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
暦年課税限度内の贈与 | ・手間が少ない ・利用目的は自由 |
・年間上限は110万円 ・他の贈与者がいた場合、難しくなる |
教育資金の非課税措置 | ・一括して贈与可能 ・非課税金額が大きい |
・利用は教育資金のみ ・手間や年齢や所得の制限がある |
都度贈与 | ・手間が少ない ・金額に制限はない(社会通念上で問題がない範囲) |
・必要になるタイミングでしか贈与できない ・贈与する前に贈与者が死亡するリスクもある |
国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合を基に筆者作成
また、贈与する際の注意点として、贈与者(贈与をする人)が死亡して相続や遺贈が発生した場合、贈与された財産を相続税の課税価格に加算しなくてはなりません。これは生前贈与加算と呼ばれています。
2023年度の税制改正大綱により、2024年1月1日以降に受けた贈与について生前贈与加算の期間が3年から7年に延長されました。生前贈与加算は暦年課税で110万円まで贈与税が非課税となっていても加算の対象となります(暦年課税の場合、延長された4年間に贈与された金額のうち総額100万円までは控除されます)。
贈与する側の万一のリスクを考えると、贈与の方法だけでなく、いつから贈与を開始するのかということも計画的に考えておくとよいでしょう。
出典
国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
国税庁 No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税
財務省 2 資産課税 資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築等
財務省 令和5年度税制改正の大綱の概要
執筆者:御手洗康之
AFP、FP2級、簿記2級
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