自営業者の配偶者でも遺族基礎年金を受け取れないことがある? ほかに補う方法は?
ファイナンシャルフィールド / 2023年5月26日 5時0分
自営業者である夫(妻)が亡くなった場合、遺族年金を生活費に充てたいと考える配偶者もいるのではないでしょうか。「遺族基礎年金」は、死亡した国民年金の被保険者に生計を維持された遺族に支給され、そのなかでも受け取れる人の優先順位が定められています。受給要件に該当しない場合、遺族基礎年金を受け取れません。 本記事では、遺族基礎年金の受給要件をはじめ、遺族基礎年金を補う方法について解説します。
遺族基礎年金の受給要件
「遺族基礎年金」とは、国民年金保険の被保険者が死亡した際、遺族に支給される年金です。死亡した被保険者によって生計を維持されていた、一定の要件を満たす遺族が受け取れます。遺族基礎年金の受給要件と受け取れる遺族は、以下のとおりです。
【遺族基礎年金の受給要件】
●国民年金保険の被保険者期間中に死亡した
●国民年金保険の被保険者であった60歳以上65歳未満の人で、日本国内に住所を有していた人が死亡した
●老齢基礎年金の受給権者が死亡した(保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間の合算期間が25年以上)
●老齢基礎年金の受給資格を満たした人が死亡した(保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間の合算期間が25年以上)
【遺族基礎年金を受け取れる遺族】
死亡した国民年金の被保険者に生計を維持された遺族にかぎります。
●子のある配偶者
●子(18歳になった年度の3月31日までにある子、20歳未満で障害年金の障害等級1級・2級の状態にある子)
子のある配偶者が遺族基礎年金を受給している場合、子の分も合わせて受け取れます。子のある配偶者が亡くなっている場合は、要件を満たす子が遺族基礎年金を受け取れます。死亡した国民年金保険の被保険者の配偶者に子がいない場合は、遺族基礎年金の受取対象にならないので注意してください。
遺族年金を補うための方法とは?
遺族基礎年金は、自営業者の配偶者であっても一定の要件を満たさない場合は受け取れません。そこで、遺族基礎年金を受け取れない場合、以下の方法で補うことを検討してみるとよいでしょう。
●死亡一時金や寡婦年金
●国民年金基金の遺族一時金
●小規模企業共済の共済金
以下で、方法別に内容を解説します。「遺族基礎年金を受け取れなくて生活に困る」ということを避けるためにも、チェックしておいてください。
死亡一時金や寡婦年金
一定の要件を満たす国民年金保険第1号被保険者の子がいない配偶者に対して、死亡一時金や寡婦年金が支給されます。
【死亡一時金】
死亡日の前日に国民年金の第1号被保険者としての保険料納付月数が36ヶ月以上ある、老齢基礎年金や障害基礎年金を受けられずに死亡した場合、生計同一関係にあった遺族(1.配偶者、2.子、3.父母、4.孫、5.祖父母、6.兄弟姉妹のなかで優先順位の高い遺族)が死亡一時金を受け取れます。
死亡一時金は毎月支給されるのではなく、保険料納付月数に応じて12~32万円が支給されます。さらに月額400円の付加保険料の納付月数が36ヶ月以上ある場合、8500円が加算対象です。
【寡婦年金】
寡婦年金は、死亡日の前日に国民年金保険の第1号被保険者で、保険料を納めた期間または保険料の免除期間が10年以上ある夫が死亡した際に、その妻(10年以上継続して婚姻関係にある、死亡した夫に生計を維持されていた妻)が60~65歳までの間に支給される年金です。
ただし、亡くなった夫が、老齢基礎年金や障害基礎年金を受けている場合、妻が老齢基礎年金を繰上げて受け取っている場合は支給対象になりません。
国民年金基金の遺族一時金
国民年金基金も死亡した被保険者と生計同一関係にあった遺族(1.配偶者、2.子、3.父母、4.孫、5.祖父母、6.兄弟姉妹のなかで優先順位の高い遺族)に対して、遺族一時金が支給されます。その際に支給される金額は、加入時の年齢や死亡するまでの納付期間などに応じて決まります。
国民年金基金とは、自営業者などの国民年金保険の第1号被保険者が任意に掛金を払い込んで、将来的に受け取れる年金を増やせる制度です。加入時に掛金が確定し、払込期間中は口数を変更しないかぎりは変わりません。厚生年金被保険者との年金額の差を解消するために創設された制度で、国民年金に上乗せした額を65歳から一生受け取れます。
小規模企業共済の共済金
小規模企業共済の契約者が死亡した場合、遺族の請求によって共済金(解約金)を受け取れます。ただし、共済金を受け取るには、小規模企業共済の掛金納付月数が6ヶ月以上必要です。
共済金を受け取れる遺族の範囲と優先順位は図表1のとおりです。
【図表1】
優先順位 | 死亡した契約者との続柄 | 備考 |
---|---|---|
1 | 配偶者 | 内縁関係者も含まれる |
2 | 子 | 共済契約者が死亡した当時、主として共済加入者の収入によって生計を維持している |
3 | 父母 | |
4 | 孫 | |
5 | 祖父母 | |
6 | 兄弟姉妹 | |
7 | その他の親族 | |
8 | 子 | 共済契約者が死亡した当時、主として共済加入者の収入によって生計を維持していない |
9 | 父母 | |
10 | 孫 | |
11 | 祖父母 | |
12 | 兄弟姉妹 | |
13 | ひ孫 | |
14 | 甥・姪 |
中小機構「小規模企業共済 共済金(解約手当金)について」より筆者作成
万が一に備えて遺族年金を補う方法を確認しておこう
自営業者である配偶者が死亡した際に遺族基礎年金を受け取れるのは、一定の要件に該当する子のある妻、子のみです。ただし、国民年金被保険者の配偶者に子がいない場合、遺族基礎年金の支給対象になりません。
配偶者の万一のときのために、国民年金の一時金や寡婦年金をはじめ、国民年金基金の遺族一時金や小規模共済の共済金といった、遺族基礎年金以外で補う方法を確認しておくとよいでしょう。
出典
日本年金機構 遺族年金ガイド 令和5年度版
国民年金基金 遺族一時金
中小機構 小規模企業共済 共済金(解約手当金)について
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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