【年金額】受け取りを我慢すれば最大84%アップ! 繰下げ受給を利用している人は何割?
ファイナンシャルフィールド / 2023年5月28日 9時10分
年金の受け取りを遅らせるほど年金の受給額が大きくアップする「繰下げ受給」の制度を知って「お得な制度だから、きっとみんな利用しているだろう」と思っている人もいるのではないでしょうか。実際には、繰下げ受給の利用者はあまり多くないのが現状です。 本記事では、厚生労働省の調査の結果から、繰下げ受給を利用している人の割合を紹介します。また、繰下げ受給の仕組みやメリット・デメリットも解説しますので、自身が制度を利用するかどうかの検討に役立ててください。
老齢年金の繰下げ受給の仕組み
老齢年金の繰下げ受給とは、本来65歳から始まる老齢年金の受給を66~75歳まで(昭和27年4月1日以前生まれは70歳まで)繰下げて開始できる制度です。繰下げ受給を選択すると、繰下げた期間(月数)に応じて一定の割合が増額された年金を一生受け取れます。
繰下げ受給による老齢年金の増額率は以下の式で算出され、最大で84%(昭和27年4月1日以前生まれは42%)です。
繰下げ受給による年金の増額率=0.7%×65歳の誕生日前日が含まれる月から繰下げ受給開始月の前月までの月数
例えば、以下のように計算できます。
【66歳0ヶ月まで繰下げる場合】
0.7%×12ヶ月=8.4%
【70歳0ヶ月まで繰下げる場合】
0.7%×60ヶ月=42%
【74歳11ヶ月まで繰下げる場合】
0.7%×119ヶ月=83.3%
繰下げ受給の利用者はわずか1%強
老齢年金の受給権者のうち、繰下げ受給を選択している人はどのくらいいるのでしょうか。
厚生労働省が公開している「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、平成29年度から令和3年度の繰下げ受給率の推移は、図表1のとおりです。
【図表1】
年度 | 厚生年金 | 国民年金 |
---|---|---|
平成29年度 | 0.7% | 1.5% |
平成30年度 | 0.7% | 1.5% |
令和元年度 | 0.8% | 1.6% |
令和2年度 | 1.0% | 1.7% |
令和3年度 | 1.2% | 1.8% |
厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」より筆者作成
傾向としては年々選択者が増加していますが、令和3年度の時点で、厚生年金の受給権者では1.2%、国民年金の受給権者では1.8%と低い数字にとどまっています。
老齢年金を繰下げ受給するメリット・デメリット
図表1から利用者の割合が低いことが分かるように、老齢年金の繰下げ受給制度は、手放しで飛び付いてよい誰しもがメリットを享受できる制度ではありません。自身の老齢年金を繰下げ受給するかどうかを検討するには、メリット・デメリットの両面を十分に理解することが重要です。
本項で、繰下げ受給の主なメリットとデメリットを整理してみましょう。
メリット
繰下げ受給を選択する最大のメリットは、年金の受給額を増やせる点です。最大で84%にもなる増額率は、老後の資金計画を考えたときに大きな魅力となるでしょう。また、一度増額率が適用されると、生涯増額された年金を受け取れます。
特に、年金の受給開始を遅らせても生活に支障がないだけの手元資金や収入がある場合には、繰下げ受給で先々の収入を増やすことが、有力な選択肢となるでしょう。
デメリット
繰下げ受給のデメリットは、繰下げ受給を開始してまもなく、または繰下げ受給を開始する前に死亡するリスクがある点です。
繰下げ受給を選択した時点では健康状態などに問題がなくても、先のことは誰にも分かりません。受給を開始してすぐ、もしくは受給前に亡くなったりすると、増額どころか年金受給額は本来の額よりずっと少ないか、最悪ゼロになってしまいます。
また、受給を開始したときに加齢で心身が衰えていれば、自分の楽しみにお金を使うのが難しい可能性もあるでしょう。つまり、ある意味一か八かという要素があるのが、繰下げ受給制度なのです。
また、繰下げ待機期間中は、加給年金額が受け取れない点にも注意しましょう。加給年金とは、厚生年金被保険者期間が20年以上の人が65歳に到達した時点で65歳未満の配偶者や18歳までの子または障害の状態にある20歳未満の子がいる場合に年金に上乗せされるお金です。加給年金を受け取れる見込みがある人は、繰下げ受給による増額と加給年金額のどちらが多いかを比較して、損のないほうをする必要があります。
老齢年金の繰下げ受給はよく検討して決めよう!
老齢年金の繰下げ受給を選択している人は、年金の受給権者全体の2%未満にとどまっています。
「年金の受給を遅らせると年金が増える」と聞くと大変お得な制度にみえますが、実際には、想定外に早く亡くなって損をするケースや、受給を開始する頃には心身の状態が衰えてしまい、楽しみのためにお金を使えないケースもあります。
繰下げ受給を選択して後悔しないように、メリット・デメリットの両面からよく検討することが大切です。
出典
厚生労働省 厚生年金保険・国民年金事業の概況
日本年金機構 年金の繰下げ受給
日本年金機構 加給年金額と振替加算
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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