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2500万円までは贈与税はかからない? 相続時精算課税制度はどんな制度?

ファイナンシャルフィールド / 2023年5月27日 4時20分

2500万円までは贈与税はかからない? 相続時精算課税制度はどんな制度?

家族を含む第三者に対して高額な金銭や物品を無償で譲渡(贈与)すると、受け取った人に贈与税がかかる可能性があります。しかし、相続時精算課税制度を利用すると、自分の子どもや孫に高額な金額を贈与しても税金が優遇されます。   本記事では相続時課税制度でどれくらい税金が優遇されるのか、またメリットやデメリットについても解説しています。相続税や贈与税を合法的に節税したいと考えている人は、参考にしてください。

相続時精算課税制度とは

贈与税の課税方式には2つの種類があります。一般的に知られている贈与税の課税方式である暦年課税では、毎年110万円まで非課税になります。
 
そしてもう1つは、相続時精算課税と呼ばれている方式です。名称のとおり、贈与する人が亡くなるまでの贈与を累積して相続時に一括で精算する方式です。
 
相続時精算課税の概要と一般的な課税との違いを解説します。
 

相続時精算課税制度の概要

相続時精算課税では贈与額を毎年申告して、贈与者が死亡して相続が発生した時点でそれまで贈与した累計金額に応じて贈与税を納めます。
 
制度の概要をまとめると以下のとおりです。
 

●相続開始まで贈与を続ける(初回贈与申告時に選択)
●相続開始時までの累計贈与額が2500万円までは非課税
●2500万円を超えた部分については一律20%の課税
●贈与額の累計と相続額の合計が、相続税の基礎控除額(※)以内であれば贈与税は還付される

 
※相続税の基礎控除額…3000万円+600万円×相続人の数
 
次に毎年申告する課税方式との違いや比較も解説します。
 

通常の贈与税課税(暦年課税)との違い

毎年申告する通常の課税方式は暦年課税と呼ばれています。暦年課税と相続時精算課税との違いを図表1に示しました。
 
【図表1】
 

相違点 暦年課税 相続時精算課税
贈与者・受贈者 親族以外に第三者への贈与も可能 60歳以上の者から18歳以上の推定相続人および孫への贈与に限る
課税時期 毎年翌年の2/15~3/15までに申告・納税 同左
非課税金額 年間110万円 累計で2500万円
税率 年110万円を超える部分に累進課税

・10%… ~200万円(同)
※控除額…なし(同)

・15%… ~400万円(300万円)
※控除額…10万円(同)

・20%… ~600万円(400万円)
※控除額…30万円(25万円)

・30%… ~1000万円(600万円)
※控除額…90万円(65万円)

・40%… ~1500万円(1000万円)
※控除額…190万円(125万円)

・45%… ~3000万円(1500万円)
※控除額…265万円(175万円)

・50%… ~4500万円(3000万円)
※控除額…415万円(250万円)

・55%… 4500万円超(3000万円超)
※控除額…640万円(400万円)

上記は直系卑属(子、孫)への贈与、カッコ内は一般(第三者への贈与)

2500万円を超える部分に一律20%
毎年200万円を15年間贈与した場合の贈与税額 (200-110万円)×10%×15年=135万円 (200万円×15年-2500万円)×20%=100万円

 
毎年200万円を15年贈与した場合の税額はそれほど大きな差はありませんが、相続額と贈与額の合計が相続税の控除金額以下であれば、100万円は還付されるので大きな差となります。
 

相続時精算課税制度のメリット

相続時精算課税を暦年課税と比較した場合、節税につながる可能性があります。もちろん、相続額や毎年の贈与額によって違いがありますが、直系卑属への贈与の場合はメリットが大きいケースが多いと思われます。
 
一般的な相続時精算課税のメリットを節税の観点はもちろん、それ以外のメリットも個別に紹介します。
 

2500万円まで非課税、超過分も一律20%

相続時精算課税は、節税の観点から贈与額2500万円まで非課税で、それを超えた部分も一律20%の優遇税率となる点がもっとも大きなメリットです。
 
ただし、贈与額が少ない場合はメリットがないケースも考えられるので、控除額の2500万円を目安として相続時精算課税を検討しましょう。
 

収益物件や値上がりの可能性がある財産の贈与は相続税対策にもなる

家賃収入がある収益物件を贈与した場合は、収益は受贈者に移るため相続の対象外です。これに対して収益物件を相続すると、それまで蓄積した家賃収入も相続対象となるので相続税が高くなる可能性があります。
 
また、将来値上がりが見込まれる有価証券などは贈与するとメリットになります。相続税の評価額はさかのぼって贈与時のものとなるので、値上がり前の評価が適用され節税になるからです。
 

相続争いを未然に防止できる

相続時精算課税方式を利用する場合は、どの資産をだれに贈与するのかを当事者が相談しながら決めることができます。
 
相続人が複数いる場合はお互いに納得できずに相続することも多いため、相続時精算課税は相続争いを未然に防ぐメリットもあります。
 

相続時精算課税制度のデメリット

相続時精算課税は節税効果も高くメリットが大きいように感じますが、ケースによっては事前には考えもしなかったデメリットも発生します。
 
相続時精算課税を選択する前には考えられるデメリットもよく考慮する必要があります。選択してからデメリットに気付いても元に戻すことはできないので後悔しないように注意しましょう。
 

毎年110万円の非課税枠が使えなくなる

相続時精算課税と暦年課税は選択制となっています。相続時精算課税を選択する場合は最初に贈与税を申告するときに選択しますが、その後は暦年課税はできなくなる点に注意しましょう。
 

金額に関係なく申告が必要

暦年課税は年間110万円までの贈与は申告の必要はありませんが、相続時精算課税では金額に関係なく毎年申告する必要があります。これは贈与額の累計金額を証明するために必要だからです。
 

小規模宅地等の特例を適用できなくなる

小規模宅地等の特例は相続した土地が条件を満たした場合に、相続税が50〜80%減額される特例です。しかし、これはあくまで相続した土地に限られるので、相続時精算課税方式で生前に贈与した土地は対象にならず、相続税の減額は受けられません。
 

不動産の贈与は諸費用が増える

不動産の所有権移転には登録免許税や不動産取得税がかかります。相続により不動産を移転する場合はこれらの税金が優遇されていますが、生前贈与による移転の場合は優遇されないので注意しましょう。
 
贈与と比較して登録免許税と不動産取得税の合計で、固定資産税評価額に対して4.6%の違いがあります。
 

●登録免許税……贈与 2.0%、相続 0.4%(-1.6%)
●不動産取得税……贈与 3.0%、相続 0.0%(-3.0%)

 

相続時精算課税制度はケースによってデメリットが大きいので注意が必要

相続時精算課税には節税のメリットがありますが、不動産を相続する場合には各種の優遇税制も存在します。相続時精算課税を選択してしまうと、これらの優遇税制を受けられなくなるので注意しましょう。
 
また、一度選択すると後戻りできません。十分に検討したうえで相続時精算課税を選択しましょう。
 

出典

国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.4103 相続時精算課税の選択

国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.4429 贈与税の申告と納税

国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.7191 登録免許税の税額表

総務省 不動産取得税

 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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